ロンドンが誇る高級老舗デパート「リバティ百貨店」から学ぶ、イギリスの芸術文化と歴史

執筆者: Lady Masala
はじめに

大小さまざまな百貨店や専門店が立ち並ぶオックスフォード・ストリートを抜けて、リージェント・ストリートへ下っていくと、格調高いテューダー様式の建物が聳えています。

そこは、リバティプリントで有名な「Liberty(リバティ百貨店)」です。

 

 
創設者アーサーの美意識

リバティ百貨店は、ハロッズやジョン・ルイスと並ぶ、ロンドン屈指の高級百貨店です。

 

リバティが一般的な百貨店とは趣を異にしているのは、その建物とそれを生かしたディスプレーの工夫とによります。
外観もさることながら、内装の美しさには目を見張るものがあります。

 

中央の大広間に立ち、吹き抜けの天井と、それをとり囲むように作られた各フロアのディスプレーを見上げると、この建物の完成を待たずに亡くなった創設者、アーサー・ラセンビィ・リバティの美意識の高さに感銘を受けずにはいられません。

 

 

リバティ百貨店の歴史

リバティ百貨店は、1875年に創業されました。

当時、従業員は創設者のアーサーを含めたわずか3名でしたが、日本や東洋の国々からから買いつけた、エキゾチックな布地や装飾品を扱う店としてたちまち評判となりました。


事業は順調に拡大され、1885年にはカーペットや家具などの調度品も扱うようになりました。

家具売場は東洋のバザールと評され、ロンドンで最もファッショナブルな店としての地位を獲得しました。

 


リバティにデザインを提供していたデザイナーたちは、アーツ・アンド・クラフツ運動やアールヌーヴォーの中心的存在でした。

アーサーは、当時の先進的なデザイナーを支援することによって、それらの芸術の発展にも貢献しました。

 

アーツ・アンド・クラフト運動

ヴィクトリア朝後期には、産業革命の結果として、大量生産による安価で粗悪な製品が横行しました。

思想家でもあったイギリスのデザイナー、ウィリアム・モリスは、そうした風潮を批判し、中世の手工業を復活させようという、アーツ・アンド・クラフト運動を提唱しました。

 

 

アールヌーヴォー

アールヌーヴォーは、19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパを中心に開花した、新しい芸術様式です。

花、植物などのモチーフ、曲線を駆使するといった、従来の様式にはとらわれない装飾性に加えて、鉄やガラスなど当時の新素材を利用しているのが特徴です。

その建築

現在のリバティ百貨店は、1924年に建設されました。

テューダー様式は、中世の建築様式ですが、19世紀後半から20世紀の初頭には、それを模倣した、テューダー・リバイバル様式が流行しました。

 

リバティ百貨店は、そのテューダー・リバイバル様式で、なおかつ、アーツ・アンド・クラフツ運動の影響を受けた建築物として、イギリスの第二種指定建造物に指定されています。

 


そして、店内の売り場にも、さまざまな工夫がなされています。

買い物客に自宅で寛いでいるかのような印象を与えるために、スペースをいくつかの小部屋に区切って、そこにディスプレーとして暖炉を備え付けました。


その暖炉のいくつかは現在でも残っています。

 

おわりに

リバティ百貨店は、アーサー亡き後も、彼の目指した東洋的なエキゾチシズムを残しつつ、最新の流行をバランスよく取入れるという経営方針を忘れていません。

そして、現在に至るまでロンドンを代表する高級百貨店として営業を続けています。


店内には、衣料品や家具、アクセサリーの他にも、リバティプリントに代表される、オリジナル製品が数多く取り揃えられています。

高級百貨店だけあって高価な品物が多いですが、ディスプレーを眺めているだけでも飽きのこない場所です。

 

ロンドンを訪れた際には、リバティ百貨店にも足を運んでみてはいかがでしょうか。

 
 コラムニスト情報
Lady Masala

旅行とマーケット・蚤の市めぐりが大好きな庶民派ロンドナー。
コレクションのヴィンテージ食器を眺めている時に幸せを感じます。

ロンドン発 -庶民的生活-
http://workingclass.blog109.fc2.com/

Travel.jp「たびねす」にてガイド記事執筆中
http://guide.travel.co.jp/navigtr/707/