山椒(さんしょう)は、胃腸が冷えて下痢をする人におすすめの香辛料 [漢方薬"山椒"の効果効能]

漢方薬としての「山椒」の効能を紹介。血流を良くしてお腹を温める効果があるので、特に、胃腸が冷えて下痢をする人に最適。中国の山椒「花椒」と日本の山椒の違いも紹介。

執筆者: 田伏 将樹 職業:薬剤師(漢方薬・生薬認定薬剤師)
漢方薬としての「山椒」の効能

こんにちは、薬剤師の田伏将樹です。

 

一般的に「薬味(やくみ)」と言うと、風味を増して、料理の味を引き立たせるために添えるものですよね。
ですが、漢方薬においては、漢方処方を構成している一つひとつの生薬のことを薬味と呼びます。

なお、料理に使う薬味と、漢方薬の薬味との両方に使われているものがあります。

それが「山椒(さんしょう)」です。

 

ウナギの蒲焼に欠かせなくて、七味唐辛子の素材でもある日本固有の香辛料で、さらに漢方では薬としても扱います。

 

今回は、この山椒について漢方の観点から解説します。

 

漢方薬として用いられるのは、どの部分?

山椒は、ミカン科の植物です。

樹高が3mくらいになる木で、4~5月に花が咲き、実が秋ごろにかけて成熟します。


料理の薬味である山椒は、「春先の新芽(木の芽)・葉・花・夏前の青い果実(山椒の実)」などの部位が用いられます。

 

 

一方、漢方薬の薬味(生薬)となる山椒は、秋に成熟した果実の「果皮」の部分を用います。

 

 

山椒の効能

強い特異な芳香がある精油成分と、ピリッとする辛味成分が含まれています。

古くから香辛料としてだけでなく、殺菌作用による駆虫や、魚の毒を防ぐ目的で使われていたりもしたようです。


また、お正月に飲むお屠蘇の材料としても配合されています。

 

特に、冷えによる腹痛や下痢に効果的!

薬としては、消化不良や食欲不振に対して、健胃薬として用いることができます。

山椒の成分が、消化器の血流を良くしてお腹を温めてくれますので、胃腸の働きを改善する効果が期待できます。


特に、冷えによる腹痛や下痢に適します。

 

山椒を配合した代表的な漢方薬といえば「大建中湯」

山椒が薬味として使われる代表的な漢方薬に「大建中湯(だいけんちゅうとう)」があります。
医療用の漢方エキス製剤の中では非常によく使われていて、手術後の腸閉塞(イレウス)の治療や予防の薬として有名です。

 

山椒とともに消化器を温める生薬が配合されていて、腸の蠕動運動を正常にさせる効果があります。

お腹が冷えたとき、胃腸の働きが悪くなり、腹部膨満・腹痛(冷痛)・吐き気があらわれたり、腸がムクムクと異常に動くのを感じたりするときに適しています。

 

中国の山椒「花椒」と日本の山椒は違う!

中国産の山椒は、「花椒(かしょう)」というもので、日本産のものとは同じ仲間ですが品種が異なります。
形や大きさ、色が異なるだけでなく、成分も少し異なっています。


ですが、こちらも同様にお腹を温めるので、冷えによる腹痛や下痢に効果があります。
麻婆豆腐など四川料理のスパイスとして使うのが有名で、日本の山椒とは味は異なりますが、舌が痺れるような感じは似ています。


口に含んでいると口内がマヒしてくるので、民間療法では虫歯の痛みを鎮めるために使うことがあるそうです。

 

 

日本の漢方薬では、花椒は山椒で代用される

中国では花椒が薬として使われます。
生薬名は「蜀椒(しょくしょう)」ともいい、山椒と同様に用いることができます。


ただし、花椒は、日本では医薬品として認められませんので、日本の漢方薬では山椒で代用されます。

 

山椒と花椒を使うときの注意点

山椒と花椒は、冷えやすくてお腹が痛くなったり、冷えて下痢をしやすい人に適した薬味です。
逆に、熱がある時、脱水の傾向の時には控えるなどの注意が必要です。


子供や妊婦さんも摂り過ぎない方がいいでしょう。

 

おわりに

現代では、寒い季節だけでなく、夏でも冷えにお悩みの女性がたくさんいますね。

体を温める生薬は、山椒以外にもいろいろあります。

気になっている方は、一度漢方の専門家に相談してみはいかがでしょうか。

 
 

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