管理職は残業代・休日なしでOK!?管理監督者になるための要件定義 (1/2)

執筆者: HRプラス社会保険労務士法人
はじめに

こんにちは、さとう社会保険労務士事務所の堀 真寿です。

 

今回は「名ばかり管理職」について、考えてみたいと思います。

 

 

部長、課長は残業手当を支払わなくていい?

先日、とある社長から「社員を課長職へ昇格したら、残業手当を支払う必要はないよね」と質問を受けました。

 

社長の主張では、課長職の人は労働基準法41条第2号に規定されている、いわゆる「管理監督者」に該当するのではないか、と言う訳です。


では、労基法41条2号が求める管理監督者性というのはどのようなものなのか、触れていきたいと思います。

 

管理監督者の法的定義

まず、条文を確認しておきましょう。

労働基準法第41条第2号
「監督若しくは管理の地位にある者については、労働時間、休憩及び休日に関する規定は適用しない」

 

管理監督者には適用されないこと

条文を元に、管理監督者には適用されないことをみていきましょう。 

 

労働時間の適用を受けず

法定労働時間を超えても時間外労働という概念が生じず、1週40時間以内、1日8時間以内という労基法のルールが適用されません。

 

つまり、法定労働時間を超えても時間外労働にはならないのです。

 

休憩、休日を与える義務なし

45分ないし1時間以上の休憩を与えるという労基法のルールが適用されません。

 

法定休日勤務の休日労働としての取り扱い不要

休日は毎週1日以上与えるという労基法のルールが適用されません。

 

以上を要約しますと、時間外、休日労働に関する労使協定と割増賃金は不要であるということになります。

 

管理監督者でも深夜労働は支払う

ただし、管理監督者であっても、実務上注意が必要なこととして、年次有給休暇の付与と、深夜労働割増賃金支払いは適用され、守らないといけません。

 

通常、時間外労働が深夜時間にまで及んだ場合は、1.50割増(1.25+0.25)の残業代が発生しますが、管理監督者の場合、深夜時間にまで及んだ残業について0.25部分のみの支払いで事足ります。

 

管理監督者と認められる基準

管理監督者になるには、下記の1~3全ての要件を満たす必要があります。

 

要件1

労務管理方針を決定できる、あるいは労務管理上の権限を持つなど、経営者と一体的な立場にある。

 

要件2

自己の仕事の遂行について自由裁量があり、出退社について厳しい規制を受けない。

 

要件3

地位にふさわしい給与額、役付手当が支払われている。

 

管理監督者として認められない事例

次に、要件を満たさない事例について、例を挙げます。

 

これに加え、店長が管理監督者に当たらないとする日本マクドナルド事件を受けて、厚生労働省は「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」という通達を発しています。

 

この内容はとても参考になりますので、以下、管理監督者性の判断要素を列記しておきます。

 

「職務内容、責任と権限」についての判断要素

下記の1~4は、管理監督者性を否定する重要な要素となります。


1. 採用 

店舗に所属するアルバイト・パート等の採用(人選のみを行う場合も含む)に関する責任と権限が実質的にない場合。

 

2. 解雇 
店舗に所属するアルバイト・パート等の解雇に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合。

 

3. 人事考課 
人事考課(昇給、昇格、賞与等を決定するため労働者の業務遂行能力、業務成績等を評価することをいう。)の制度がある企業において、その対象となっている部下の人事考課に関する事項が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合。

 

 

4. 労働時間の管理 

店舗における勤務割表の作成又は所定時間外労働の命令を行う責任と権限が実質的にない場合。

 
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