欧州の中心、ベルギーの公用語とブリュセルの言語事情
今回はベルギーの公用語と言語事情についてご紹介したいと思います。EUの本部がブリュッセルにあり、歴史的にも地理的にもヨーロッパの中心であるベルギーでは、多くの言語が入り混じって、複雑な言語事情を形成しています。
ベルギーはとても小さな国です。面積は九州と同じくらいでフランス、オランダ、ドイツ、そしてルクセンブルクと4カ国と接しています。
19世紀の独立まで近隣諸国の統合と離脱が繰り返され国家としては安定しない歴史がありましたが、1839年に独立を果たした後、地理的にもヨーロッパの中心ということもあり、首都であるブリュッセルがECの首都となるなど政治的にもヨーロッパの重要な都市となっています。
さてこのような歴史があるベルギー、公用語もその歴史の煽りを受けてオフィシャルにはフラマン語(ほぼオランダ語と言っても良いオランダ語に近い言語。英語ではフレミッシュ)、フランス語、ドイツ語の3ヶ国語です。クリスマス恒例の国民に対する国王のメッセージもちゃんと3ヶ国語で語られます。いやはや王様も大変ですね。
ベルギーはその言語が使われる地域により分かれていて、フラマン語は北部フランドル地方(全人口の60%)、フランス語は南部ワロン地方(39%)、そしてドイツ語はドイツ国境地域(1%)となっています。(他にもルクセンブルク国境付近ではルクセンブルク語が使われています。)
そんなベルギーでの言語戦争は有名でフラマン語系とフランス語系の対立は根深いものがあります。政治的に1993年にフランデレン地域とワロン地域とブリュッセル首都圏の区分を主とする連邦制に移行した後も、同じ大学でも、使用する言語によってそれぞれ別々の場所にあったりなど、いわゆる言語戦争のなごりが未だにそこかしこに見受けられるのが現状です。
ベルギーの首都であるブリュッセルはブリュッセル首都圏地域(仏: Région de Bruxelles-Capitale、蘭: Brussels Hoofdstedelijk Gewest)といい、公用語はフラマン語とフランス語の二ヶ国語です。
ただ、ブリュッセルはフラマン語圏のフランドル地方の都市ではあるものの、圧倒的にフランス語系の住民が多く(85%〜90%)フラマン語系はごく少数派です。一応、二ヶ国語併記が義務化されているので街の中ではお店の表記が二ヶ国語になっていたりしますが、やはりフランス語だけの表記も目につきます。 それでも説明が必要なところはちゃんと二ヶ国語になっています。 例えばこちらの看板。
これはオーガニックマーケットですが、開店時間のお知らせです。上がフランス語、下がフラマン語で同じことがちゃんと二ヶ国語に分けて説明されています。お店の人もちゃんと二ヶ国語出来ないといけないので大変ですね。他にもこんな駐車場のお知らせの看板も…
これは車上ねらいを避けるために貴重品はすべて持ち出しましょうという注意です。この場合は一文ずつ上にフランス語、下にフラマン語、と少々忙しい感じですね。 大体共通しているのは最初にフランス語が表記されるという点でしょうか。やはりフランス語系が圧倒的に多いということが影響しているのでしょうね。
実際ベルギー人は基本的にはバイリンガル。しかし、フランス語系の人達がフラマン語が上手に話せないのと同様に、フラマン語系の人達のフランス語をちゃんと話せる率も結構低かったりします。同じ国に住んでいながら言葉が通じなかったりするのもおかしな話ではありますが、それもこれもあの言語戦争の影響なのでしょうか。
フラマン語の地域に行くとフランス語が一切なくなってしまうので同じベルギー人でもフラマン語が苦手だったりすると何が書いてあるのやらさっぱりなんていうこともあります。
ここはアントワープを過ぎたあたりの高速道路の標識ですが、この辺りはフラマン語圏ですので当然の事ながら表示はフラマン語オンリー。この標識は場所の名前の説明かと思われますが私には何が書いてあるのやらさっぱり…。なんとなく単語で想像するくらいしか手立てがありません。
私の経験でいくと息子がまだ幼稚園だった頃少しの間だけフラマン語系の幼稚園に入っていたことがあるのですが、一歩建物の中に入るとそこはフラマン語圏となり張り紙もすべてフラマン語、先生もフランス語が苦手な様で、まるでフラマン語圏にいるような錯覚を覚えたものです。
これは、フランス語がメインの言語であるブリュッセルに住んでいるとフラマン語に接することがあまりないのでこのように感じてしまうのかもしれませんが…。
こんな風にフランス語とフラマン語が混在するブリュッセル、それでもNATO本部があったり国際的にも重要機関がたくさんあるだけにコスモポリタンな都市なので英語は勿論OKですし、街を歩いているとあちこちから色んな国の言葉が聞こえてきたりするものです。
お買い物をするときもパッケージを良く見てみるとフランス語とフラマン語の表示が必ずしてあり、下手をするとそれにドイツ語、英語まで加わってパッケージが文字だらけなんてことも。そんな発見もあるブリュッセルの言語事情なのです。
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田原いずみ
名古屋出身。実家は現在岐阜だが生粋の名古屋っ子を自負する‘なごやん’。
大学在学中からモード一筋でパリを愛する。念願叶い1989年、1995年に二度仕事でパリへ。
二度目のパリで知り合ったベルギー人の夫と1996年に結婚、1年後(不本意ながら)ブリュッセルへ移住。以来時の流れには逆らえず住めば都でパリが東京ならブリュッセルは仙台と言われつつ、まあブリュッセルも悪くないかもと現在に至る。
夫、愛息子の3人暮らしのブリュッセル生活の傍ら、かねてからの書き物好きが高じてブログを開始。本業はFuchsia by Izumi Taharaデザイナー(気持ち的にはアルチザン – 職人)としてヴィンテージジュエリーを使った1点もののジュエリー制作。パリで展示会コーディネーターも行う。
ブログ、ブリュッセル。は超私的なブリュッセル案内です。 偏愛アドレスの数々をマップ付きでご紹介。さらに思わずクスっと来る日々の暮らし、ベジレシピなど。ブリュッセル初めての方も、お住まいの方も楽しんでいただける新しい情報ブログです。
http://bruxelles-bxl.com
ヴィンテージを使った一点ものジュエリー、Fuchsia by Izumi Taharaのサイトはこちらで!
http://fuchsiabyizumitahara.com
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