肉離れになりやすい選手の特徴は?再発しやすいから、復帰は慎重に!

肉離れになりやすい選手の特徴、再発する割合、肉離れが起こりやすい箇所などを解説。肉離れのリスクが高いことが判明した人は、ストレッチや筋力トレーニングなどの対策をとりましょう。

執筆者: 高田 彰人 職業:理学療法士、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
肉離れの発生原因 と 再発しやすい危険因子とは?

理学療法士の高田彰人です。

 

以前の肉離れのコラムでは、傷害発生時の重症度判定についてお話ししました。

今回は、肉離れの発生原因や再発しやすい危険因子についてご紹介します。

 

該当する方は、肉離れのリスクが高いことを認識し、ストレッチや筋力トレーニングなどの対策をとりましょう。

 

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肉離れはクセになりやすいから、再発予防が不可欠!

一度ハムストリングスの肉離れをした選手の方は、肉離れのリスクが2.68倍も増加するという報告があります。

そのため、肉離れを発症しやすい選手の特徴や再発予防のためのリハビリテーションが重要となります。1)

 

これは非常に重要な報告であり、一般的にあまり認知されていません。

肉離れは再発が非常に高い疾患であり、柔軟性の改善や筋力向上などの機能障害を改善しないうちにスポーツ復帰を果たすと、再発率を高めてしまいます。

 

「復帰した直後」に肉離れが再発する人が一番多い

ハムストリングスの肉離れの再発率は、30.6%にも及ぶといわれています。

さらに、この報告では再発の時期に関しても述べています。2)

 

  1. 肉離れの復帰後、1週目で再発した割合:12.6%
  2. 肉離れの復帰後、2週目で再発した割合:8.1%

 

  • 1+2の割合:20.7%

 

再発率30.6%のうちの20.7%といえば、約68%。
つまり、再発全体の約3分の2は、復帰後2週間以内に生じているということです。

 

この報告から、復帰した直後が最も再発リスクを伴うことがわかります。

したがって、重症度を把握した上で、段階的なリハビリテーションを提供する必要があります。

ハムストリングスの肉離れになりやすい選手の特徴は?

普段スポーツを習慣的に行っていない方や、年齢と共に筋力・柔軟性が低下している方が、急な運動をすることは肉離れのリスクを高めるといえます。

 

年齢が高い選手

23~25歳以上だと、若い選手に比べてハムストリングスの肉離れになる確率が2.46倍といわれています。3)

 

足関節の背屈可動域が狭い選手

その場でしゃがめないような足首の固さがある選手も、肉離れを起こす確率が高いという結果がでています。4)

 

股関節を後方へ引く可動域が小さい選手

股関節を後方へ引く可動域が小さい選手ほど肉離れを起こしやすいという報告があります。

股関節伸展可動域の不足が1度ごとに、発症リスクは15%も上がるという結果が出ています。

詳細な評価方法は下記の通りです。5)

 

※Modified Thomas:写真の右の大腿部がどれくらい下に落ちるかで股関節伸展可動域を測定

 

年齢によって生じやすい肉離れの部位は異なる

肉離れは、10代 644例、20代 393例と若年層の症例が極めて多く、10代と20代で全体の84%を占めています。


30代、40代と年齢層が高くなるにつれて、肉離れが起こりやすい箇所も変わってきます。

ハムストリングス、大腿四頭筋(だいたいしとうきん ※太ももの前面にある筋肉)の割合が減り、下腿三頭筋(かたいさんとうきん ※ふくらはぎの筋肉のこと)の割合が増える傾向があります。6)


  

早く復帰できるかどうかの見極めポイントは、重症度によって異なる

筋腱移行部(特に腱膜)に損傷があると、復帰までに長期間を要します。7)

軽症例とされるⅠ型では、血腫の有無や出血範囲が大きい方がスポーツ復帰を遅らせます。
中等度の損傷とされるⅡ型においては、血腫の有無や出血範囲の大きさは、スポーツ復帰を遅らせるマイナス因子にはなりません。

Ⅱ型では、腱膜の途絶部の長さがスポーツ復帰を遅らせるマイナス因子になります。8)

 

このように、損傷している部位や状況によって重症度が明確になるため、これを考慮して復帰時期を定めることで再発予防にも活かされると思います。

MRI検査などの確定診断をしっかりと受けると、復帰時期を正確に判断しやすい

このように、肉離れは再発率が非常に高く、筋肉の軽い炎症から腱の損傷まで幅広い疾患です。

したがって、まずは自分がどの程度の肉離れなのかという重症度を明確にすることが重要です。

整形外科を受診し、場合によってはMRI検査などの確定診断をしっかりと受けることで復帰時期を正確に判断できます。

 

そして、必要な安静期間を設けるとともに、専門的なリハビリテーションにて柔軟性・筋力・バランスなどの機能改善を改善し、再発予防を努めていくことが重要となります。

今後、具体的な再発予防法についてまとめていきたいと思います。

 

参考文献

1)Freckleton G et al: Risk factors for hamstring muscle strain injury in sport: a systematic review and meta-analysis.Br J Sports Med published online 4, 2012.
2)Orchard:The Management of Muscle Strain Injuries: An Early Return Versus the Risk of Recurrence.Clinical Journal of Sport Medicine,12,3-5,2002.
3)Freckleton G et al: Risk factors for hamstring muscle strain injury in sport: a systematic review and meta-analysis.Br J Sports Med published online 4, 2012.
4)Freckleton G et al: Risk factors for hamstring muscle strain injury in sport: a systematic review and meta-analysis.Br J Sports Med published online 4, 2012.
5)BJ. Gabbe et al:Why are older Australian football players at greater risk of hamstring injury?. Journal of Science and Medicine in Sport 9, 327-333,2006.

6)武田寧,内山英司:MB Orthop,2010.

7)Askling C, et al.:The American Journal of Sports Medicine,2007.
8)山元勇樹ら:日本臨床スポーツ医学会誌,2011.

 
 コラムニスト情報
高田 彰人
性別:男性  |   職業:理学療法士、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー

【資格】
理学療法士
認定理学療法士(スポーツ理学療法)
日本体育協会公認アスレティックトレーナー
日本コアコンディショニング協会マスタートレーナー

【トレーナー活動歴】
土浦日本大学高等学校
茨城県立取手松陽高等学校 男子バスケットボール部
茨城県立取手第二高等学校 男子バスケットボール部 
茨城県少年男子国体バスケットボールチーム
車椅子バスケットボール 日本代表選手

【研究分野】
体幹機能
バスケットボールの障害
足関節捻挫
疲労骨折
肉離れ

【所属学会】
日本理学療法士協会
日本整形外科スポーツ医学会
日本臨床スポーツ医学会
日本コアコンディショニング協会

【コンセプト】
①監督‐選手‐トレーナーの共通理解の徹底化
②トレーニングと障害予防の融合
③アウターマッスルとインナーマッスルの共同

【トレーナー目標】
日本が世界では通用しないと思われているスポーツ分野の底上げ

【ブログ】
バスケ選手のためのトレーニング理論
http://ameblo.jp/arinco-power55/

【アドレス】
g.torini.9@gmail.com

 

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