ペットと飼い主の絆を深める「テリントンTタッチ」基本メソッド

執筆者: なかしまなおみ 職業:ドッグケアセラピスト・テリントンTタッチプラクティショナー
はじめに

犬を迎えると、今まで経験できなかった楽しい時間を過ごすようになります。

 

散歩をするようになり、季節、風、様々な匂いを感じる。

様々な人や犬との出会い。

 

そんな時間をくれた愛犬のことをより理解し、もっと楽しく暮らしたい。

健康に過ごさせてあげたいし、問題行動を改善してやりたい。

 

「テリントンTタッチ」では、そんなあなたの気持ちが伝えられるのです。

 

テリントンTタッチとは

テリントンTタッチは、1983年に馬のトレーナー、リンダ・テリントン・ジョーンズによって考案されました。

全ての生命体に行うことが可能で、その手法は3種類あります。

 

  • 手で行うボディ・ワーク
  • リードや、ゴム状のバンテージを使うリーディング・エクササイズ
  • ポールや棒、三角コーンなどを置いたコースを歩くグランド・ワーク

 

犬へのテリントンTタッチの目的

犬と一緒に何かをすることにより、愛犬を理解し、ストレスを軽減させ、犬に自信を持てるようにします。

本能から反応するのではなく、犬自身で考えることを教えたり、集中力をつけられるようにもなるのです。

また、健康でいるための手伝いをしたり、痛みや恐怖、不安を解放、払拭することができます。

 

細胞の機能を活発化させ、それを目覚めさせる。

つまり、体のスイッチをONにするのです。


パピーからシニア、健康な犬から体に何か不安を抱える犬まで、どんな犬に対しても行うことができ、その犬の今のベストな状態へもっていってあげることができます。

手で行うボディ・ワーク

テリントンTタッチを、マッサージの1種と思われている方もいらっしゃいますが、筋肉に働きかけるマッサージと異なります。

皮膚のすぐ下の神経に働きかけ、体だけでなく、精神面への働き掛けもしてくれるものなのです。

 

マッサージとは、全く違うメソッドであることを覚えて頂きたいと思います。

 

ボディ・ワークの様々な手法

例えば、皮膚に1と1/4の円を描くサークルのタッチ。

指先や手の甲で行うなど、サークルのタッチにもいくつか種類があります。

 

また、皮膚を上下に動かすリフト、体の左右や前後を繋げる色々な動き、耳、尻尾などの部位に働きかけるタッチ等があります。

これらには、動物の名前が付いていることが多いのですが、名称を無理に覚える必要はありません。使う手の部位、動きを覚えておけば十分です。

 

強さ

左の掌に右の肘を曲げてのせます。

次に、右手の親指以外の指を瞼にのせます。

その時に、眼球が嫌な感じがしないくらいの圧、この微妙な圧で皮膚を動かします。

 

 

体のバランスを取るリーディング・エクササイズ

体のバランスの崩れや、体への余計な負荷が、犬の体に損傷を与えたり、故障の原因にもなり得ます。

 

リーディング・エクササイズでは、ハーネスを使ったり、長めのリードや両端にスナップ(ナス環)がついた長いリード等を使います。

これらを使い、体のバランスを取ることにより、引っ張り、飛びつき、攻撃性、チャイムなどの音に対する吠えなどが改善されることもあります。

 

 

また、ボディラップというゴム状のバンテージを体(頭)に巻くことで、犬自身の体への感覚が高まり、自分に自信を持つことへと繋がります。

意識が高まることで、上手く使えていない体の部分(怪我した部位など)の早い回復、音響シャイ、神経過敏、また、過活動な犬に対しても役立ちます。

 

私達が5本指の靴下を履いた時に、足の指を意識するような感覚と少し似ているかもしれません。

どんな感覚なのかを知るために、セミナー参加者に、ボディラップを巻いて体験して頂くこともあります。

 

 

障害を置いて歩くグランド・ワーク

様々な障害を使い、自分の身体の動きに意識を持ったり、集中したり、自制心や自信を持たせるために行います。

下記は障害の一例です。

 

  • ポールで迷路を作る。
  • 違う素材の上を歩く。
  • 三角コーンを左右に歩く。
  • 20cm位の高さのポールをまたぐ。

 

犬自身で色々なことを考えるため、攻撃性や恐怖心を克服。

体も柔軟になるためバランスが良くなり、ゆっくりと動くことで、体への意識が高まります。

また、障害を越えられたと言う達成感も感じられるのです。

 

最初にこのような経験をしていると、競技を正確に早くこなすことができ、ミスが少なくなっていくでしょう。

 

 

ハンドラー(飼い主)の心掛け

テリントンTタッチは、誰でも行うことができます。

愛犬との絆をより良くするために、普段の生活に無理なく取り入れられるものです。

時間をかけて行う必要もなく、いつもの時間を少しだけ質の良い物にすればOKです。

 

ハンドラーとして気を付けることは、「呼吸をすること」「周辺視野を持つこと」「明確なイメージを持つこと」の3つ。

 

呼吸をすること

呼吸をしっかりすることにより、余計な力が抜けてより良いタッチができます。

また、自分自身も触れられている犬も、共にリラックスできるようになるでしょう。

 

周辺視野を持つ

一点に集中し過ぎず、周辺視野を広げることで犬の小さな変化にも気付くことができます。

観察力がつくことで、直感力も働くようになってきます。

 

明確なイメージを持つ

何かしらの問題行動を抱える犬に対して、ゴール地点の明確なイメージをもつことにより、「今」の姿を受け入れられるようにしましょう。

すると、どの様にしたらその問題が解決できるかを、客観的に考えられるようになってきます。

 

全体を見られるようになると「こうしてはいけない」という否定的な言葉掛けでなく、ポジティブ、肯定的な言葉掛けができるようになるものです。

そうすることで、犬もこちらの意志が理解し易くなってきます。

 

おわりに

愛犬ともっと笑顔になる暮らしに必要なこと。

それは、犬も人も、体のみならず心のバランスを取れるようにすることだと思います。

 

テリントンTタッチは難しい物ではありません。

誰もができるものであり、トレーニングや医療と併用しても大丈夫。

副作用もなく、より良い結果へと導いてくれるでしょう。

 

ぜひ、愛犬との日々の生活に取り入れて頂けたらと思います。

 

 
 コラムニスト情報
なかしまなおみ
性別:女性  |   職業:ドッグケアセラピスト・テリントンTタッチプラクティショナー