プラシーボ効果の反対は「ノシーボ(ノセボ)効果」!思い込みで起こる健康被害とは

執筆者: 水口 直樹 職業:プラセボ製薬株式会社

 

 

はじめに

こんにちは、プラセボ製薬の水口直樹です。

効くと思い込めば、たとえそれが薬効成分を含まない偽薬(ぎやく)でも効いてしまうような現象。それを、科学的に説明する言葉として「プラシーボ効果」が一般に良く知られています。

 


しかし、プラシーボ効果に反対語・対義語があることは、あまり知られていないでしょう。

マイナシーボ効果?

プラシーボ効果という言葉には、偽薬でも生じる改善効果というプラスの意味があります。

と言うことは、プラシーボ効果の反対はマイナスの意味を持つ「マイナシーボ効果」なのでしょうか。

 

答えはNO。違います。

 

プラスのプラシーボではない

プラシーボは、元々「私は喜ばせる」という意味のラテン語で、英語では「placebo」と表記します。

「プラス(plus)」とは、成り立ちからして異なっていることがお分かり頂けると思います。

 

マイナスのマイナシーボでもない

つまり、プラシーボ効果の反対語は「マイナス」とは関係ありません。

「ノシーボ効果」あるいは「ノセボ効果」と呼ばれています。

 

 

ノシーボ効果とは

プラシーボ(placebo)の場合と同様、ノシーボ(nocebo)もラテン語の「私は害する」を語源としています。

 

ノシーボは悪魔の双子!

その名の通り、薬効成分(あるいは毒)を含まない偽薬でも、実際に悪い影響が出てしまう現象の原因として、ノシーボ効果という言葉が用いられています。

 

プラシーボ効果の悪魔の双子などと呼ばれることもあるノシーボ効果。

一体どんな場面で現れてくるのでしょうか。

 

ノシーボ効果と副作用の問題
医薬品と副作用はセット?

多くの医薬品には、治療上求められる主作用の他に様々な副作用があります。

こうした副作用は、文字通り主作用の副産物として避け難いと考えられているのです。

 

それ、思い込みの副作用かも…

しかし、実際には、薬効成分の入っていない偽薬を「これは○○の薬です。吐き気や口渇の副作用があります」といった説明をした後に服用してもらうと、少なからず吐き気や口渇を訴える人が出てくるようです。

 

副産物として避けがたい物と考えられてきた副作用(の一部)は、こうした思い込みが原因となっているのかもしれません。

 

 

侮り難し、ノシーボ効果

ただ、ノシーボ効果をただの思い込みと侮るわけにはいきません。

その効果は、実際に身体的あるいは精神的な変化を引き起こし得るものです。

 



ノシーボ効果によって瀕死の状態に至った例が報告されたり、メディアの報道を通じた健康被害の拡大にも、ノシーボ効果が関わっているとされています。

おわりに

私達は、プラシーボ効果以上に、ノシーボ効果について知らないのかもしれません。


「ノシーボ効果が現れないように気を付ける」といったことも、得てして難しいものです。

なぜなら、何をどう思い込んでいるのか、何をもって思い込まされているとするのか、私達自身よく分かっていないからです。

 

それでも、人がより快適に生きるために追求すべき秘密が、ノシーボ効果には隠されているように思われます。