プラシーボ効果は思い込み?原因不明の治癒現象の謎に迫る!

執筆者: 水口 直樹 職業:プラセボ製薬株式会社
はじめに

こんにちは、プラセボ製薬株式会社の水口直樹です。

 

プラシーボという言葉を聞いたことはありますか?
私は、プラシーボの専門家と言っても、プラシーボのことを全て分かっている訳ではありません。

実のところ、プラシーボを完全に理解している人は1人もいないのです。

ここでは、そんなプラシーボの不思議や謎を、皆さんと共有したいと思っています。

プラシーボ効果とは

プラシーボ効果は広く知られています。

薬効成分を含まない偽薬を服用しても、効くと思い込めば効いてしまう効果がプラシーボ効果である。

こういった風に考えられています。


しかし、それは本当なのでしょうか。
少し違った側面からプラシーボ効果を捉えてみましょう。

 

 

プラシーボと偽薬の違い

そもそも「プラシーボ」とは何でしょうか。

 

元々は、ラテン語の「私は喜ばせる」という意味の言葉で、日本語では「偽薬」と訳されます。

そのため、プラシーボは薬効成分を含まない薬の偽物だと考えられがちですが、実はそうではありません。

 

偽手術でも効果あり?

 

 

関節痛を訴える患者さんに、何ら治療効果のある外科的行為をせず、ただ患部に切開傷を付けただけの「偽手術」を施した場合でも、実際に痛みが取れてしまう例が報告されています。

その効果は、偽薬という言葉からは想像もできない、様々な形で私達の目の前に現れているのです。

プラシーボの意味は広がり続ける

偽薬、偽手術だけがプラシーボではありません。

 

医師や看護師による親密な言葉掛けや態度、祈祷師の呪術、親が子に使うおまじない(例:痛いの痛いの飛んでいけ)なども人の心に作用し、実際に身体的、精神的な変化をもたらすプラシーボの一種と考えられています。


このことをどう考えれば良いのでしょうか。
プラシーボは、定義し切ることのできない、かなり曖昧で概念的な物なのです。

 

科学では解明できないプラシーボ効果

プラシーボ効果は思い込みの効果だ、とする考え方から少し外れてみましょう。

 

 

科学的に説明のつかない治癒現象である

 

プラシーボ効果とは、医療の現場でたびたび認められる、科学的に説明のつかない治癒現象に与えられた名前です。
より端的に言えば「原因不明の治癒現象」を言い換えた言葉。

 

科学者は、分からないと認めることを避けたがりますし、宗教者のように神や奇跡を持ち出すことを好みません。
思い込みも、そんな分からなさをごまかすための、1つの仮説や言い換えに過ぎないのです。

 

 

この現象を概念として共有するために

 

 

それでも、目の前には明らかな治癒現象がある。

この現象に名前を付けて概念として共有しておきたい。

 

そうした目的から「プラシーボ効果」という言葉が生まれました。
そして、この原因不明の治癒現象をもたらす物がプラシーボなのです。

 

非常に抽象的で概念的で複雑ですが、これがプラシーボの実態。
プラシーボは、偽薬という言葉の枠に収まり切らないことだけは確かです。

おわりに

プラシーボ効果は不思議に満ちています。

次回以降では、こうした謎をより深める魅力的な情報や、プラシーボ効果の解明に向けた科学者の取り組みをお伝えする予定です。