「児童虐待の通報を躊躇ってしまう心理」って?勘違いかも、仕返しされるのでは…専門家がぶった斬る!

もしかして虐待?近所の子供や生徒、友達など、疑惑の可能性があるなら迷わず通報を。殴る蹴る、精神的虐待やネグレクト、性的虐待から助け出せるかもしれません。

執筆者: 桜井 涼 職業:メンタルケア心理士、コラムニスト
通報すべき?しないべき?虐待に気づいたときの対応

こんにちは、 メンタルケア心理士の桜井 涼です。

 

虐待を目撃してしまった時、たいていの人は、衝撃とショックを受けます。

通報すべきかどうか悩んでしまう人もいることでしょう。

 

ですが、「どこへ通報すればいいのか」、「通報したら報復を受けるのでは?」など、さまざまな不明点や怖い考えが浮かび、実際にできないというケースが多いのではないでしょうか。

いざというときに、そんなことがないよう、虐待の通告に関する知識を持っておきましょう。

 

 

児童虐待の通報は「義務」!

虐待を見た、または子どもの体に傷など虐待の痕跡が見られた場合、通告をしなければいけない義務を国民の全てが持っていることは、あまり知られていない事実です。

児童福祉法に、通告義務に関する事項が明記されています。

 

児童福祉法第25条(要保護児童発見者の通告義務)

「要保護児童を発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない(抜粋)」


児童虐待の防止等に関する法律第5条(早期発見の義務)や、同第6条(児童虐待に係る通告)にも、通告の義務に関することが書かれています。

通報に歯止めをかけてしまう心の動き

虐待を見たり、様子が明らかにおかしい児童がいたりすると、頭の中で「言わなくちゃ。通報しなくては」と浮かぶでしょう。
ですが、実際には通告に至らないことがあります。

そんな時の心には、恐怖や不安、そして迷いが浮かんでいます。

 

  • もし間違っていたら?
  • 通報したのが自分だと知れたら報復されるかもしれない
  • 相手が乗り込んできたら?
  • 関わって仕返しをされたらどうしよう
  • どこに言えばいいの?
  • あの子の住所とかわからないし…


こういった思いや考えがぐるぐる巡ってしまうことが、往々にしてあります。

 

私が高校生のとき、実際にあった話

実際の話、私もそうでした。

 

高校生の時、近くに住むと思われる女の子がいつもケガをしているのが気になっていました。

最初はいじめかと思っていましたが、友達といる所を目撃していたので、次に頭に浮かんだのが虐待です。


数日見かけないと思っていたら、腕を吊った状態で歩いていました。

その数日後、吊っていない方の腕で松葉杖をついていたのです。

 

私は思わず声をかけました。

悲しそうな表情をした女の子は、「転んだの。大丈夫…」と言って家に入っていきました。


もしかしたら、虐待ではなく、本当に転んだだけかもしれません。

ですが、「もし虐待されていたとしたら?」と後悔の念を持っています。

 

あの時に私が虐待の通告をしていればと。

その時の心は、不安でいっぱいでした。

「相手の親から何か言われたらどうしよう」、「間違っていたら?」

 

ですが、そんなことは関係なく通告すべきだったということを、成人してから知ったのです。

無知だった私は、疑いの芽に対し、見て見ぬ振りをしてしまいました。

 

私にとって、この事実は生涯の汚点だと思っています。

 

 

通告することで心配なこと

通告する上で、心配になることがたくさんあります。

それらについてお話ししたいと思います。

 

自分が通告したとバレない?

通告する人にとって、心配なのが「通告したのが自分だと知られないか」だと思います。

この点は、心配ないようになっています。

 

通告した人の秘密は守られるようになっており、法律上でそのことも明記されていますので、報復などを心配しなくても大丈夫でしょう。

 

虐待じゃないかもしれない…

次に、「もし虐待ではなかったら?」ということですが、虐待がなかったとしても通告者が処罰されるなどということはありません。

 

 

見かけただけで、詳しいことが分からない

「見かけた児童の詳しい住所などがわからない」という場合でも、通報をためらう必要はありません。

どのルートを通っているとか、どこの小学校に通っているなどの情報があれば、少し時間はかかると思いますが、探し出してくれることでしょう。

ですから、通告することに関しては、安心していただきたいと思います。

地域の子どもを守るためです。

 

おわりに

児童虐待の通告は、悩んでしまうことでしょう。

ですが、経験して思うのは、「間違いでもいいから、通報しておけばよかった」ということです。

虐待ではないかもしれないけど、疑いがある場合は放っておくことが一番危険です。

子どもをそんな危険な状態の中に置くのは、心身的に良くありません。

もし、見かけたら通告しましょう。

 

もしかしたら、SOSを出している子どもを助けることができるかもしれないのです。

 
 コラムニスト情報
桜井 涼
性別:女性  |   職業:メンタルケア心理士、コラムニスト

元学習塾講師。妊娠出産のハプニングを乗り越え、現在は2児の母。
その頃より子どもの心の動きや医療に関係することに興味を持つ。

2009年より文筆家として活動。
子どもの心に関するコラム、子どもの心が正常に育つために夫婦へのアドバイス、子どもの病気関係を取材しコラムを執筆中。
心の闇を抱える子どもへの取材や心理学を学び、2016年「メンタルケア心理士」資格を取得。

ブログ『フリーライター桜井涼のたなごころ』
http://ameblo.jp/miehime0617/