フランスのスーパーが展開する、オーガニック食品の光と影

執筆者: 真(ま)フランスの日常 管理人
はじめに

フランスでは現在、市場に出回っているオーガニック食品の半分以上が、大型スーパーなどのスーパーチェーンで売られています。
そして、そのほとんどは、スーパーチェーンなどが提供する“自社ブランド”のオーガニック商品です。

これらの「ブランド」は、既存のオーガニック業界に価格革命をもたらした一方で、オーガニック専門店などを脅かす存在にもなっていて、ここ最近、物議を醸すことが多くなりました。

今回は、賛否両論ある「ブランド」の、プラス面・マイナス面の両側面を取り上げます。

 

オリジナルオーガニックブランド

フランス国内の大型スーパーで必ず見かけるのが、「オーガニックコーナー」というオーガニック食品が並んだ売り場。

そして、その売り場に網羅しているのが、スーパーチェーンが独自に立ち上げたオーガニックブランドの商品群です。

例えば、CASINOというスーパーチェーンは「CASINO BIO」というブランドを展開していて、野菜・果物はもちろん、肉、魚介類、乳製品、米、小麦粉、調味料、菓子類など、「CASINO BIO」だけで買い物が済ませられるほどの種類が揃っています。

 

 

上の写真は、CASINOのオーガニックコーナーの一部です。

フランスの朝食の定番食品「ジャム」、「ハチミツ」、「シリアル」などが並んでいて、その中でも自社ブランド「CASINO BIO」の緑のパッケージが目を引きます。

 

こちらは乳製品。

ここでも「CASINO BIO」の商品が大半を占めています。

 

とにかく安いことが魅力

これら独自ブランドの最大の特徴は、オーガニックであることを疑ってしまうほど低価格であることです。

昨今の食料品の低価格化を仕切っているスーパーチェーンにとって、値下げはお手の物。

 

価格は年々下がっていて、今ではオーガニックのパスタ500g、小麦粉1kg、牛乳1ℓなどを、それぞれ100円前後で買うことが出来るほどになりました。

 

オーガニックスパゲッティ500gが、なんと64セントです(約92円 ※2014年12月3日のレート換算)。

大衆向けのオーガニック商品へ

これらの「ブランド」が持つもう一つの特徴は、オーガニック商品の顧客層拡大に貢献していること。
様々な顧客層が集うスーパーは、日頃オーガニックに見向きもしない人々が、オーガニック食品を手に取るきっかけを作ります。

そして、低価格であればあるほど、彼らがオーガニック商品を手に取る確率は上がり、その後もリピートされやすく、オーガニック食品の定期購入者の拡大に繋がるのです。

こうして、スーパーチェーンの独自ブランドがオーガニック食品の敷居を低くしたことは、評価に値するといえます。

 

低価格の裏側

ただし、「安いものにはわけがある」という言葉通り、安ければ安いほど理由があることが、ここ最近明らかになってきました。

 

生産地での不正行為

これまでに複数の欧州メディアが暴露したのは、以下のような実態です。

  • 生産地が販売地域に対して遠方であることにつけこんで検査をすり抜ける生産者がいること。
  • 商品の低価格を遂行するために劣悪な環境で働かされている労働者が不特定多数いること。

 

特に、ディスカウントスーパーなどに置かれている激安有機野菜や果物の元を辿ると、南欧や東欧の労働者が超低賃金で働かされていたということが少なくないようです。

 

そうして作られた原材料で、オーガニックの加工食品などを製造販売していると疑われているのが、一般的な大型スーパーであり、激安商品さえ買わなければ良いというわけでもないのが頭の痛いところです。

 

品質は二の次

また、オーガニックがきちんと保障されていても、安さにこだわるあまり品質が二の次にされ、商品に対する“こだわり”は無いに等しいと言っても過言ではありません。

その証拠に、同じ系列のスーパーのオーガニック商品が、同じ工場で作られ、違うのはパッケージだけということを時折目にします。

 

おわりに

これらのオーガニックブランドは、味や品質にこだわりがないにも関わらず、低価格を支持する大多数の客層に受け入れられ、これからも需要はどんどん増えていくと見られています。

70%以上のフランス人が定期的にオーガニック食品を購入しているとされる今、大型スーパーの経営者達には、オーガニック食品本来のよさを見直して貰い、もう少し品質を重視した商品展開を期待したいところです。

 
 コラムニスト情報
真(ま)フランスの日常 管理人
性別:女性  |  

専業主婦(ときどきブロガー)を貫く予定が、思いがけず「フランスのスローライフ」について書く機会を与えられました。ただし、フランス語には「スローライフ」という言葉は存在しません。どんな英単語も無理やりフランス語に置き換えるフランスでこの言葉があえて無視されるのは、“フランスで生活する”ということ自体が“スローライフ”だからだと私は思います。
日本でフランスというと芸術や美食の国という印象がありますが、実際に生活してみると、それよりも何よりも人間的、いや“野生的”なフランス人たちに衝撃を受けます。バカンスのために働き、食べることに時間をかけ、人との交流を良くも悪くも優先するフランス人の生き様は、スローライフそのものだと身をもって感じるのです。
エコライフを追求するには申し分のない環境に置かれていることに感謝しながら、フランスのエコ情報を中心にフランス生活の実態をお届けします。

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