このセリフ、歌舞伎が由来だったの!?歌舞伎の名言・台詞集

歌舞伎の有名な名セリフをご紹介。作品(演目)、どんな場面で使われているのか分かるだけで、歌舞伎の楽しみ方がまた1つ広がるはず。

執筆者: 嶋村 知香 職業:ピアノ調律師・暮らしガイド
歌舞伎の名セリフが知りたい!

歌舞伎には、有名な決め台詞があります。

皆が心待ちにするその台詞の場面では、会場内の熱気もひとしおです。

 

今回は、覚えておくと歌舞伎がもっと楽しくなる名セリフをご紹介します。

 

 

「こいつぁ春から縁起がいゝわえ」
演目

『三人吉三廓初買』(さんにんきちさくるわのはつがい)

通称:三人吉三巴白浪(さんにんきちさともえのしらなみ)

 

wikipediaより引用

 

あらすじ

「お譲吉三・和尚吉三・お坊吉三」という、同じ「吉三(きちさ)」の名を持つ3人の盗賊の身に降りかかる因果を描いた話。

 

セリフの場面

女装の盗賊・お嬢吉三が娘姿に化け、「おとせ」と言う夜鷹(外で客を引く最下級の娼婦)から、百両の金をまんまと盗んだ後、杭に片足を上げ決めポーズ、そして、この決め台詞を発します。

 

思わぬ大金に悦に入り、男の地声に戻って、朗々と謳い上げます。

「月も朧(おぼろ)に白魚の、篝(かがり)も霞む春の空、冷てえ風もホロ酔いに、心持よくうかうかと、浮かれ烏(うかれがらす)のただ一羽、ねぐらへ帰る川端で、棹の雫か濡手で粟(あわ)、思いがけなく手に入(い)る百両()、ほんに今夜は節分か、西の海より川の中、落ちた夜鷹(よたか)は厄落し、豆沢山に一文の、銭と違って金包み、こいつぁ春から縁起がいいわえ


ここで、「御厄(おんやく)払いましょか、厄落し」、という厄払いの声が入ります。 

 

「知らざあ言って聞かせやしょう」

演目

『青砥稿花紅彩画』(あおとぞうしはなのにしきえ)

通称:白浪五人男(しらなみごにんおとこ)

 

wikipediaより引用

 

あらすじ

「日本駄右衛門(にっぽんだえもん)・弁天小僧菊之助・南郷力丸・赤星十三郎・忠信利平」という、五人の大泥棒の因果を描いた話。

 

セリフの場面「浜松屋見世先の場」

武家娘に女装した弁天小僧が、ゆすりに入った呉服商浜松屋で男がバレ、その場に居直り、男丸出しに威勢よくタンカを切り、自ら正体を明かすときの台詞です。

 

知らざあ言って聞かせやしょう。浜の真砂(まさご)と五右衛門が、歌に残せし盗人の、種は尽きねえ七里ヶ浜、その白浪の夜働き、以前を言やぁ江の島で、年季勤めの稚児ヶ渕(ちごがふち)、江戸の百味講(ひゃくみ)の蒔銭(まきせん)を、当てに小皿の一文子(いちもんこ)、百が二百と賽銭の、くすね銭せえだんだんに、悪事はのぼる上の宮(かみのみや)、岩本院で講中(こうじゅう)の、枕捜しも度重なり、お手長講(おてながこう)と札附(ふだつき)に、とうとう島を追い出され、それから若衆の美人局(つつもたせ)、ここやかしこの寺島(てらじま)で、小耳に聞いた父つぁんの、似ぬ声色で小ゆすりかたり、名せえ由縁(ゆかり)の弁天小僧菊之助たぁおれがことだ」

 

「問われて名乗るもおこがましいが」

「知らざぁ言ってきかせやしょう」と同じ作品の中から、もうひとつご紹介します。

 

演目

『青砥稿花紅彩画』(あおとぞうしはなのにしきえ)
通称:白浪五人男(しらなみごにんおとこ)

 

wikipediaより引用

 

セリフの場面「稲瀬川勢揃いの場」

石川五右衛門・鼠小僧と並ぶ大泥棒五人、ついに稲瀬川に追い詰められます。

番傘をさし男伊達の揃いの衣裳でずらり並んだ五人衆、群がる捕手に囲まれながらも、堂々名乗り決めポーズ。

 

五人のボス、日本駄右衛門の台詞です。

問われて名乗るもおこがましいが、産まれは遠州浜松在(えんしゅうはままつざい)、十四の歳から親に放れ、身の生業(なりわい)も白浪の、沖を越えたる夜働き、盗みはすれど非道はせず、人に情けを掛川から、金谷(かなや)をかけて宿々(しゅくじゅく)で、義賊と噂高札に、まわる配符のたらい越し、危ねぇその身の境界(きょうがい)も、最早(もはや)四十に人間の、定めは僅か五十年、六十余州に隠れのねぇ、賊徒の首領、日本駄右衛門」

 

おわりに

「五人揃ってゴレンジャー!」の台詞で有名な、戦隊ヒーローの先駆け「秘密戦隊ゴレンジャー」で、名乗りをあげポーズを決めるシーンは、白浪五人男の「稲瀬川勢揃いの場」がモデルとか。

 

意外なところに、歌舞伎が伝承されていますね。

今回は、セリフから見る歌舞伎のご案内でした。

 
 コラムニスト情報
嶋村 知香
性別:女性  |   職業:ピアノ調律師・暮らしガイド

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