全州でワインを生産しているイタリア。豊富なブドウ品種と気候で作られたワイン文化 (1/2)

執筆者: 鈴木暢彦 職業:ソムリエ・ワイナリーツアーアテンド
はじめに

こんにちは、イタリア共和国トスカーナ州在のソムリエ、鈴木暢彦です。


世界有数のワインの産地、イタリア。

奥深いイタリアワインの世界を、なるべく分かりやすくお伝えしていきたいと思います。


 

イタリアのワイン生産

イタリアワインは、世界的に見てどのような特徴があるのか。

まずは、地理上のデータからご紹介します。



イタリアの国土面積は、約30万㎢で日本の国土面積のおよそ80%。

日本同様に四季があり、海に囲まれた、南北にブーツ型の地形をしています。

 

ワインの生産をしている州は、全20州中20州。

すなわち、全州でワインが生産されているのです。

また、年間のワイン生産量はフランスと並び世界1位で、ブドウ畑の総面積もフランスとほぼ同じ、約84万ヘクタールです。

 

イタリアとフランス

イタリアとフランスは、ほぼ同じワインの生産量とブドウ畑面積を誇っています。

しかし、国土面積を比較すると、フランスの約55万㎢に対し、イタリアは約30万㎢。

つまり、イタリアは、国土におけるワイン生産の密度が、フランスより高いことになります


言い換えれば、イタリアは世界トップのワイン生産量を誇る国であり、なおかつ、国のほとんどの土地がワインに関わっている国、ということになります。


 

イタリアの全州でワインを生産

ワインの世界で興味深いのが、イタリアが「全ての州でワイン用のブドウを生産している」という特徴。

なぜなら、通常、1国で1種の果物が、全国規模で名産として生産されることはないからです。

 

例えば、イタリアと同じように海に囲まれ、南北に弓なりの形をしている島国の日本。

全国で、美味しいリンゴやミカンが簡単に生産できるということは、まずありません。

それぞれの果物には、それぞれの名産地があります。

それは、その果物を栽培するのに、より適した気候や土壌が限られるからです。

 

それでは、なぜ、イタリアでは全国でワイン用のブドウ生産が可能なのでしょうか。

ワイン造りに恵まれた太陽の国・イタリア

紀元前にギリシャ人が、現在の南イタリアにブドウを持ち込み、そこから派生したイタリアワインの歴史。

当時のギリシャ人は、あまりにもワイン造りに恵まれた環境を持つこの土地を羨望し「エノートリア・テルス」(ワインの大地)と呼んだそうです。


その恵まれた環境とは、まず、太陽の恵みと言えるでしょう。

太陽の恵みがあるというのは、1年間のブドウ収穫までのサイクルで、雨が少なく、晴れが多いことなのです。

澄み切った青空とブドウ畑の広がる丘陵地。トスカーナ州シエナ

 

年間降水量

過去30年間の年間降水量の平均値を見てみましょう。

 

  • 日本の東京:1466㎜
  • ブドウの名産地、山梨県甲府:1109㎜



いずれも、イタリアは日本各地の年間降水量を大きく下回り、カターニアは東京の3分の1以下。

一般的に、ブドウ栽培の理想的な降水量は、年間500〜900㎜と言われています。


水に弱いブドウ

ブドウは繊細で水に弱く、生育期に雨が多いと実がうまく熟さなかったり、病気をしてしまいます。また、雨により水分を蓄えたブドウの樹は、水を求めに地中深くまで根を伸ばしません。

そのため、土壌の栄養素やミネラル分の吸収力が弱まり、結果、味わいに広がりのない質素なワインになりかねないのです。


ブドウの生育期に雨季がなく、太陽の恩恵を受けながらブドウが完熟していくこと。

それこそが、質の良いワインを造る上での理想的条件となるのです。

そして信じがたいことに、イタリアは、全国においてこの条件を達成し得る国なのです。

 

 
 コラムニスト情報
鈴木暢彦
性別:男性  |   現在地:シエナ  |   職業:ソムリエ・ワイナリーツアーアテンド

2008年 日本ソムリエ協会 ワインエキスパート取得
2009年 4月 イタリア トスカーナ州フィレンツェへ
2009年 10月 シエナにある国立のイタリアワイン総合文化施設エノテカイタリアーナにて研修
2010年 エノテカイタリアーナ ソムリエ
2014年 エノテカイタリアーナを退職
      イタリアソムリエ協会 AISソムリエプロフェッショニスタ資格取      得
      中心街のリストランテで働きながらワイナリーツアーなどを行う。
      訪問ワイナリーは70件以上
      日本のインポーターへのワイナリー紹介など

鈴木暢彦

ブログ 新イタリアワイン エノテカイタリアーナ
    http://enoteca-italiana.ldblog.jp/

問い合わせ nobu.enotecaitaliana@gmail.com 

 

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