秋の京都、季節から楽しむ愛らしい和菓子たち。五感で感じる菓銘の味わい方 (1/2)

執筆者: 小倉 夢桜-Yume- 職業:和菓子ライフデザイナー・和菓子ライター
はじめに

こんにちは、和菓子ライフデザイナーの小倉 夢桜-Yume-です。

 

秋の深まりと共に、錦秋の京都がすぐそこまでやってきました。
京都の和菓子屋さんの店先のケースに並べられているお菓子は、季節感たっぷりです。

 

今回は、この時期らしいお菓子をいくつかご紹介していきたいと思います。

和菓子を味わう、その前に

和菓子は五感で食べるお菓子です。

五感とは、『味わう』『見る』『匂う』『触る』『聴く』です。


その中のでも『聴く』で食べることが和菓子の素晴らしさだと思います。
和菓子に付けられている名前のことを『菓銘』または『銘』と言います。

この菓銘を聴き、お菓子を愛でて、感じて、様々な情景や背景を思い描きながら食べます。
食べられる方の感じ方ひとつで味が変わるとも言われます。


和菓子職人さんにとって菓銘は、お菓子の味や見た目と同じか、それ以上に重要なものとなります。
菓銘でそこのお店の価値が決まると言っても過言ではありません。
そのようなことを知っていただき、お菓子を見ていただくと面白いと思います。

亥の子餅

こちらのお菓子は『亥の子餅』という菓銘で一般的に販売されている、この時期に絶対に外すことの出来ないお菓子です。

旧暦10月の亥(い)の日の亥の刻に『亥の子餅』を食べると、無病息災と子孫繁栄をもたらすとされています。

 

『亥』とはイノシシのことです。
イノシシは多産であることから子孫繁栄を願う意味がこめられています。


 

どうでしょうか。
ウリ坊(亥の子)の姿に見えませんか。
亥の子餅の歴史は古く、『源氏物語』にも登場してきます。

『その夜さり、亥の子餅参らせたり。
かかる御思ひのほどなれば、ことことしきさまにはあらで、
こなたばかりに、をかしげなる桧破籠などばかりを、色々にて参れる』

 

その時代の亥の子餅は、新米にその年に収穫した大豆・小豆・ささげ・ごま・栗・柿・糖(あめ)の7種類の粉を混ぜて作った餅のことでしたが、現在ではお店によって違い様々な亥の子餅を見かけるようになりました。

様々な亥の子餅を見比べて、食べ比べるのもこの時期ならではの楽しみ方だと思います。

夕映え

このようなお菓子は『柿』という名前で販売されていることが多いのですが、少しセンスの良い名前で販売されているのがこちらのお菓子です。

 

秋も深まり、夕焼けの綺麗な時期になりました。
たわわに実った柿が夕日を受けて照り輝いている光景を表現しているお菓子です。

日常の何気ない様子を切り取ったような、この時期ならではのお菓子です。


『柿』という菓銘からは伝わりませんが、『夕映え』という菓銘になると想像力をかきたてられ、その情景が伝わるようになります。
菓銘の大切さが感じられるお菓子のひとつです。

通天

錦秋の京都。

みなさんはもみじの名所として何処を思い出されるでしょうか。
東福寺と答えられる方も多いのではないでしょうか。


こちらのお菓子は、その東福寺にかけられている橋の名前が菓銘になっています。
紅葉の時期、仏殿から開山堂に至る渓谷に架けられた通天橋に身を置くと、見渡す限り真っ赤に燃えるモミジが出迎えてくれます。

 

その光景をひと目見ようと溢れんばかりの観光客が通天橋から眺めている様子を表しているお菓子です。
素晴らしい景色だけでなく、観光客までがお菓子で表現されている少し茶目っ気を感じるお菓子です。

 
 コラムニスト情報
小倉 夢桜-Yume-
性別:男性  |   職業:和菓子ライフデザイナー・和菓子ライター

京都五感処・京都Loversフォーラム代表。
『今だけ』『ここだけ』『あなただけ』をコンセプトにオフィシャルホームページ『きょうの「和菓子の玉手箱」』で京都の素敵な和菓子たちの世界を毎日お届け。
この2年間に自身が食べた和菓子の数は1000個を優に超える。

数々の和菓子を見て、食べて感じた経験を活かして、現在は和菓子関連のテレビ制作に協力。

みなさんに和菓子の素晴らしさを伝えて、より身近に感じていただけるような活動を目指しています。

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