派遣労働者派遣法、改正点は?派遣の雇用安定とキャリアアップを図る5つの変更

執筆者: HRプラス社会保険労務士法人
労働者派遣法の改正概要

こんにちは、さとう社会保険労務士事務所の星野陽子です。

さて、改正労働者派遣法が2015年9月11日に成立、同月30日に施行されました。
今回の改正は、政府の労働規制改革の第1弾で、過去2回の廃案を経て実現したものです。


改正内容の周知などの準備期間が短く、企業にとっても、働くみなさんにとっても、混乱があるように思われます。
今回は、改正労働者派遣法の概要について、確認してみましょう。

 

 

期間制限の変更

これまでの派遣法では、専門的な知識・技術などを必要とする26業務(ソフトウェア開発、機械設計、通訳、秘書など)を除き、企業が派遣労働者を受け入れる期間を、最長3年に制限していました。


ですが、専門26業務かどうかで期間制限が異なる制度が分かりにくいことから、こうした業務の区分を廃止しました。

派遣労働者(個人)単位

同一の派遣労働者は、派遣先企業のひとつの組織単位(課など)で働ける期間は、原則、3年が限度となります。

 

つまり、これまで期間制限がなかった専門26業務に就いていた派遣労働者の方であっても、3年ごとに課などを変えなければ、同じ派遣先では働けないことになります。

 

派遣先企業単位

同一の派遣先企業に対し、派遣労働者を派遣できる期間は、業務の区分なく、原則、3年が限度となります。
派遣先が3年を超えて派遣労働者を受け入れようとする場合には、派遣先の労働組合などから意見を聴く必要があります。

均衡待遇の推進

派遣元、派遣先双方において、派遣労働者と派遣先企業の労働者との均衡待遇確保のための措置が強化されます。

派遣元(派遣会社)

派遣会社は、派遣労働者からの求めに応じて、賃金の決定などについて、派遣労働者と派遣先企業の労働者との待遇の均衡を図るために考慮した内容を説明する義務があります。

 

派遣先(派遣先企業)

派遣先企業は、派遣会社に対し、派遣先の労働者に関する賃金水準の情報を提供するなどの配慮義務が課され、具体的に行動する必要があります。

 

 

雇用安定措置の義務化

派遣会社は、同じ組織単位に3年間継続して派遣される見込みがある派遣労働者に対し、派遣期間終了後の雇用安定措置を講じることが求められました(1年以上3年未満の見込みの方については、努力義務となっています)。


具体的には、派遣先に対し、派遣労働者の直接雇用を依頼し、直接雇用に至らなかった場合には、新たな派遣先を提供するなどの措置が義務付けられました。

キャリアアップ措置の実施

派遣会社は、派遣労働者のキャリアアップのため、教育訓練や希望者に対するキャリアコンサルティングの実施が義務付けられました。

派遣会社を許可制に統一

これまでの派遣事業は、「届出制」の特定労働者派遣事業と、「許可制」の一般労働者派遣事業に分かれていましたが、すべての派遣事業が「許可制」となります。


これは、派遣会社への監督を強化し、悪質な派遣会社を排除、派遣業界全体の健全化を目指したものです。

 

おわりに

今回の改正は、派遣労働という働き方が「臨時的・一時的なものであること」を原則とし、正社員から派遣労働者への代替を防止するとともに、派遣労働者の雇用の安定やキャリアアップを図ることが、基本的な考え方となっています。


経済界では、今回の改正を評価する声が多く出ておりますが、一方の労働界では懸念の声が目立つようです。

 

これは、派遣先企業にとっては派遣労働を用いやすくなりますが、派遣労働者の固定化や、専門26業務に従事していた派遣労働者の雇止めに繋がるのではないか、との見方があるためです。

派遣会社における対応、派遣先企業における派遣労働の活用など、今後の動向に注視していく必要があるでしょう。

また次回以降も、派遣法改正についてご説明させていただきます。

 
 コラムニスト情報
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