[理学療法士解説] 足を捻った、ねんざした…ただの捻挫扱いはNG!足関節捻挫=靭帯損傷という認識を持とう

「足関節捻挫」は「足関節靭帯損傷」と捉えるべき!「ただ捻っただけ」と軽視することの危険性と予防の重要性を、発表されている研究論文をもとに理学療法士が解説します。

執筆者: 高田 彰人 職業:理学療法士、日本体育協会公認アスレティックトレーナー(JASA-AT)
理学療法士からの警告!「足関節捻挫」を軽くみてはいけない

理学療法士の高田彰人です。

 

前回は、スポーツ現場で最も多く発生すると言われる「足関節捻挫」についてお話ししました。

この足関節捻挫は、その病名のせいで、選手や指導者から症状が軽視される傾向があると感じています。

 

今回も引き続き足関節捻挫について、過去の報告を元にさらに詳しくご紹介します。

 

 

ただの捻挫扱いはNG!「足関節捻挫 = 靭帯損傷、靭帯断裂」
意外と知らない足関節捻挫という病名の認識

アンケート調査にて、「足関節捻挫と足関節靭帯損傷は同じ疾患であることを知らない」と答えた人が、72.0%にのぼりました 1)


実際には、足関節捻挫は程度こそ異なるものの、靭帯損傷として捉えられています。

ですが、実際のスポーツ現場では、足関節捻挫として一括りにされてしまい、重度な靭帯損傷が軽視され続けています。

 

病名から症状が軽視され、医療機関への受診率が低い

別の関節ですが、膝関節では医療の進歩と共に「膝関節靭帯損傷」というものがスポーツ現場でも広く認知されつつあり、医療機関への受診率が高くなっています。

 

一方、足関節では、いつまでも「足関節捻挫」という軽視されやすい病名が、指導者や選手への病態認識の誤解を招いてしまい、受診率自体も低いのが現状です。

 

単にひねっただけではなく、「足関節靭帯損傷」と捉えるべき

足関節捻挫は重症度では異なるものの、足関節靭帯損傷と捉えるべきであり、本稿でも今後は「足関節靭帯損傷」という病名でこの怪我をご紹介していきます。

 

足関節靭帯損傷(足関節捻挫)後の対処状況
「病院」に行って診断を受けた人は、半分強

足関節靭帯損傷の治療に関して調査したところ、病院 56.2%、受診なし 31.3%、残りは整骨院や接骨院などと報告されています 1)


なかには、病院へ行くと長くかかるからと敬遠してしまう選手もいるようですが、まずはどこの靭帯損傷があるのか、どのくらいの靱帯損傷の重症度なのかを診断することが重要であるといえます。

足関節靭帯損傷(足関節捻挫)の平均治療期間
意外に長くかかる!必要な治療期間の平均は4.5週間

足関節の靭帯損傷をしたときに必要と考える運動休止期間は、「1週間」と答えた人が48.0%と最も多い結果となりました 2)

ですが、実際の報告では、練習や試合へのタイムロスは、平均4.5週必要と言われています。


スポーツ現場での印象と、足関節靭帯損傷に必要な治療期間には大きな差が生じています。

この差が開いているほどに、選手は無理な競技復帰となり、足関節捻挫の再発や競技パフォーマンスの低下にも繋がっていきます。

足関節靭帯損傷(足関節捻挫)は、再発しやすい!
繰り返して「足関節不安定症」などに発展するケースも…

足関節靭帯損傷は一度受傷すると再発する者が多く、足関節不安定症に移行する恐れがあると言われています 3)

 

その再発率は競技によって多少異なりますが、約70%にまで及び 4)、受傷者の40-75%で慢性的な足関節不安定性(chronic ankle instability:CAI)へ発展すると言われています 5)

 

さらに、複数回の受傷は、足関節の変形性関節症や軟骨病変 6,7) へと発展することも報告されています。

 

受傷してしまったら、再発予防トレーニングを!

ですから、まずは足関節靭帯損傷を発生させないことが重要であり、もし発生してしまった場合には、受傷後の再発予防トレーニングが求められます。

 

足関節靭帯損傷(足関節捻挫)の予防法
「バランストレーニング」が有効

足関節靭帯損傷の予防として、「バランストレーニング」に代表される固有感覚訓練が効果的であることが研究で判明しました。
Westerら 8)は、初発の足関節靭帯損傷を受傷した者に対してバランストレーニングを行ったところ、実施群は未実施群よりも捻挫の再発や機能的不安定性の発生防止がみられたという報告があります。


また、Verhagenら 2)も、バランストレーニングによって、過去に足関節靭帯損傷を起こしている選手に対しては再発率が減少したという結果を発表しています。

おわりに

指導者や選手は病名を重要視していることが多いですが、実際は病名よりも重症度が大切な場面が多いです。

同じ病名であっても、重症度によって必要な治療期間や再発率は大きく異なることもあります。

 

スポーツ傷害の中でも足関節捻挫や肉離れといった怪我は、選手や指導者の認識と医療従事者の認識に大きな差があると感じます。

この差を埋めることがスポーツ選手を救うためには非常に重要であると強く感じています。

 

今後も、選手にとって有益な情報を発信していきますので、よろしくお願いします。

引用元

1)福林徹:成長期スポーツ外傷・障害予防への取り組み.臨床スポーツ医学,1052‐1058,2016.
2)Verhagen E et al:A one season prospective cohort study of volleyball injuries.Br J Sports Med 38:477-481,2004.
3)Freeman M:The etiology and prevention of functional instability of the foot.J Bone Joint Surg 47(4):678-685,1965.
4)Yeung MS Chan KM So CH et al: An epidemiological survey on ankle sprain. Br J Sports Med 28(2):112-116,1994.
5)Gerber JP Williams GN Scoville CR et al: Persistent disability associated with ankle sprains: a prospective examination of an athletic population. Foot Ankle Int 19(10):653-660,1998.
6)Harrington KD: Degenerative arthritis of the ankle secondary to long-standing lateral ligament instability. J Bone Joint Surg Am 61(3):354-361,1979.
7)Valderrabano V Hintermann B Horisberger M et al.: Ligamentous postraumatic ankle osteoarthritis. Am J Sports Med 34(4):612-620,2006.
8)Wester JU et al:wobble board training after partial sprains of the lateral ligaments of the ankle a prospective randomized study.J Orthop Sports Phys Ther 23:332-336,1996.

 コラムニスト情報
高田 彰人
性別:男性  |   職業:理学療法士、日本体育協会公認アスレティックトレーナー(JASA-AT)

【資格】
理学療法士
日本体育協会公認アスレティックトレーナー
JCCA公認アドバンストトレーナー
四街道市スポーツリーダー

【トレーナー活動歴】
茨城県立取手松陽高等学校 男子バスケットボール部
茨城県立取手第二高等学校 男子バスケットボール部 
茨城県少年男子国体バスケットボールチーム
車椅子バスケットボール 日本代表選手

【研究分野】
バスケットボールの障害・パフォーマンス
足関節捻挫
疲労骨折
肉離れ

【所属学会】
日本理学療法士協会
日本整形外科スポーツ医学会
日本臨床スポーツ医学会
ドイツ筋骨格医学会
日本コアコンディショニング協会

【コンセプト】
①監督‐選手‐トレーナーの共通理解の徹底化
②トレーニングと障害予防の融合
③アウターマッスルとインナーマッスルの共同

【トレーナー目標】
日本が世界では通用しないと思われているスポーツ分野の底上げ

【ブログ】
バスケ選手のためのトレーニング理論
http://ameblo.jp/arinco-power55/

【アドレス】
g.torini.9@gmail.com

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