クラシック音楽の楽しみ方入門 -演奏家による曲の解釈の違いを聞き比べてみよう-
こんにちは、ピアニストの小川瞳です。
以前の記事で、同じ曲でも演奏家によって無数の音色が派生するということについて書いたことがあります。
今回は、同じ曲でも演奏者によって様々な解釈が生まれるということについて、具体的にお話してみたいと思います。
クラシック音楽を演奏するということは、画家のデッサンと似ているかもしれません。
同じ手をデッサンしたとしても、画家によって線の太さも色も濃淡も形も、違うものになると思います。
正確さが必要とされるデッサンで、一見すれば写真のように本物とそっくりな完成品でも、一枚一枚、絶対に違いがあるはずです。
同じ画家が描いた作品でも、二回と同じようには描けないことでしょう。
クラシック音楽の演奏も同じことです。
全く同じ作品を古今東西、無数の人間が演奏してきているわけですが、絶対に同じ演奏はありません。「楽譜の解釈」が起きるのです。
全てがその人ならではのもの、そして一回限りのものなのです。
人それぞれの個性が顕著に表れるのが、テンポと音量の変化。
楽譜にはかなり細かく指示が書いてある場合も多く、例えばテンポについても「一拍が一分間に100回の速度で」というメトロノームの速度表記があったり、だんだん速く、だんだん遅く、などという指示も一般的です。
けれども、どの程度速くするのかなど、自分の音楽性で判断しなければならないこともたくさんあります。
その変化の度合いの大きさなどが、全て演奏家の個性となります。
ピアノは、鍵盤の上をネコが歩いても音が出る仕組みになっています。
単純にドの鍵盤を弾いたら、ドの音が出るという構造なのです。
けれども、演奏家によって、ピアノの音の質はかなり違いがあります。
指先の力の入り方、腕や肩の使い方、指や手の違い。
理由はたくさんありますが、音の高さ(ド、レ、ミなど)は同じでも、音から感じられる表情は十人十色なのです。
高度な技術がある方は、意図的に「こういう音色を使おう」と考え、弾き方をとても工夫します。
すると、音量と音の高さは同じはずなのに、色々な音色が生まれ出すのです。
同じ作品を取り上げていても、そこから表現したいことは人それぞれ違います。
だからコンクールでは、同じ曲が課題曲となって、何十人もの出場者が同じ曲を演奏し、審査員が優劣を判断することも多いのです。
同じ曲を演奏しても、出場者全員が全く違う演奏をするので、点数を付けることが出来るのです。
どのCDを買ってきても、演奏家による解釈の違いを感じることは出来ます。
もし興味がありましたら、同じ作品のCDを違う演奏家の演奏で聴いてみて下さい。
きっとクラシックを聞く上で新たな楽しみが増えることでしょう。
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ピアニストとして東京や茨城を中心に、ソロの演奏会やオーケストラとの共演など、数多くの演奏活動を行っております。
音楽心理士の資格も持ち、トークコンサートやコンクールの審査員もつとめております。
また長年に渡り執筆活動も並行して行っており、小説を3作品出版しております。
こちらのサイトでは、幼少時よりピアノを学び続け、クラシック音楽の世界に身を置く私ならではのコラムを執筆できたら、と思います。
よろしくお願い致します。
小川瞳 公式ホームページ https://ogawahitomi.amebaownd.com/
小川瞳作曲 笑顔のBGM
https://youtu.be/Qrt-stZPTb8
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