厨二病の人が一度はハマる「冥王星」

 

2015年7月、宇宙探査機「ニューホライズンズ」が、世界で初めて冥王星の地表を直接撮影することに成功しました。

 

当時は世界中で多くの人々が熱狂し、その姿に興奮した方もいるほどです。

発見以来、冥王星は多くの謎に包まれており、探査機によってようやく解決への一歩が踏み出せたからです。

 

それと同時に、新たな謎も浮かび上がりました。

 

さて、学校で宇宙に関する勉強をした時、惑星と言えば「水金地火木土天海冥」と習った方が多いかと思います。

しかし現在、惑星は「水金地火木土天海」です。

 

冥王星はどこへ行ってしまったのでしょうか？

 

冥王星は太陽系で最も遠い惑星だった

 

ご存じの方も多いかと思いますが、現在の冥王星は準惑星と呼ばれています。

そうです。惑星から外されてしまったのです。

 

アメリカでは今でも惑星への復活運動を行っていますが、何故惑星でなくなってしまったのか、その理由を知っていますか？
他にも似たサイズの天体が多数発見されたからです。

※天体…宇宙に浮かぶ小惑星や星などのこと

冥王星は1930年に発見されました。

それまで世界中で第9惑星発見を争っていましたが、見事競争に勝ったのがアメリカ人天文学者、クライド・トンボーです。

 

Winner　クライド・トンボー氏。

 

同じ領域の写真を2枚ほど時間を開けて撮影し、動いている天体をチェック。

その中で発見されたのが冥王星でした。

しかし実際は、1915年に撮影されていたという記録が残っています。

見落としていたみたいですね。

 

19世紀、天王星の軌道が謎の"フラつき"(摂動)をすることに、天文学者は悩まされていました。

 

その後発見された海王星は、このフラつきの犯人だと考えられていたのです。

そしてまた、海王星も他の惑星の影響でフラついているだろうと予想され、その中で偶然にも発見されたのが冥王星でした。

 

海王星の虚無感は異常。

 

当時は「冥王星は非常に大きい」と考えられていました。

実は40年近くも過大に見積もられていたのです。

 

地球サイズだ、火星と地球の中間だ、など様々な意見がありましたが、それに終止符を打ったのが、70年代末期に発見された衛星カロンの存在です。

 

カロンは冥王星の半分近いサイズを持ち、これによって冥王星が予想以上に「小さい」ことが分かったのです。

「何故40年も分からなかったの？」、と言いたくなるかもしれませんが、冥王星発見当時は、まだ望遠鏡の技術が発達しておらず、そこまで詳しくは観測できなかったことが理由です。

1970年代のカロン発見以降、望遠鏡を始めとする観測技術は飛躍的に発達しました。

 

90年代になるとハッブル宇宙望遠鏡が打ち上げられ、それまで見えなかった天体も発見されるようになりました。

地球上の望遠鏡も光学技術が発達し、暗い天体(特に小惑星)の発見が相次ぐようになったのです。

 

ハッブル宇宙望遠鏡「今日も天体観測するよ～」

 

そして1992年、冥王星以後に発見された最初の太陽系外縁天体、1992QB1が発見されました。

そして2000年以降は、直径が1000キロを超えるような天体が相次いで発見され、中には冥王星に匹敵するほどの大きさを持つ天体も見つかるようになったのです。

 

そして2005年に発表された「エリス(2003UB313-直径が冥王星とほぼ同じ)」がトドメとなり、「冥王星は惑星か？」と言う議論が世界中で活発になりました。

 

観測技術の発達によって、冥王星は一転ピンチになってしまった訳です。

2006年8月、チェコで開かれたIAU(国際天文学連合)の会議で、惑星とは何か？を議論することになりました。

 

実はこの時まで、惑星の具体的な定義が無かったのです。

それを明確にするため、世界中の天文学者がこの会議の行方を見守っていました。