ジョロウグモから考える性。大きくて派手、小さくて地味、どっちがオス?
生き物の「雄(オス)」「雌(メス)」は、どのように決められているの? ジョロウグモを例に、生物学的な性の定義を紹介。性別の種類が、2種類ではない生物も!
こんにちは。生き物好き&占い好きな気象予報士の金子大輔です。
秋になると、街の近くでも大きなクモの巣をよく見かけるようになります。
巣の主は、黄色と黒の縞模様で、腹に赤色が入った派手で大きなクモ。
みなさんのご近所にもいませんか?
Wikipediaより引用
このクモは、「ジョロウグモ」というクモです。
大きな個体で体長30ミリに達し、巣の大きさは直径1メートルに達することもあります。
強烈な容姿なので、苦手な方はぎょっとしてしまいますが、性質は温和で、ヒトには一切害はありません。
捕まえて強く握ったりすると、ごくまれに噛みつく場合がありますが、手の上で歩かせて遊ばせる程度であれば、問題ないでしょう。
ジョロウグモの巣を見つけたら、ちょっと観察してみましょう。
大きくて派手なクモの近くに、小さくて地味なクモが同居していることがあります。
「ジョロウグモの赤ちゃんだ!」と思いがちですが、このクモ、実はジョロウグモの雄(オス)です。
そう、派手で大きなクモは雌(メス)なのです。
ジョロウグモをはじめ、クモや昆虫の多くは、雄より雌の方がはるかに大型です。
また、昆虫や鳥類、魚類では、雄が美しい色彩をしていることがしばしばです。
美しい羽のクジャク、虹色が美しいタナゴ(淡水魚)、目が覚めるような金緑色に輝くミドリシジミ、これらはすべて雄です。
右) ミドリシジミの写真は、Wikipediaより引用
こうなると、雄、雌っていったい何なのかという疑問が起こりませんか?
ヒトを始めとした哺乳類では、たいてい雄のほうが大型です。
ヒトでは、主に雌(女性)が美しさをウリにしてきましたが、他の生物では、雄が美しさや派手さをウリにして雌を誘うことがしばしばです。
生物学的に「どちらが雄」かは、どのように決められているのでしょうか。
生物の性(雄か雌か)は、作る生殖細胞の大きさで定義されます。
- 雌(メス)… 大きい生殖細胞(卵子)を作る方
- 雄(オス)… 小さくて運動能力を持つ生殖細胞(精子)を作る方
ですから、ヒトと同じような感覚で、体の大きさや派手さを基準にして見分けようとすると、事実とは違う性別に見誤ってしまうのです。
なお、小型の精子は、大量に作られ、個人差があれどヒト(男性)では一生で兆の単位以上です。
一方、ヒト(女性)が一生で作る卵子は、せいぜい500個程度しかありません。
精子は「とにかくたくさん作ってばらまく」、卵子は「一つ一つを大事に育てる」、コンセプトがまったく異なるのです。
男性が惚れっぽいのに対し、女性が相手を慎重に選ぶのは、このような背景もあります。
地球上のほとんどの生物では、性別は雄・雌の2種類です。
しかし、中には2種類でないものがいます。
ミミズやナメクジは1種類(雌雄同体)で、理屈の上では2匹いれば必ず生殖できることになります。
では、性別が3種類以上あるものはいるのでしょうか?
はい、菌類(カビやキノコの仲間)でいます。
なんと、性別の種類が1,000種、いや10,000種(!)を超える種までいるのです。
生物の究極の目的である「生殖」を考えると、性別の種類は多い方がよい気がします。
2種類では、ランダムに出会った2個体が異性である(生殖可能である)確率は2分の1ですが、性別が100種類なら100分の99にまで跳ね上がります。
ところが、多種の性を持つ菌類で見ると、「異性ならよい」というわけでなく、特定の組み合わせでないと生殖できないのです。
性aと性bでは生殖できるが、性aと性cではできないなど、複雑でややこしく、むしろ生殖の確率を下げてしまっています。
大多数の生物が性別2種類という進化を選んだ背景は、このあたりにありそうですね。
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生き物が大好きな気象予報士&教員&物書き&占い師。生き物はゴキブリも含めすべて好きで、生き物と天気については話し出したら止まりません。ディズニーランド好き、絶叫系好き、激辛好き。
著書
『こんなに凄かった! 伝説の「あの日」の天気』
『気象予報士・予報官になるには』
『気象予報士 (シリーズ“わたしの仕事”)』
『世界一まじめなおしっこ研究所』
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