ヨーロッパはキリスト教国であるという事もあり、キリスト教会が街のあちこちに建築されています。キリスト教建築の歴史は、そのまま西洋の建築史でもあります。ヨーロッパで始まり、世界に広がった教会の特徴、および建築様式の変遷をご紹介致します。

建築についての知識があると、ご旅行も、より一層楽しいものになるでしょう。

395～1453年まで栄華を誇ったビザンチン帝国下で発展していった様式です。以前からあった初期キリスト教美術を基に、ギリシャ的なヘレニズム美術、古代アジア、ササン朝ペルシャなどの美術が融合したものです。円形ドームを持つ事が大きな特徴で、内部は表面的に華麗な装飾（モザイクやフレスコ画）を施すのが常です。

サン・マルコ大聖堂（イタリアのヴェネツィア）
サン・ヴィターレ聖堂（イタリアのラヴェンナ）
アヤ・ソフィア（トルコのイスタンブール）

フランスにおいて、12世紀頃より始まり、15世紀のルネサンス期に至まで、ヨーロッパ全域に見られる建築様式です。この様式の特徴は、高い塔と尖塔アーチと呼ばれる高い天井による空間です。ロマネスク建築に比べ、格段に大きくなったステンドグラスを使用しています。この時代より、教会の大規模化が進みます。現存しているゴシック建築のほとんどは、都市の中心部にあります。

ノートルダム寺院（フランスのパリ）
ケルン大聖堂（ドイツのケルン）
ウエストミンスター寺院（イングランドのロンドン）

ロマネスクとは「ローマ風の」という意味で、ゴシックと区別する為に、19世紀以降、美術史の用語として使用されるようになりました。ロマネスク建築の始まりは、カロリング朝建築（フランク王国のカール大帝の頃）を含めると、８世紀からという事になります。特徴は、窓などの開口部に見られる円形アーチと、熱い壁面と、石材も質素で、装飾も少ない事です。

ピサ大聖堂（イタリアのピサ）
ザルツブルク大聖堂（オーストリアのザルツブルク）
サン・セルナン大聖堂（フランスのトゥルーズ）
ヴォルムス大聖堂（ドイツのヴォルムス）

イタリアのフィレンツェで、1420年代に始まり、17世紀初頭まで続いた建築様式です。それまでの主流であったゴシック建築の技法を否定し、古代ローマの建築を復興しました。左右対称で均整がとれた建物や、エディキュラと呼ばれる外壁の飾り窓など、調和を重視したスタイルが特徴的です。

サンタンドレア聖堂（イタリアのマントヴァ）
サン・ピエトロ大聖堂（イタリアのヴァチカン）
サンタ・マリア大聖堂（イタリアのフィレンツェ）
テンピエット（イタリアのローマ）
サント・スピリト聖堂（イタリアのフィレンツェ）

バロックとは、ポルトガル語のBarocco（歪んだ真珠）が語源です。局面が多用されたり、彫刻・絵画などで装飾されるなど、動的・劇的な空間を作り出している事が特徴的です。19世紀になると、「ネオ・バロック」として復興し、日本の京都国立博物館や、赤坂離宮なども、この様式で建てられました。

サン・カルロ・アッレ・クワットロ・フォンターネ教会（イタリアのローマ）
メトロポリタン・カテドラル（メキシコのメキシコシティ）
セント・ポール大聖堂(イングランドのロンドン)
サン・アグスチン教会（フィリピンのマニラ）

主に宮廷建築で用いられた様式です。後期バロック建築の一つで、曲線を多用する繊細な装飾で、壁と天井の境がはっきりしないのが、特徴的です。１８世紀初頭のフランスに始まり、他のヨーロッパの宮廷にも広がりました。

フィアツェーン・ハイリゲン教会（ドイツのアウクスブルク）

メスキータとは、イスラム教とキリスト教の建築様式が融合したもので、独特な聖堂となっています。これは、レコンキスタ（キリスト教国による、イベリア半島の再征服活動の総称）により、イスラム教のモスクが、キリスト教徒によって聖堂に改築された歴史によります。

メスキータ・モスク（スペインのコルドバ）

ロンシャン教会を建築したル・コルヴィジェは、米国グッゲンハイム美術館などの設計者フランク・ロイド・ライトらと並ぶ、近代建築巨匠の一人です。同教会は、ポストモダン（モダン（近代）の次という意味）の建築の先駆けとなりました。

ロンシャン教会（フランスのロンシャン）