「飛行機はなぜ飛ぶの?」翼が浮く状態を、簡単な実験で体感してみよう!
飛行機が空を飛ぶ原理・仕組みを図も使ってわかりやすく解説。航空豆知識や、翼が浮く状態を実際に体感できる簡単な実験も紹介。子どもに質問されたときは、一緒に試してみては?
子を持つ親御さんなら、お子さんから「飛行機はなぜ飛ぶの?」と聞かれた経験があるかもしれませんね。
そのとき、どんなふうに教えてあげるか、なかなか答えに困りますね。
国内線主力機のトリプルセブンでおなじみのボーイング777-200ですが、重さは約200トン!
どうしてそんなに重いものが飛べるのか…。
今回は、そんな飛行機の基本である「なぜ飛行機は飛ぶのか」についてお話しします。
飛行機が飛ぶために一番大事なものといえば「翼」ですが、翼があるだけでは飛ぶことはできません。
飛ぶためには、まず空中に浮く必要があります。
ただ、浮くだけでは前には進みません。
翼が浮くために必要な力と、前に進む力。
これが、飛ぶための重要な要素となります。
翼が浮くための力を揚力といいます。
前に進む力を推力といいます。
地上では、必ずすべての物質に対し、地球が引っ張る力(重力)が発生します。
さらに、空気には抵抗があるので、推力に対し反対に作用する力(抗力)が発生します。
これをわかりやすく図式化すると、以下のようになります。
むかし物理の授業で「ベルヌーイの定理」を習ったかと思います。
『一定の流体において、速度が速いところでは圧力が減じ、速度が遅いところでは圧力が増す』という定理で、この流体の速度差により圧力差が生じ、圧力が弱いほうに押し上げようとする力が働きます。
簡単に言うと、揚力が重力に勝り、推力が抗力に勝ると、翼は浮いて前に進みます。
実際は、空気の流れに対する翼の角度(迎え角と言います)も重要な要素となります。
翼の形状による気流の流れの違い
翼が浮く簡単な説明をしましたが、一般的に揚力を計算式で表すと、以下の式となります。
(L=揚力、CL:揚力係数、ρ:空気密度、:V2=速度の2乗、S翼面積、CL:揚力係数)
ちょっと難しいですね…。
ここで押さえていただきたいポイントは、揚力が大きくなる3つの条件です。
空気密度とは、1Lあたりの空気の重さと考えてください。
乾燥した空気(セ氏0度、1気圧)の1Lの重さは、1.293Kg/㎥ですが、気温が高くなると密度が小さくなり、例えば20℃では1.205Kg/㎥となります。
速度(V)が速いほど揚力(L)が増える、速度の二乗なので、速度(V)が2倍になると、揚力(L)は4倍になるということですね。
また、翼面積(S)が広ければ広いほど、揚力(L)は増えるという説明になります。
CLですが、簡単に言うと、翼の性能を示す係数と思っていただければと思います。
なお、この条件をすべて満たすことは、マイナス要素が発生するため、実際には不可能です。
例えば、速度を速くすると、大出力のエンジンが必要になり燃費が悪くなってしまいますし、翼面積を大きくすると、翼の重量が増えてしまいます。
では、翼が浮く状態を、実際に体感してみませんか?
必要なものは、「水道の蛇口から出る水」と「スプーン」だけ。
誰でも簡単に試せます。
これが、上から下へ流れる空気の流れと思ってください。
そこにスプーンの端を軽く持って、先端を水に近づけてみましょう。
すると、スプーンが水に触れた瞬間、水の流れの内側に吸い寄せられるはずです。
スプーンの外側の水の流れは速く、スプーン内側の流れは遅くなり、圧力差が生じることで、スプーンの湾曲した側に吸い寄せられるのです。
スプーンの先端の形状は、飛行機の翼と同じようにカーブを描いていますね。
つまり、「空気の流れと翼の関係」と同じなのです。
青い矢印が水の流れ、赤い矢印がスプーンに発生する力の方向
飛行機は、その用途により、翼の形状が大きく異なります。
戦闘機と旅客機を比べると、戦闘機はシャープな翼、旅客機はグライダーのように左右に大きくせり出した翼ですね。
戦闘機において一番に求められる性能は、速度。
大出力のエンジンを搭載することで、音速の何倍もの速度を出すことができます。
上でお話ししたとおり、揚力を得るために翼を大きくすると重量が重くなってしまいます。
戦闘機は、速度を速くすることで揚力を確保できるので、翼の面積はそれほど大きくする必要がないのです。
一方、旅客機はどうでしょうか?
こちらは、戦闘機とは逆で、大きな翼に2つか4つのエンジンといったスタイルです。
旅客機の飛ぶ速度は、戦闘機よりもちろん遅いので、戦闘機より翼面積を大きくして揚力を得ているのです。
これが、戦闘機との違いと言えますね。
「失速」という言葉をお聞きになったことがあると思います。
言葉の通り、速度を失うということですが、突き詰めると、揚力を失うとも言えます。
飛行機の墜落原因としても多い事例です。
上でお話した揚力の計算式を、もう一度思い出してください。
空気密度が高いと揚力は増え、逆に空気密度が低いと揚力は減るんでしたよね。
つまり、高度が高いところでは空気密度が低くなるので、失速が起きやすいことになります。
なお、高度が高いときに速度が遅くなると、揚力はさらに低下します。
その際パイロットは、機首を下げ、降下することで速度を上げて揚力を保つといった操縦テクニックが要求されます。
揚力計算式では、空気密度が少なくなると、揚力も比例して少なくなります。
実は、平地においても、夏と冬では空気密度が異なります。
機体の重量をまったく同じ条件とした場合でも、夏場は気温が高いので空気密度が薄くなります。
その結果、夏場に機体を飛ばすのための揚力を確保するには、さらに「速度」が必要となるのです。
滑走する距離を長くすれば、速度は増します。
よって、夏場は、十分な揚力を得るために、冬場より滑走距離が長いというわけです。
揚力は、「揚げる力」と書くので、上方向に働く力と思われがちですが、揚力を下方向に働かせる乗り物もあります。
代表的な例が、F1レーシングカーです。
高速走行してもフロントが反り上がらないのは、なぜでしょうか?
その答えは、車両のフロントにある翼の形状をしたバーツにあります。
これで空気の流れを上方に曲げて、その反作用として下向きに働く揚力を発生させているのです。
揚力が下に向くので、車体は高速走行でも反り上がることなく走行できます。
また、スポーツカーの後ろに翼(リアウィング)を付けた車を見かけることがありますが、これも同じ効果を狙ったものです。
つまり、翼の形状を変えることで、揚力は上下方向に働かすことができるのです。
「飛行機がなぜ飛ぶか」という疑問について、なるべく判りやすくご説明してみましたが、お分かりいただけたでしょうか?
簡単に言うと、キーワードは「翼(揚力)」と「エンジン(推力)」と言えますね。
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