春の訪れとともに、今年も花粉症の季節がやってきた。日本気象協会によると、昨年の夏の気温が高く、日照時間が長かったなどの気象条件の影響のため、スギ及びヒノキ花粉の総飛散量は関東地方で例年のおよそ1.5倍となるらしい。既に、花粉症の症状に苦しんでいる人も多いことだろう。昨年の飛散量が少なかっただけに、いっそう症状が厳しく感じられるのではないだろうか。


花粉症に苦しむ人が多いだけあって、花粉症の対策グッズも非常にたくさん販売されている。薬や目薬はもちろん、マスク、メガネなど、症状をやわらげるものや、とにかく花粉に触れないようにするものなど、多種多様だ。けれども、花粉症に苦しんでいる人にとっては、完璧な予防方法はないというのが実感かもしれない。このままあとしばらくは憂鬱な季節が続くと思うと、気が滅入ってしまう人も多いことだろう。

少しでも症状をやわらげたいと思っている方に、ひとつ良い情報がある。それは、EPA(エイコサペンタエン酸)という成分が花粉症によいと考えられているということだ。EPAとは、健康を維持するために欠かすことのできない脂肪酸の一つで、イワシなどの青魚の油に多く含まれているほか、昆布やワカメなどの海産物にも含まれている。

近年の研究で、EPAは花粉症やアトピー性皮膚炎、喘息といったアレルギー症状の緩和に効果があると考えられるようになっている。青魚に含まれる脂質は、α-リノレン酸のEPA(イコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)という成分で、過剰にとったリノール酸系の油とのバランスを整え、免疫の働きを正常にしてアレルギー症状を抑える働きを持っているのだ。

そもそも花粉症とはアレルギーの一種で、花粉に含まれる抗原が体の中の抗体と過剰反応することで、「クシャミ」「鼻水」「涙目」などの症状が出ることを指す。

過剰反応を示すことで有名なロイコトリエンは「鼻詰まり」、ヒスタミンは「クシャミ」「鼻水」を引き起こすのだ。ロイコトリエンは細胞膜の脂肪酸が変化して発生する物質で、EPAやDHAを多く摂ることで産生を抑制できることから、EPAやDHAが花粉症の症状を軽減できることが考えられる。

既に述べたように、EPAとは脂肪酸の一種であり、脂肪酸は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられる。高血圧や動脈硬化を招きやすいのはAA(アラキドン酸)を含む牛や豚などの肉、バターなどに多く含まれる飽和脂肪酸である。

一方、n-3系不飽和脂肪酸であるEPAには中性脂肪を減少させ、動脈硬化の原因とされる悪玉コレステロールの生成を抑え、血液をサラサラにするなどの働きがある。 花粉症などのアレルギー以外にも、さまざまな効果が期待されているのだ。


例えば、持久力の向上や抗炎症作用、精神安定、眼精疲労の抑制、肌の潤いなど、非常に幅広い効果が期待される、人の体にとって欠かせない大切な成分であると言えるだろう。

しかし、EPAは体内でほとんど作ることができないため、食物などから意識的に摂取しなければならない。青魚などに多く含まれるが、焼く、煮るといった調理によっては油が流れ出てしまう場合もある。

また、青魚や刺身が苦手な人、魚嫌いの人、食生活が不規則で魚が摂れていない人、また中性脂肪値が高い人やメタボが気になる人は、EPAを意識的に摂取することが必要だろう。

魚に含まれる脂肪酸ということでは、EPAよりも、生活習慣病予防などに役立つ健康成分としてDHAを耳にしたことのある人が多いかもしれないが、実際の医療現場で注目されているのは、むしろEPAであるということは意外と知られていない。

また、EPAは摂取した後に、一部体内でDHAに転換されるため、DHAの機能を兼ねているとも言える。つまり、EPAを基準に摂取すれば、EPAのみならず、DHAも摂取することができるのだ。

花粉症対策はもちろん、健康維持のためにも意識的にEPAを摂取したいものだ。特に青魚が苦手な人や食生活が乱れている人は、EPAが摂取できるような食事や対策を考えてみてはどうだろうか。

この記事を書いたコラムニスト

関連コラム