肉離れを繰り返したくない!早期復帰や再発予防に役立つトレーニングのやり方

再発率が非常に高い「肉離れ」。競技への早期復帰や再発予防に有効なトレーニングのやり方を、最新の研究報告をもとに紹介。従来どおりのリハビリに加えることで、より効果が期待できそうです。

執筆者: 高田 彰人 職業:理学療法士、日本体育協会公認アスレティックトレーナー(JASA-AT)
肉離れの早期復帰や再発予防に役立つトレーニングとは?

理学療法士の高田彰人です。

肉離れは、再発率の非常に高い疾患であると知られています。

 

そこで、今回は「ハムストリングスの肉離れの早期復帰や再発予防に役立つトレーニング」をご紹介します。

 

 

早期からのストレッチが、肉離れの回復を早める

ハムストリングスの肉離れ(Ⅱ度損傷)に対して、早期からストレッチを行うことで、柔軟性の早期獲得と早期競技復帰を得られたという結果が報告されています。1)

柔軟性に左右差のある状態での競技復帰は、再発リスクが増加するともいわれているため、柔軟性の改善は重要と考えます。

 

ストレッチを開始するタイミングは?
開始が早すぎるのもNG!

ストレッチ開始が早すぎると、痛みを悪化させるリスクがあります。

正しくは、筋肉が伸びていると感じるストレッチゾーンが出現したあたりから、その範囲内でのストレッチを行うことが推奨されています。

肉離れの再発を防ぐために、従来のリハビリに加えて行いたいこと

肉離れの再発を防ぐためには、早期に「アジリティトレーニング」と「体幹トレーニング」を行うことが有効であると言われています。

その有効性について調査した研究 2)をご紹介しましょう。

 

「アジリティ」や「体幹」のトレーニングを行うと、肉離れの再発率は減る?

次のように、違うトレーニングをした2グループ間で、復帰後の再発率に違いがあるか調べました。

 

① 従来どおりの「筋力・柔軟性のトレーニング」を中心に行ったグループ
② 早期に「アジリティ(敏捷性)トレーニング」と「体幹トレーニング」を中心に行ったグループ

 

すると、①と②では再受傷者数に違いが見られたのです。

 

【①の場合:従来どおりのリハビリを実施】

13人中、2週間以内の再受傷者6名、2週間~1年以内の再受傷者1名。

 

【②の場合:早期にアジリティトレーニングと体幹トレーニングを実施】

11人中、2週間以内の再受傷者0名、2週間~1年以内の再受傷者1名。

 

リハビリは、患部外のトレーニングも必要!

この研究は、肉離れに対するリハビリテーションは、患部だけでなく全身の機能改善が求められることを証明しているものです。

肉離れに限ったことではありませんが、安静期間中に起こる機能低下は多岐にわたるため、多面的なアプローチが重要といえます。

「伸張性トレーニング」が、早期復帰・再発予防に有効!

ハムストリングのエキセントリックトレーニング(筋肉が伸ばされながら活動するようなトレーニング)を行った群は、そうでない群と比べて肉離れの発症リスクが低下した(RR=0.43,p<0.01)と報告されています。3)

エキセントリックトレーニングはリスクを伴うため、患部の状態を把握した上で段階的に運動処方を進めていく必要があります。
そのためには医療機関での正確な診断を基にアスレチックリハビリテーションを展開していくことが要求されます。

運動前の「ホットパック(温熱療法)」は、肉離れを予防する

筋損傷の予防には、熱ショック蛋白質について研究が進められており、運動前の身体加温が熱ショック蛋白質の発現を高め、筋痛を抑制すると報告されています。4)

 

この先、運動前のホットパックの適応が普及していく可能性があります。

また、適切なウォーミングアップでも同様の効果が得られるのかは、今後の解明が楽しみな分野です。

 

現在、肉離れの最新の研究からわかっていることまとめ

肉離れは、部位も多ければ、病期の違いもあることから、不明な点がまだまだ多くあります。

最新の文献情報を参考にした上で、これらを統括して解釈すると下記のようになります。

  • 急性期を脱したら、痛みのない範囲で温熱療法へ切り替える。
  • 筋肉が伸びる感覚の範囲内でのストレッチを行っていく。
  • リスクを考慮しながら、アジリティや体幹トレーニングを加える。
  • 復帰期には患部に対して遠心性収縮でのトレーニングを実施する。

 

今後も最新の研究報告に耳を傾けながらアプローチをしていくことで、再発を少しでも減らしていきたいと思います。

 

 

参考文献

1)Malliaropoulos,N et al:The role of stretching in rehabilitation of hamstring injuries: 80 athletes follow-up. Medicine and Science in Sports and Exercise, 36(5):756-759,2004.
2)MA. Sherry et al:A Comparison of 2 Rehabilitation Programs in the Treatment of Acute Hamstring Strains.Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy 34,3,2004.
3)A. Arnason et al:Prevention of hamstring strains in elite soccer ~an intervention study~.Scand J Med Sci Sports,2008.
4)野坂和則:筋温上昇による熱ショック蛋白質発現と筋損傷・筋肉痛の予防効果.デサントスポーツ科学24:23-30,2003.


※本コラムは、執筆時の情報に基づいています。

 
 コラムニスト情報
高田 彰人
性別:男性  |   職業:理学療法士、日本体育協会公認アスレティックトレーナー(JASA-AT)

【資格】
理学療法士
日本体育協会公認アスレティックトレーナー
JCCA公認アドバンストトレーナー
四街道市スポーツリーダー

【トレーナー活動歴】
茨城県立取手松陽高等学校 男子バスケットボール部
茨城県立取手第二高等学校 男子バスケットボール部 
茨城県少年男子国体バスケットボールチーム
車椅子バスケットボール 日本代表選手

【研究分野】
バスケットボールの障害・パフォーマンス
足関節捻挫
疲労骨折
肉離れ

【所属学会】
日本理学療法士協会
日本整形外科スポーツ医学会
日本臨床スポーツ医学会
ドイツ筋骨格医学会
日本コアコンディショニング協会

【コンセプト】
①監督‐選手‐トレーナーの共通理解の徹底化
②トレーニングと障害予防の融合
③アウターマッスルとインナーマッスルの共同

【トレーナー目標】
日本が世界では通用しないと思われているスポーツ分野の底上げ

【ブログ】
バスケ選手のためのトレーニング理論
http://ameblo.jp/arinco-power55/

【アドレス】
g.torini.9@gmail.com

 

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