「箏」と「琴」の違いって?日本の伝統和楽器「箏」の歴史と文化

執筆者: 宮西 希 職業:Kotist(箏奏者)
はじめに

こんにちは、Kotis(コティスト)の宮西希です。


コティストって何?

そう思われる方、多いのではないでしょうか。


Kotistは、箏(こと:koto)を使っているミュージシャンを指します。

和楽器の演奏家は、あまりミュージシャンとは名乗らず、箏の場合は「箏曲演奏家」と名乗る方が大半ですが、私はKotistとして活動をしています。


箏は日本の伝統楽器ですが、「伝統」という文字が付くからなのか、あまり日本人にも知られていないことが多く、難しくてお固いイメージを持たれがちです。

 

今回は、そんな「箏」について、分かりやすくお伝えしたいと思います。

誰もが聞いたことのある箏の代表曲

皆さんが「コト」と聞いて思い浮かべるのは、やはり「さくらさくら」または「TVでお正月になると流れる曲…タン、タタタタタタタン」でしょうか。

 

お正月によく耳にするあの音楽は、箏曲の代表的な曲、宮城道雄作曲の「春の海」です。

 

お正月の曲ではない

「春の海」は、決してお正月の曲ではなく、目の見えない宮城道雄が、まだ目が見えていた幼少期に暮らした、瀬戸内海の穏やかな海を思いながら曲にしたもの。

 

世界名曲100選にも選ばれている曲です。
有名なあのフレーズは、穏やかで温かい海の波が寄せたり返したりしている音です。

 

有名なメロディーは前奏

お箏の曲とよく言われますが、例のフレーズはあくまでもメロディーが入る前の「前奏」であって、その後、尺八によるメロディーがスタートします。

 

つまり、箏と尺八の二重奏なのです。

 

「箏」と「琴」を混同している人が多い

「春の海」で使われている楽器が「箏」ですが、実際に見たり触ったりしたことがありますか?

 

義務教育の中に、和楽器が取り入れられている時代にお勉強をした若い方なら、誰もが1度は触ったことがあると思います。

しかし、伝統楽器であるにも関わらず、日本の教育に取り入れられるのに非常に時間が掛かったため、ある程度の年代の方は、実物を見たことすらないという方も多いのが現状。

 

そのため「箏」ではなく「琴」だと思っている方も、とても多いのです。

 

                Masamitsu Naito

 

異なる2つの楽器「箏」と「琴」

2つの楽器の大きな違いは「柱(じ)」と呼ばれる、真ん中にたくさん立つブリッジがあるかないかです。

 

柱を動かして音の高さを変えるのが、箏です。

 

 

写真の箏は、最もスタンダードな十三絃。

 

琴は柱がなく、絃を押さえる指のポジションを変えることで音の高さが変わる楽器。

つまり、スチールギターのようなものです。

 

一絃琴・二絃琴・七絃琴・大正琴というのは、正にこれにあたります。

 

 

写真は、一絃琴。

皆さんが想像されている「コト」とは、だいぶ違うのがお分かり頂けると思います。

 

そもそも「こと」は絃楽器の総称だった

ことは、昔は絃楽器の総称でした。

 

源氏物語にも登場

実際、源氏物語の中では「箏(ソウ)のコト」「琴(キン)のコト」「琵琶(ビワ)のコト」という記述があります。

 

その内の「箏のコト」が最もポピュラーになり、独立して、結果的に今の箏のことを「コト」と呼ぶようになったようです。

なお、「琵琶のコト」も独立して「琵琶」となりました。

 

なぜ「琴」という漢字が一般的になったのか

正式には「箏」であるのに、なぜ、正しくない漢字の「琴」が使われるようになったのか。


これはただ単に、常用漢字に「箏」という字が含まれていなかったから。
今では「箏」も常用漢字の仲間入りをして、パソコン変換もできますが、まだまだ世の中では「琴」だと思って疑わない人が多いのです。

 

おわりに

「箏」と「琴」の違いがお分かり頂けたでしょうか。
次回は箏曲についてもご紹介したいと思います。

 
 コラムニスト情報
宮西 希
性別:女性  |   職業:Kotist(箏奏者)

日本の伝統楽器である「箏」の奏法や特色を大切にしながら、ポップスやロック等、 宮西希が今まで触れてきた音楽を融合させ、自身が書き下ろしたオリジナリティ溢れる楽曲を独特のスタイルで表現している。
伝統継承を重んじた従来の箏曲演奏とは一線を画し、自らをKotist(コティスト)と称して、グローバルな活動を展開している。

まるで数面の箏が合奏をしているかのように聴こえる“独奏”に特徴があり、メロディー、伴奏、オブリガードを十本の指が舞うように弾く宮西独特の奏法はダイナミックで迫力があり、聴衆の心を魅了する。
ギター、アコーディオン、ヴァイオリンとのセッション、そしてさらにピアノ、ウッド ベースとのJazzyなアンサンブルやロックバンドとのジョイントまで、その演奏スタイルは幅広く、自在にチューニングを変えることであらゆる楽器とのセッションにも対応でき、今までも多くのミュージシャンとの共演を果たしている。
また、身近なストリートから様々なスペースのコンサートホール、緑に囲まれた野外音楽堂まで演奏場所を選ばず、カジュアルな装いでの特製スタンドによる「立ったまま」の自由な演奏スタイルは、伝統的な和楽器を身近に感じさせ、箏という絃楽器の持つ優れた特性をフルに活かした『Kotist宮西希の世界』を実現している。

作曲から編曲まで自ら手掛けるインストゥルメンタル作品の数々は、美しさとエネルギーに溢れ、情景や心情を映し出し、まさに聴く人の琴線に豊かに響いてくる。これは、宮西の多くの楽曲がTV番組のBGMやコマーシャル音楽等に起用され、オンエアされている大きな要因ともいえよう。そして、その楽曲を紡ぎだす箏の音色は、聴く人の固定観念を打ち崩すほどにあたたかく、パワフルで、そしてとてもやさしい。伝統やしきたりにはこだわらない、全く新しい感覚をかね備えているニューエイジ・アーティストである。

また、観客からのジャンルを問わないリクエスト曲に答え、その場で即興演奏をするパフォーマンス(本人曰く「Kotoっちゃう」)が、大変人気コーナーとなっており、西洋音楽と純邦楽の両方の言葉と理論を熟知し、同時通訳できる音楽のバイリンガルとも評されている。

母の手ほどきにより箏を始め、3歳で初舞台をふむ。
東京芸術大学卒業後、日本、中国、韓国の3カ国の伝統楽器の代表奏者によって構成される楽団「オーケストラ・アジア」に参加。
SkyPerfecTV! 246ch.「ECO MUSIC TV」(制作:第一興商)の番組『eco music colors』で、自らが作曲したオリジナルのインストゥルメンタル作品が番組で採用。それをきっかけに本格的な作曲/音源制作を経て、2002年秋、アルバム『Steps to the Moon』(日本クラウン)発表、ソロアーティストとしてデビュー。

多くのアーティストやミュージシャンとステージやTV・ラジオ番組にてセッションし、2005年にはTBS「第47回輝く!日本レコード大賞」にアルパ奏者の上松美香とコラボレーションでゲスト出演、多方面から注目を集めた。
国内はもとより海外での公演も行ない、2006年にはAustraliaの在パース日本国総領事公邸に招かれた。ここでは、「Perth Royal Show」Japan Pavilionでのステージの他、公邸でのコンサートにも出演。各界から集まったたくさんの聴衆の歓心を得た。
その後も「多くの方々に箏の音色をより身近なものに感じてもらえるように」と、各地でのコンサートやイベント、ラジオ・テレビの公開放送、学校コンサートなどの他、教育の現場に招かれての授業・コンサート・進路講演等、様々なシーンに精力的に出演している。 現在も、WORLD NHKでは毎日のように「Sunset」がBGMとして使用され、海外に住む日本人からも大変好評いただいている。

2011年東日本大震災後は直後の4月から、1人で車を運転し東北へ向かい、避難所を訪れ音楽での支援を開始。そこでの「体に食料が必要なように、心にはエンタテインメントが不可欠」という体験をブログ等に綴るうち、ファンの方々から「活動の支援をしたい」との声が上がり「Music for Youプロジェクト」を発足。被災地訪問を続けている他、病院コンサートなどもこのプロジェクトとして行なっていく予定である。

2013年1月、待望の5枚目のアルバム「じゃぱねすけ」をリリース。東北の避難所で多くの方々が涙した「春紫苑~ハルジオン~」をはじめ、日本人としてのアイデンティティを意識して作られた「じゃぱねすけ」「SAMURAI Z」「京都へ」など自らプロデュースした曲の他、アレンジ・プロデュースにギタリスト天野清継氏を起用し、さらに広がりを増したアルバムに仕上がっている。すでにTVなどでも日々ON AIRされており、今後の活動が期待されるアーティストである。