初心者の美味しいワイン選び。アルコール度数による味の特徴 -後編-

執筆者: 鈴木暢彦 職業:ソムリエ・ワイナリーツアーアテンド
はじめに

皆さん、こんにちは。イタリア共和国トスカーナ州在のソムリエ鈴木暢彦です。
今回は“「知識がなくても分かる、ワインの選び方その3」です。

テーマは、アルコール度数の“数字”から得られる情報の重要性についてです。

 

 

アルコール度数とワインの強さ

ワインラベルに記載される、容量、収穫年について前回までご説明しました。

今回の3番目の数字、それはアルコールの度数です。

 

これも、収穫年と同様にワインを分析する上で非常に重要なヒントとなります。

なぜならアルコールは、ワインの構成、柔らかみ、コク、強さ、飲みごたえという部分に直結する要素の一つだからです。

現代のイタリアワインは一般的に、アルコール度11%~15%の幅で生産されています。

(※アルコール5%ほどのワインや17%以上のワインもあります)

 

アルコール度数は、ブドウの完熟度で決まる

アルコール度数は、ブドウがしっかりと完熟し、糖度が高くならないとつくり出すことが出来ません。

それは、醸造時に酵母の働きによって、糖度がアルコールに変化するためです。

 

つまり、しっかりしたアルコール感のある(ボディのある)ワインを造るには、それなりに糖度を持ったブドウから醸造される必要性があるということです。

気候などの影響もあるので、毎年全てのブドウがしっかり完熟して、高い糖度を持ってくれるわけではありません。

このようなことから、生産性重視のワインは、完熟度に関わらずブドウが機械で収穫されることも多いので、アルコールが高いということは基本的にありません。

 

生産重視と品質重視のワイン

例えば、イタリアのスーパーで売っている紙パックタイプの調理用ワインなどは、10~11%くらいのアルコールくらいしかありませんし、イタリア人が家族で自家用に造るワインなども、この程度のアルコール度数が一般的です。

そして、ある一定の品質を重視して造られるイタリアワインの場合、12~14%のアルコールが平均的な度数です。

2~3度の差ですが、その差により、ワインの印象はかなり変わってきます。

 

アルコール度数の違いによるワインの特徴
  • 12%以下は、飲み心地の良さ、軽快さをより感じられる数値。
  • 14%以上は、重たさ、凝縮感、濃厚さ、飲み応えを感じられる数値。


このような見解を持つことが出来ます。

飲み応えという部分では、アルコール度は最低限必要で、例えば長期の熟成タイプのワインというのは、得てしてアルコール度が13%以上のものがほとんどです。

13%あれば、構成はある程度しっかりしていると判断出来ます。

 

つまり、アルコール度数は熟成に耐え得る骨格を造る要素の一つでもあるのです。

また、アルコールや容量は熟成年数を重ねるにつれ、少しずつ減っていきます。 

 

おわりに

数字だけで、ワインの色々な要素を想像することが出来ましたね。

つまり、2013年のワイン(若いヴィンテージワイン)で、12%のアルコールのワインであれば、フレッシュでシンプルな構成の軽快な飲み口のワイン=ライトボディワイン。


逆に2010年(熟成したヴィンテージワイン)で14%のアルコールのものであれば、複雑な構成の、アルコール感のあるしっかりした飲み口のワイン=フルボディワインと想像することが出来ます。

この数字の情報に、ブドウ品種、原産地呼称名、生産者名の理解が進めば、さらにワイン選びが本質に近づくでしょう。

この世界には色々なタイプの葡萄酒があるので、例外ももちろんあると思います。
しかし、イタリアで原産地呼称法に則ったクオリティーワインの場合は、このような数字から得られる情報が、ワイン選びにも大変役立ちます。

ワインショップやレストランでワインを選ぶ際には、数字にもぜひ注目して下さいね。

 
 コラムニスト情報
鈴木暢彦
性別:男性  |   現在地:シエナ  |   職業:ソムリエ・ワイナリーツアーアテンド

2008年 日本ソムリエ協会 ワインエキスパート取得
2009年 4月 イタリア トスカーナ州フィレンツェへ
2009年 10月 シエナにある国立のイタリアワイン総合文化施設エノテカイタリアーナにて研修
2010年 エノテカイタリアーナ ソムリエ
2014年 エノテカイタリアーナを退職
      イタリアソムリエ協会 AISソムリエプロフェッショニスタ資格取      得
      中心街のリストランテで働きながらワイナリーツアーなどを行う。
      訪問ワイナリーは70件以上
      日本のインポーターへのワイナリー紹介など

鈴木暢彦

ブログ 新イタリアワイン エノテカイタリアーナ
    http://enoteca-italiana.ldblog.jp/

問い合わせ nobu.enotecaitaliana@gmail.com 

 

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