正社員とパート、雇用内容の違いは?覚えておきたいパートタイム労働法
こんにちは、さとう社会保険労務士事務所の堀真寿です。
今回は、パートタイム労働者が通常の労働者(正社員)と同じ仕事をしている場合、賃金を同様に設定する必要があるのかどうか、についてお伝えします。
パートタイム労働法では、パートタイム労働者が、職務内容、人材活用の仕組みが通常の労働者(正社員)と同視すべき場合には、正社員との差別的取扱いを禁止しています。
つまり、職務内容、人材活用の仕組みが同一なら、賃金の待遇について正社員と同じように決める必要があります。
ただし、パートタイム労働者の、労働時間が短いことに比例して、賃金が時間比例分少ないなどの合理的な差異は、許容されるとしています。
しかし、家族手当や通勤手当など、所定労働時間の長短に関係なく支給されるものについては、正社員と同様に支給する必要があります。
また、賃金以外にも、教育訓練、福利厚生施設の利用をはじめ、全ての待遇を同一にしなくてはなりません。
このルールは、2007年の大改正(2008年施行)から適用されていましたが、有期雇用されていたパートタイム労働者には、パートタイム労働法が適用されていませんでした。
しかし、2015年4月1日からは、無期労働契約要件が削除され、雇用が有期雇用の全てのパートタイム労働者にも適用されることになり、範囲が拡大されています。
差別的取扱い禁止の判断基準
1.
通常の労働者とパートタイムの労働者を比較した上で、業務の種類(職種)が同じであるか。
- 同じ:2へ
- 異なる:職務の内容が「異なる」
2.
通常の労働者とパートタイムの労働者を比較した上で、中核的業務が実質的に同じであるか。
- 同じ:3へ
- 異なる:職務の内容が「異なる」
中核的業務とは、ある労働者に与えられた職務に伴う個々の業務のうち、その職務を代表する中核的なものを指します。
- 与えられた職務に不可欠な業務
- 業務の成果が、事業所の業績や評価に大きな影響を与える業務
- 労働者の職務全体に占める時間・頻度において、割合が大きい業務
以上の基準に従い、総合的に判断することになっています。
(例)中核的業務が黄色の枠
3.
通常の労働者とパートタイムの労働者を比較した上で、責務の程度が著しく異ならないか。
- 著しく異ならない:職務の内容が「同じ」
- 異なる:職務の内容が「異なる」
責任の程度とは、以下のような点を、総合的に判断することになっています。
- 与えられている権限の範囲
- 業務の成果について求められている役割
- トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度
- ノルマなどの成果への期待度
1.
通常の労働者とパートタイムの労働者を比較した上で、転勤の有無はどうなっているか。
- 双方転勤あり:2へ
- 双方転勤なし:3へ
- 一方のみ転勤あり:人材活用の仕組みが「異なる」
2.
通常の労働者とパートタイムの労働者を比較した上で、転勤の範囲はどうなっているか。
- 同じ:3へ
- 異なる:人材活用の仕組みが「異なる」
3.
通常の労働者とパートタイムの労働者を比較した上で、職務内容と配置変更の有無はどうなっているか。
- 双方変更あり:4
- 双方変更なし:人材活用の仕組みが「同じ」
- 一方のみ変更あり:人材活用の仕組みが「異なる」
4.
通常の労働者とパートタイムの労働者を比較した上で、変更の範囲はどうなっているか。
- 同じ:人材活用の仕組みが「同じ」
- 異なる:人材活用の仕組みが「異なる」
実際に、パートタイム労働法に違反した不法行為の成立を認め、賞与等の差額相当額の損害賠償を認めた裁判例もあります(ニヤクコーポレーション事件・平成25年)。
従って、パートタイム労働法に違反していると判断された場合には、賃金差額相当分についての損害賠償が認められる可能性があるのです。
非正規約1,900万人の中に占めるパートタイムの人数は、約950万人という数字が、総務省が公表しているデータにあります(平成26年度)。
非正規の、実に半数が、パートタイムなのです。
パートタイム労働者を多く雇っている事業所の人事担当者は、今回の改正含め、確認をしておくことをお勧めします。
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