嘘つきは心の病? 子どもが嘘を多用する原因と関連する病気について
頻繁に嘘をつく子どもの心理とは?「口から出る言葉がほとんど嘘」という子どもの背景にあるものを解説。仮病を使う理由や、嘘を多用する症状が見られる病気「虚偽性障害」「反社会性パーソナリティ障害」も紹介。
こんにちは。メンタルケア心理士の桜井涼です。
以前のコラムでは、子どもが嘘をついてしまう理由についてご紹介しました。
今回は、嘘を多用する子どもがいることについてお話ししたいと思います。
●関連コラム
子どもが「嘘」をつく理由は、年齢によって変わる!幼児期~小・中学生頃まで、成長に合わせた対処法
嘘にもいろいろありますが、「口から出る言葉がほとんど嘘」という子どもも中にはいます。
私自身、塾講師をしていたときに受け持っていた子どもの中にもいました。
当時、小学2年生だったAくんが私に発した言葉です。
- 「学校で○回連続100点取った」
- 「去年は家族でヨーロッパに行ったから、今年は家族でハワイに行く」
- 「○○(ゲーム名)を全クリした」
ちょっと聞いただけでも「すごいね!」と言ってしまう内容ですよね。
ですが、これらのすべてが嘘だということが後日判明しました。
私が彼のさまざまな嘘の話を聞いていて感じたのは、『寂しさ』でした。
これを感じることができたのは、背景(日常生活など)を見て子どもと話をし、観察したからです。
このような嘘を言ってしまう子どもの胸中には、「自分の存在を見て欲しい」「目立って構ってもらいたい」など、寂しさを埋めたいという気持ちがあります。
人が持つ欲求には段階があり、その中の承認の欲求は、他人に認められたいというところにあたります。
そのことを踏まえて背景や心の状態を見ていくと、孤独・寂しさ・親子関係の希薄さが関係しているのです。
子どもが「お腹が痛い」「頭が痛い」といった具合の悪さを訴えることがあるかと思います。
そこにも嘘があるのではないかと考える人もいるでしょう。
いわゆる“仮病”です。
何ともないのに「お腹が痛い」や「頭が痛い」というときも背景を見ることが大切です。
子どもが仮病を使う理由は、次のとおりです。
- 何かをやりたくない
- 心配してもらいたい
- 構ってもらいたい
子どもが仮病を使う3つの理由の中でも、特に背景が大きく関わっているのは、『心配してもらいたい』と『構ってもらいたい』です。
子どもが愛情不足を感じてしまうと、強い不安感を持ちます。
親に心配をかけたくないと思う反面、その不安をどうにかしたいと思うために、仮病を使うことがあります。
何らかの事情で寂しさを抱えている子は、病気のときに優しくされたことを思い出して、仮病を使ってしまうことが考えられます。
仮病は、嘘と似ていますが、実際に痛みを感じたりすることもあります。
ですから、すべてが嘘とは言えないのではないでしょうか。
嘘を多用し過ぎる場合、親は「病気や障害ではないか?」と不安になることもあるでしょう。
嘘を多用することが診断基準の中にある病気がいくつか存在します。
「身体症状および、それに伴う健康への懸念に関連した過度な思考、感情、または行動をする」
わかりやすくいうと、病気の悪化や病人のふりをしてしまうような発言や行動があるということです。
「繰り返し嘘をつく、偽名を使う、自分の利益や快楽のために人を騙すという虚偽性を示す」
良心がほとんどない、あるいは全くない状態で、社会的規範や他者の権利や感情を軽視したり、無視したりするといった特徴があります。
※参考情報:DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル
今回ご紹介した病気の診断基準は、この症状のみで判断するものではありません。
自己判断は危険ですから、心療内科やメンタルヘルス科の受診をおすすめします。
子どもに「嘘をつくことはいけない」と話をしても、自分を守るためなどの理由でついてしまうことがあります。
ですが、多用するような場合は、背景に何らかの理由が隠れていることを忘れないでください。
孤独や寂しさ、愛情不足など、子どもにとって不安を抱えるようなことがあれば、気を引きたくなって当然です。
嘘を叱ることも大切ですが、子どもがなぜこんなにも嘘をつかなければならなかったのか、そこを見てあげる必要があります。
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