いま日本酒の主流は甘口!辛口神話の崩壊から見る消費者趣向 (1/2)
「甘口の日本酒」と聞くと、甘ったるくて飲めたものではないと思われる方も、中にはいらっしゃるかも知れません。
ところが、今主流の日本酒の多くは、かなり甘味を感じるお酒が多いのです。
端麗辛口酒の本場、新潟のお酒も、甘味を出したお酒が出てきています。
甘口と言っても、昔の三倍増醸酒(アルコールや糖類などを添加した三増酒)のような、甘くてベタベタしたお酒ではありません。
酸味を出して甘味とバランスを取り、フルーツのような甘酸っぱい味わいが、現代日本酒の主流になってきています。
「男は辛口」はテレビコマーシャルばかりでなく、今まで様々なメディアで言われてきたため、その影響で「旨い日本酒と言えば辛口」というイメージが一般的になりました。
また、昔は男は辛党で女は甘党、そんな風潮もありました。
男は外で甘いものを食べるなんて周りの目が気になり、カッコつけてコーヒーを注文していた記憶があります。
男は辛口を好むものだと、周囲も本人も思い込んでいたのですね。
ですから当然男は辛口のお酒で、甘口のお酒は女性が飲むものだと思われていました。
甘口というだけで「通じゃない」と蔑んだ見方もあったほどです。
はるか昔に全盛であった三増酒の頃は、ベタベタに甘いお酒がほとんどでしたので、「甘口=まずいお酒」と思われていたのも無理はありません。
最近は男性の好みも変わってきており、「甘口の日本酒が好き」と言われる方が結構いらっしゃいますし、「辛口の日本酒をください」と言われる方も、実際試飲してみると、案外甘味を効かした甘酸っぱいお酒を買われるケースもあります。
また最近では、スイーツ好きと公言される男性も増えています。
日本酒の流行もブームがあります。
アルコールや糖類などを添加した三増酒の反省から、「端麗辛口酒」がブームとなり、その後「濃淳辛口酒」へとブームが移ります。
当時の日本酒好き達も「甘口のお酒が美味しい」と正直に書いてあるのを見るようになり、日本酒の傾向が変わり始めたのを感じました。
甘味のある日本酒の方が美味しいと思っていたときに、伏木亨先生の書かれた「コクと旨味の秘密(新潮新書)」に出会いました。
本書いわく、以下の通りに書かれていました。
糖質は血糖維持など生命維持のために本能的に美味しいと思うのは動物の本能です。
(中略)そして糖は無条件で美味しく、強いコクの興奮を与える食の代表なのです。
出展:伏木亨/コクと旨味の秘密(新潮新書)
人間や動物は本能で糖質を無条件で美味しいと感じてしまうため、甘味のある日本酒の方が美味しく旨味が強かったのですね。
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