「ボトックス注射」と聞くとシワを取る美容と思いがちですが、まぶたの痙攣など病気治療でも使われています。眼科のボツリヌス療法を紹介。
こんにちは、眼科検査技師の中根千恵です。
最近はシワを抑えるために「ボトックス注射」を美容整形外科などで打つ方が増えましたね。
ですが、医師の中でもボトックス注射を打てる先生は限られていること、ご存じですか?
実は、ボトックス講習実技セミナーを受講した「医師」に限られています。
安全性および有効性を十分に理解し、製剤の施射手技に関する充分な知識・経験のある医師しか取り扱えないのです。
ボツリヌス菌が生産する毒素
ボトックスとは食中毒の原因でもあるボツリヌス菌が生産する毒素「ボツリヌストキシンA」を注射剤化した製剤です。
これを注射すると神経筋接合部で、神経筋末期に作用して筋の緊張や攣縮を改善することが出来ます。
効果が安定するのは、個人差もありますが、1週間後程度からです。
注射後3~6ヵ月ほどで、新しい神経が伸び始めます。
このため、効果を継続させるには、年に2~4回程度の定期的な注射が必要です。
ボツリヌス毒素によって筋肉を麻痺されることにより、「シワ」を目立たなくさせます。
ですが、注射の量が多すぎると、表情筋の動きまで抑制してしまい、人形のように乏しい顔貌になってしまうので注意が必要です。
なお、美容目的のボトックス注射は保険外診療のため、全額自費になります。
眼科医療の現場でも活用!ボトックス注射の適応例
眼瞼痙攣
たまに、まぶたがピクピク痙攣することはありませんか?
多くの場合、疲れ目だったり、ビタミンB12欠乏で起こったりする一時的なものです。
ですが、重篤な場合は、開瞼障害で機能的に失明状態になるので、保険適応でボトックス注射を行います。
このような重篤な症状の原因は、現在まだ解明されていません。
- 下まぶたの痙攣が、上まぶたにも広がってきた。
- まばたきが思うように出来ない。
- まぶたの開閉が瞬時に出来ない。
痙攣はまぶた辺りから始まり、進行すると、口輪筋などの同側顔面筋が侵されていきます。
中年女性に多い疾患です。
原因は、顔面神経が脳幹から出る部位において、延長・蛇行した血管により圧迫されるために起こると言われています。
重篤化すると、鬱病になる場合があります。
早めに病院を受診しましょう。
おわりに
ボトックス注射は、「美容」だけではありません。
眼だけではなく、様々な病気の方が、この注射で治療を受けています。
「毒素」も医学の発展で、病気や美容に使用できる時代になりました。
今後の医療・美容の研究に、期待が寄せられています。
例えば、汗を分泌させるエクリン腺の動きを抑制する効果も期待されています。
多汗症の方には、明るいニュースですね。
「美容」でボトックス注射をされている方は、くれぐれも「やりすぎ」に注意をしてくださいね。
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