想像上のバラにネギ?!イギリスの「国花」とその伝説

イギリスは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドからなる連合王国。それぞれの地域は「国」とみなされ、独自の「国花」を有します。花の背景にある史実に基づく伝説や逸話を紹介。

執筆者: Lady Masala
連合王国イギリスの「国花」とは? 
  • イングランド
  • ウェールズ
  • スコットランド
  • 北アイルランド


それぞれの地域は「country(国)」と呼ばれ、独自の議会を有します。

イギリスは、この4つの国からなる連合王国なのです。

 

ウェールズには英語とは全く異なるウェールズ語が存在したり、サッカーのワールドカップには、それぞれの国のナショナルチームが参加したり。

イギリス人と日本人の捉える「国」という概念は、少し違っているのかもしれません。

 

連合王国 「バラ」

それぞれの国では独自の国花を定めていますが、連合王国としての国花は「バラ」。

バラの季節ともなると、さまざまな品種を集めたローズ・ガーデンには大勢の人々が集い、国民に親しまれている様子が伺えます。

 


また、民族意識の高いイギリス人は、それぞれの国を象徴する国花に対しても同様な愛着を持っているようです。

 

イングランド 「テューダー・ローズ」

イングランドの国花は「テューダー・ローズ」。

しかしながら、このバラは実在しません

 

ウィキペディア「テューダー・ローズ」より
画像提供:Sodacan

 

中世イングランドで勃発した薔薇戦争は、赤バラを紋章とする「ランカスター家」と白バラを紋章とする「ヨーク家」の権力闘争でした。
勝利を収めたのは、ヘンリー7世率いるランカスター家。

 

戦争終結後、ヘンリーがヨーク家のエリザベスを娶ることで両家が結びつき、新しくテューダー朝が誕生しました。
そのテューダー朝の紋章として考え出されたのが、両家の紋章であった赤と白のバラを組み合わせたテューダー・ローズ。


ヘンリー7世は、6人の妃を娶ったことで知られるヘンリー8世の父親で、息子の時代に、テューダー朝は最盛期を迎えることとなりました。

 

ウェールズ 「リーキ&ラッパ水仙」

ウェールズの国花は、春の象徴として知られる黄色い「ラッパ水仙」と「リーキ(西洋ネギ)」。

日本人が桜の開花を毎年心待ちにしているように、イギリス人は、ラッパ水仙に春を感じると言います。

 

 

「聖デイビッド・デー」に国花を飾ってお祝いするのはなぜ?

3月1日は「聖デイビッド・デー」です。

この日、ウェールズの人々は、胸にラッパ水仙やリーキを飾ってお祝いしますが、それは一体なぜなのでしょうか。


6世紀後半頃、サクソン人との争いで、後にウェールズの守護聖人となったデイビッドは、敵と見方を区別するためにウェールズ兵のヘルメットにリーキをつけておくことを命じました。
ウェールズ軍は勝利を収め、それ以来リーキは勝利の象徴として用いられるようになりました。

 


ウェールズ語でリーキは「ケニン」と言いますが、ラッパ水仙も「ケニン」。
音が同じであることから、いつしか、ラッパ水仙もリーキと同じように縁起物とみなされるようになったのです。

ネギよりも水仙のほうが見栄えがよいため、現在では、聖デイビッド・デーを彩るのは大部分がラッパ水仙になってしまったのだとか。
なんだか、本家本元のリーキが気の毒ですね。

 

スコットランド 「アザミ」

スコットランドの国花は、野に咲くアザミ。


時は13世紀。

ハーコン4世率いるノルウェー軍は、スコットランドの地を侵略しようと密かに攻め込んで来ました。
彼らは足音をたてないように、素足で歩いて来たのです。

 

 

ヴァイキング兵の一人がアザミを踏んでしまったとき、痛さのあまりに叫び声を上げました。
その声でノルウェー軍の侵入に気づいたスコットランド軍は、先制を封じて勝利を収めたということです。


この伝説に基づき、スコットランドではアザミは勝利の象徴とされているほか、紋章にも描かれています。

 

北アイルランド 「シャムロック」

北アイルランドの国花は、シャムロック。

シャムロックという呼び名は、日本ではあまり馴染みがありませんが、三つ葉のクローバーの総称で、特定の品種は示していません。

興味深いことに、シャムロックは、アイルランド政府により商標登録されているそうです。

 

アイルランドがイギリスから独立した際、北部アルスター地方の6州だけが北アイルランドとしてイギリスに留ったという歴史的背景があるため、北アイルランドの国花とその由来は、本国アイルランドと同様です。

 

 

シャムロックは、聖パトリック・デーのシンボルでもある

5世紀頃、後にアイルランドの守護聖人となった聖パトリックは、「シャムロックの葉が3つに分かれているのは三位一体を表しているため」と説明し、キリスト教の布教に努めました。

 

彼の命日にあたる3月17日は、聖パトリック・デー。
この日アイルランド系の人々は、シャムロックやそれを象徴する「緑」の衣服を身に着けてミサに参列します。

ただ、近年では宗教的な意味合いは薄れ、パレードなどが行われるお祭りの日として認識されるようになりつつあるようです。

 

 

身近な植物に目を向けてみませんか?

イギリスの国花とそれにまつわる逸話をご紹介しました。

実在しないテューダー・ローズを除き、バラ、ラッパ水仙、リーキ、アザミ、シャムロックは、どこででも見かけるイギリスでは一般的な植物です。

道端にひっそりと咲いている花々にも、ロマンチックな伝説があるかもしれませんね。

 
 コラムニスト情報
Lady Masala

旅行とマーケット・蚤の市めぐりが大好きな庶民派ロンドナー。
コレクションのヴィンテージ食器を眺めている時に幸せを感じます。

ロンドン発 -庶民的生活-
http://workingclass.blog109.fc2.com/

Travel.jp「たびねす」にてガイド記事執筆中
http://guide.travel.co.jp/navigtr/707/

 

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