「薬用養命酒」の生薬成分(14種類)と効能を解説。冷え性や滋養強壮におすすめ

養命酒に含まれている14種類の生薬成分を、東洋医学的に解説! 体を温め、冷え性や加齢による滋養強壮に効果的です。

執筆者: 田伏 将樹 職業:薬剤師(漢方薬・生薬認定薬剤師)
衰えを補ってくれる薬「養命酒」

こんにちは、薬剤師の田伏将樹です。

 

養命酒は、自然の生薬が原料の薬です。

お酒に生薬を漬けて成分を抽出させる「薬酒」という剤形のものです。

 

 

  • 疲れやすくなった
  • 元気が出なくなった
  • 胃腸が弱くなった
  • 冷えやすくなった
  • 足腰がだるくなった


このように、何となく以前よりも衰えを感じるようになってきたな、というときに試してみたい薬です。
衰えを補ってくれる、14種類の生薬が組み合わされています。

各生薬は幅広い効能をもっていますが、代表的なものを、東洋医学の概念とともにご説明していきます。

 

東洋医学における「老化」の考え方

東洋医学では、人体を構成する成分を「気・血・水」の3つに分類します。
この気・血・水が、十分に満たされており、かつスムーズに巡っていることが、健康な状態と考えます。

また、東洋医学には、成長または老化にかかわる臓器として「腎」(じん)というものがあります。
もって生まれた生命力を蓄えているのが「腎」です。

 

加齢による身体の衰え =「腎」の衰え

加齢による身体の衰えは、「腎」の衰えととらえます。
具体的には腰痛、足腰のだるさ、しびれ、関節痛、尿トラブル、冷え、不妊などです。

「腎」を補う生薬
1. 淫羊藿(インヨウカク)

「イカリソウ」とも言われる草です。

昔から滋養強壮、強精の効果があると言われており、イカリソウ流エキスとしても、栄養ドリンクに含有されていることがあります。

 

2. 杜仲(トチュウ)

杜仲の葉は、健康茶として知られていますが、生薬として使うのは樹皮です。

淫羊藿ともに、筋骨を丈夫にする生薬です。

 

3. 肉蓯蓉(ニクジュヨウ)

腰や関節がだるく、冷えて痛むときなど、「腎」を補うのに適した生薬で、便通改善の作用もあります。

 

「気」の産生を増やす生薬

「腎」の強さは先天的(遺伝的)なものが大きいのですが、「脾」(胃腸)の働きが、それをバックアップしています。
体質的に「腎」が弱くても、生まれた後に、食べ物や大気からのエネルギーをしっかりと利用することができれば、「腎」が弱まるのを抑えることができるのです。

腎を補うための「気」の一部は、食べ物を消化吸収することで得られます。

 

4. 桂皮(ケイヒ)

身体を温める生薬です。

 

養命酒がシナモンの香りがするのは、この桂皮が入っているためです。

芳香健胃薬としての効果があります。

 

5. 丁子(チョウジ)

これも特有の香りがあり、ハーブでは「クローブ」と呼ばれます。

胃腸を温めることで、消化器の働きを整えます。

 

6. 人参(ニンジン)

薬用ニンジンは、漢方薬に欠かせない生薬です。

消化器、呼吸器ともに働きを良くさせて「気」を増やします。

 

「気」は生命活動のエネルギーとも言える根本のものです。
もし「気」が足りなければ、血と水も十分に作り出せなくなっている可能性があります。

 

なお、胃腸が冷えると消化吸収のはたらきが悪くなり、気の生産力が低下します。
普段の食生活においても、冷たいものの飲食に気をつけてください。

 

「血」を増やす生薬
7. 地黄(ジオウ)

血を補う、潤す作用のある生薬です。

足腰の衰えに使う漢方薬に、よく配合されています。

 

8. 芍薬(シャクヤク)

血を補うとともに、痛みを和らげる作用もあります。

「血」を巡らせる生薬

「気」が十分に体を巡っていることが、健康・若々しさに欠かせません。
血や水も「気」によって運ばれますので「気」が巡っていなければ、血と水の流れも滞ってきてしまいます。


血の流れが悪いと、しびれ、こり、痛み、冷え、肌荒れを招きます。

 

9. 紅花(コウカ)

ベニバナです。

漢方薬では瘀血の治療(血行を改善するため)に広く使われています。

 

※ただし、妊婦さんは控えるべき生薬です。

 

10. 益母草(ヤクモソウ)

名前には、「婦人にとって役に立つ薬」という意味があります。

血の巡りが悪くて、月経不順や月経痛が起こるときに使われる生薬です。

 

11. 鬱金(ウコン)

ショウガ科。

色付けのスパイスでは、ターメリックと言われます。

 

生薬としては、血行を良くするはたらきがあります。

 

その他の生薬
12. 防風(ボウフウ)

「水」の代謝を改善し、関節の痛みやしびれをとる生薬です。

 

13. 烏樟(ウショウ)

香りが良く、体を温めるとともに気持ちを落ち着かせます。

 

14. 反鼻(ハンピ)

マムシを精製したものです。

 

マムシは、滋養強壮に昔から利用されています。

栄養ドリンクには「ハンピチンキ」として入っています。

 

15番目の成分「アルコール」

そして15個目の成分として、アルコールが入っています。

少量のアルコールは、血流を良くし、消化を促進しますので、生薬の吸収と、全身への薬の巡りを助けます。

 

ちまにみ、アルコール分は14%。

日本酒やワインと同程度、含まれています。

 

 

養命酒を飲む場合の注意点

養命酒はアルコールとともに、体を温める生薬がたくさん使われています。
冷え性の人には適しますが、ほてりや、のぼせの出やすい人は気をつけてください。

 

また、女性で月経過多のときも、慎重に使った方がいいと思います。

 

おわりに

「腎」を補うことが、老化の防止につながります。

逆に胃に負担をかけたり、過労・寝不足・性生活の乱れで、「気」(エネルギー)を浪費していると、「腎」の衰えを加速し、老化を早めます。


東洋医学で日頃の「養生」を何より大事とするのはこのためです。

 
 

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