転職者は知っておこう!失業時に失業保険給付を受けるためには -受給資格・離職票・失業手当の金額・受給期間・給付日数-
こんにちは。行政書士・社会保険労務士松田事務所の社会保険労務士、松田と申します。
第一回目は表題のとおり、雇用保険の保険給付についてです。
毎年訪れる新年度。
新卒社会人の方が多く見られる一方で、転職をお考えの方もいらっしゃると思います。
雇用保険法では失業者向けの保険給付等が存在しており、雇用保険加入者は一定の要件に該当すれば金銭若しくは費用が国より支給されます。
貰える物は貰うべきですし、転職活動についてプラスとなること間違いなしです。
そこで上記制度について、要点等をできる限り解りやすく下記に記させていただきます。
勿論、社会人経験が豊富な方や、何度か転職を経験している方については「そんなこと知っているよ!」という声が聞こえてくる気がしますが、本コラムにて再確認していただければ幸いです。
失業保険給付といっても、いくつかの種類があります。
下図のとおり、求職者給付・就職促進給付・教育訓練給付・雇用保険給付があり、この4つの中でも数種類の給付があります。
本投稿では、冒頭のとおり転職者の方々へ向けてのお話とさせていただきますので、求職者給付の基本手当を中心にさせていただきます。
まず、失業給付等を受けるためには、離職し失業の状態であることが前提となります。
雇用保険法で定める、離職・失業の定義とは、
Ⅰ.「離職」とは、従業員と事業主の雇用関係が終了すること
Ⅱ.「失業」とは、上記Ⅰのとおり「離職」し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあることをいう。
Ⅰに関しては、会社を辞めれば自ずと離職となります。
Ⅱの労働の意思及び能力を有するにもかかわらず職業に就くことができない状態とは、「労働の意思」は離職後の就職活動を行っているか否かで判断されますし、又、「労働の能力」は身体的、精神的に労働に耐え得るか否かによって判断されます。
具体的には、妊娠中の方は労働の能力は無いと判断されますし、職安に出頭して職業の紹介を受けなければ労働の意思は無いという事になります。
とにかく会社を辞めたからといって何もしないプータローには、何の受給権も発生しないということと理解していただければ結構です。
失業手当を受給するためには一定の要件があります。この要件をクリアしなければ基本手当は受給できません。
当該要件については、会社を辞める理由により2種類あります。
Ⅰ. 一般受給資格者:特定理由離職者以外の理由により離職した者
Ⅱ. 特定理由資格者:会社の倒産、解雇等により離職した者
Ⅰは離職者自身の都合による退職、Ⅱは会社都合による退職というような理解で結構です。
自分から辞めるのに比べ会社から突然辞めろと言われるのでは、次の職探しが大変ですよね。
なのでⅡの場合はⅠに比べ、受給資格要件や受給期間等で差があります。
さて、具体的な受給要件ですが、
Ⅰ. 離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12か月以上あること
Ⅱ. 離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あること
上記期間中に疾病や負傷、出産等により休業していた場合はどうするのかという声が聞こえてきそうですが、引続き30日以上の休業がある場合には離職の日以前2年間(特定理由離職者については1年)に、その休業日数を加えることができますのでご安心下さい。
①のⅠで述べたとおり、失業の状態については失業の認定を得る必要があります。
まずは本人の住所地を管轄するハローワークに出頭します。
出頭の際、離職票(※)という書類を提出します。
ハローワークは上記離職票を基に、基本手当(失業手当)の受給資格(後述)を有する者には受給資格の決定をし、「失業の認定日」の指定及び「受給資格者証」の交付を行います。
なお、この時点で基本手当についての受給権がない場合は、離職票にその旨記載され返付されます。
上記「失業の認定日」に再びハローワークに出頭し失業認定申告書に受給資格者証を添えて、職業の紹介を求める(求職の申込み)必要があります。
上記失業の認定日に関しては、原則4週間に1回ずつ直前の28日の各日について行われ、この期間にハローワークや民間での職業紹介等を利用し求職活動を行い、認定日にハローワークにて実績を確認してもらいます。
求職実績については原則2回以上の求職活動実績が必要となり、問題がないと判断されれば失業状態が認定されます。
基本手当の支給は失業認定日に認定を受けた日分を支給されますので、原則4週間に1回支給となります。
以上が失業の認定までの大まかな流れです(例外規定もありますが今回は省きます)。
なお、出頭の際は本人確認が必要となりますので免許証等を持参することもお忘れなく!
(※)離職票
従業員が会社を辞める際、事業主はハローワークに当該従業員が会社を辞めまたという手続きをする必要(当該従業員が辞めたという事実があった日の翌日から10日以内にする必要あり)があり、その手続きをするとハローワークより離職票というものが交付される。
なお、離職票記入欄には離職票の交付希望の有無があるので、離職者はあらかじめ、事業主に対し離職票の交付を希望する旨を伝えること。
さて、これまでは、失業手当を貰えるまでの手続きについてお話させていただきました。
次は、失業手当の金額についてです。
まず、手当金額の算出方法については、基本手当日額というものがベースとなります。
この基本手当日額の算出方法は「最後の6か月間に支払われた賃金の総額÷180」です。
ここでいう賃金とは、給料に加え残業手当、各種手当、有給休暇の給与、通勤費等、労働の対象として支払われたもの全てを含みます。
ただし、臨時に支払われる賃金(結婚祝金、弔慰金当)及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)は除かれます。
上記で算出された賃金日額に、下記の率を乗じたものが基本手当日額となります。
Ⅰ. 離職の日において60歳未満:100分の80~100分の50
Ⅱ. 離職の日において60歳以上65歳未満:100分の80~100分の45
上記計算により算出された金額が基本手当日額となります。
この手当日額に、後述する給付日数を乗じた金額を得ることができます。
なお、手当日額×給付日数については受給できる期間が定められていますのでご注意ください。
期間は次のとおりとなります。
このように、手当の受給期間には限りがあり、離職日より期間はスタートします。
離職者によっては給付日数が360日になる方もいらっしゃいますので、離職後は速やかにハローワークに出頭することを心がけましょう。
続いて、上記でも少し触れました給付日数についてです。
給付日数については、年齢・算定基礎期間によって異なります。下記表を参照下さい。
以上が失業保険の受給に関するまとめです。
正直なところ、インターネットや書籍で得られる情報ですし、ハローワークに行けばもっと細かい内容を教えてくれます。
あまり役に立たない情報かもしれませんが、少しでもお役に立てれば幸いです。
なお、雇用保険の給付制度には、失業による基本手当の他にも、教育訓練給付や雇用継続給付等、事業主及び従業員にとってプラスになる制度が存在します。
せっかく保険料を払っている訳ですし、使えるものは使わない理由はありません。
これを機会に積極的な活用をしていただければと存じます。
これにて、第一回目のコラムを締めさせていただきます。
次回は、解雇による従業員が主張できる権利を中心に執筆させていただく所存です。
それでは、また次回お会いしましょう!
松田事務所
http://www.matsuda-stm.com/
|
|
|
|