油っぽいものを食べたあとに、口の中が粘ついたりして気になることはありませんか? そんなときには水を飲むという人が多いと思いますが、よりさっぱりした感じを求めたいときは、弱アルカリ性の水を選べばいいということをご存じでしょうか?


この「さっぱり感」に関してキリン株式会社が調査したところ、弱アルカリ性(pH8.8~9.4)の水の方が、中性(pH6.5~7.0)の水よりもさっぱり感を高く感じやすいという結果になりました。

比較したのはいずれも無味無臭で炭酸ガスを含有しない市販の容器詰め飲料水であることから、この「さっぱり感」が弱アルカリ性というpHから生まれたものと推測されています。

では、なぜ弱アルカリ性の水だと「さっぱり感」が生まるのでしょうか? それは「乳化」作用によるものなのだそう。

少し専門的な話になるのですが、アルカリ性物質には、油を乳化・分散させる作用があります。キリン株式会社は、pH8.8~9.4の弱アルカリ性の水と、pH6.5~7.0の中性の水それぞれに同量のマヨネーズを溶かして観察する実験を行ったそうです。

すると、弱アルカリ性の水のほうが油とタンパク質をバラバラに分け、油滴がより細かくなっていることがわかりました。これはいわゆる「乳化」と同じ現象と言え、油分をさっぱりと洗い流す効果が中性の水よりも高いと考えられます。

では、「乳化」とはなんでしょうか? 「水と油」ということわざがあるように、このふたつは互いに反発し合ってとけ合わないものの代表格です。激しく混ぜることで一時的には混ざり合うものの、しばらく経つと分離してしまいます。

しかし、ある条件がそろうと水と油が均一に混じり合います。この状態のことを「乳化」と言います。その条件というのは、乳化成分(乳化剤)が加わるというのが一般的なんだそう。

例えば牛乳は乳脂肪分が含まれていますが、この油滴を「カゼイン」というタンパク質が覆っているため分離しなくなるのだそう。


乳化剤をはじめ、水分と油分をなじませる働きをもっている成分を「界面活性剤」と呼びます。身の回りには、「界面活性」のメリットを活かした日用品や食べ物がたくさんあります。

動物が生まれて初めて接する母乳もそのひとつ。母乳に含まれる栄養素や免疫成分、とくに脂肪が小さな粒子で均一に混じっているのは、特殊な脂肪とタンパク質で出来ている「乳脂肪球膜」が界面活性剤となっているからです。

界面活性剤というと、合成添加物のイメージが思い浮かぶという人も多いと思いますが、実は天然成分のものも数多く存在するのですね! 卵黄に含まれるレシチンや大豆のサポニンはその代表格で、マヨネーズの酢と油が混じりあっているのは卵黄レシチンの作用によるものなんだそう。


さらに、石鹸は5000年前から使われてきた界面活性剤なのです。油や泥を石鹸が包み込み、汚れ成分を水の中に取り込んで落とします。これらに代表される「洗浄効果」は、実は界面活性剤以外の物質にも見られます。

そのひとつが「アルカリ性」。油成分である脂肪酸はアルカリ性物質によって乳化し溶けるという性質があります。

溶かされた脂肪はグリセリンと脂肪酸塩に分解されますが、脂肪酸ナトリウム塩は石鹸の主成分。つまりアルカリ性物質は、脂肪を一種の石鹸に変えてしまうのです。

炭酸ソーダは界面活性剤を含みませんが、pHが11.4のアルカリ性物質。炭酸ソーダだけでも油汚れを落とすのに効果的なのは、このアルカリ性による作用なのです。

このような理由によって、弱アルカリ性の水は、中性の水を飲んだ時と比べて口の中がさっぱりとした印象になるようです。科学的にも証明されているのですね。

脂が多い料理は苦手だという人もいると思います。好きだけど量はそんなに食べられないという人も多いでしょう。また、グルメ好きな人は、脂っこい料理をより楽しくいただきたいという人も多いと思います。そんな人は、弱アルカリ性の水を選べば、脂の強い料理もより美味しくいただけるようです。

口の中をさっぱりしたいときは、弱アルカリ性の水を選ぶといいということを、覚えておいてくださいね! 冷蔵庫の中に1本常備しておくと安心ですね。

この記事を書いたコラムニスト

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