風邪(カゼ)に効果的な漢方薬3種!特徴と使い方 (1/2)

風邪に効く漢方薬は「葛根湯」「桂枝湯」「麻黄湯」の違い。東洋医学の観点で見た、風邪を引く仕組みも解説します。

執筆者: 田伏 将樹 職業:薬剤師(漢方薬・生薬認定薬剤師)
風邪(カゼ)に効く漢方薬、どう使い分ける?

こんにちは、薬剤師の田伏将樹です。

 

風邪(カゼ)に使う漢方薬は、「葛根湯」(かっこんとう)だけではありません。
「桂枝湯」(けいしとう)や「麻黄湯」(まおうとう)、その他にもたくさんあります。


これらは、どのように使い分けられているのでしょうか。

 

カゼは、「正気」と「邪気」の闘争

一般的な感冒(カゼ)の原因は、ウイルスであることが多いのですが、直接目には見えないものなので、東洋医学では病気をひき起こす原因になるものを、「邪気」と表現してきました。


そしてその「邪気」に対抗する、人の免疫の力のことを「正気」と表します。
これにより、風邪(カゼ)をひいてしまう状態は、よく「正気」と「邪気」の闘争に例えられます。

 


「正気」が充実していれば、ごく弱い「邪気」が戦いを挑んできても相手にはならず、風邪はひきません。
逆に「邪気」が弱かったとしても、「正気」が衰えていれば、苦戦してしまいます。


もし「正気」が旺盛でも、それに匹敵するくらいの強い「邪気」に出くわしてしまえば、激しい戦い(高熱などのひどい症状)が起こってしまいます。

 

短期戦と長期戦。そのとき「正気」と「邪気」の強さは?
高熱は出たけど、すぐ治った!

風邪のとき、ある人は高熱を出します。
急に熱が上がりだすけれど、治りは早く、数日で熱は下がってしまい、その後すぐ元の生活に戻れるような人がいます。


戦い方として例えると、激しい戦いになるけれど、短期戦で一気にかたをつける戦法です。
「正気」の強さと「邪気」の強さを比べると、常に「正気」が上回っているときです。

 

微熱がダラダラ続いて、いつまでも倦怠感が残る…

一方で、ある人は、高熱は出ずに、微熱がだらだらと続くことがあります。
また、治ったかなと思ったあとも、何となく倦怠感が残ってしまうことがあります。


戦い方としては、じっくりじわじわと攻める長期戦の構えです。

 

 

「正気」が弱い人でも、体力を温存しながら、防御力を維持しておけば、いずれ邪気が弱まってきて勝利できます。
「邪気」を倒すために攻撃ばかりしていては、いずれ自身の体力も弱ってきて劣勢となってしまいます。

 

「正気」が弱まっているとき、「邪気」がそれほど強くなくても、力が拮抗しているので、このようなとき、一気に攻めこむというのが、危険な賭けになることもあるのです。

 

加勢する漢方薬は、チーム力が大切。

漢方薬を服用する、ということは、「正気」と「邪気」の闘いの場に、漢方薬の力が加勢されるというイメージです。

漢方薬というのは、複数の生薬が組み合わされて構成されています。
個々の生薬の作用(個人技)とともに、それらを構成して得られるチーム力が大切です。

例)

  • 「桂枝湯(けいしとう)」   … 攻撃と守備のバランスがとれているチームです。
  • 「葛根湯(かっこんとう)」…「桂枝湯」よりも攻撃力を強化したチームです。
  • 「麻黄湯(まおうとう)」   … 守備を配置せず、攻撃陣だけで構成されたチームです。