最近流行りの「偽装請負」とは?違法な雇用に騙されないための基本知識

執筆者: HRプラス社会保険労務士法人
はじめに

こんにちは、さとう社会保険労務士事務所の堀真寿です。

 

いきなりですが「労働者とは何か」と問われたら、どのように答えますか?

 

社長に雇われている者。

会社の従業員。

サラリーマン。

 

今回は、「労働者」についてお話しをします。

 

労働者とは

労働基準法9条では「労働者とは、職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」と規定されています。

ポイントは、以下の2点を満たすのが要件になっていること。


  1. 事業に使用される者。
  2. 労働の対象として賃金を支払われる者。

 

改めて言われると、当然のことだと感じる方も多いかもしれません。


しかし、労働基準法は、この当然のことを基準として労働者に適用される最低基準を定めています。

また、労働災害補償保険法も、この労働者の要件に基づき、労働者が業務中または通勤途中にケガをした時に補償が受けられる制度なのです。

 


以上を踏まえますと、労働者とは、雇用契約や名称に関わらず、従業員、契約社員、派遣社員、日雇社員、アルバイト、パートタイマー、外国人労働者などの全てが労働者であると分かります。

 

労働者として認められない人

世の中には、労働者に当てはまりそうで、実は労働者としては認められない人がいることをご存知でしょうか。

以下、いくつかのパターンを見てみましょう。

請負

請負とは「当事者の一方がある仕事を完成することを相手方に約束し、相手方はその仕事の結果に対して報酬を支払う」(民法632条)ことであり、労働の対価(賃金)を支払うことを約束する労働(雇用)契約とは、全く異質。

 

 

現在、この請負契約の良いとこ取りをした「偽装請負」という違法行為が、後を絶たない問題となっているのです。

請負契約をすると労働者の要件を欠くため、労基法の残業手当、休日、有給休暇などの全てが適用されない人になる点を悪用しているのです。

 

また、労災も適用されませんので、ケガをしても保険給付を受けることができません。

 

委任・委託

委任とは、本来、その事業に使用されるという関係がありません。
私ども社労士と会社との関係や、今では当たり前になっている、アウトソーシング業の受託業務が分かり易い例になると思います。

この手の契約も、社会保険に加入させたくないという理由などで、意図的に雇用関係を否定する契約手段として用いられることが現実にあります。

もちろん違法行為です。

 

法人の役員

原則、代表取締役、定款又は取締役会の決定による業務執行取締役、監査役は、労働者にはなりません。

そのため、労基法、労災保険は適用除外になります。

 

例外としては、法人の取締役・理事・無限責任社員等の地位にある者であっても、法令・定款等の規定に基づいて業務執行権を有すると認められる以外の者で、事実上業務執行権を有する取締役・理事・代表社員等の指揮監督を受けて労働に従事していること。

そして、その対償として賃金を得ている者は、原則として労働者として取り扱います。

 

事業主と同居している親族

その事業の代表取締役と同居をしている親族は、原則として労働者にはなりません。

ただし、常に親族以外の労働者を使用していて、親族がこれらの労働者と同様の業務に従事し、指揮命令を受け業務を遂行していること、かつ、賃金も労働の対価として支払われていれば、労働者になります。

 

実務上では、万が一、労働者として認められなかった場合、労災保険の適用が受けられませんので、特別加入をしておいた方が安心です。

 

おわりに

労働者の定義から、労働者にならない契約があることまでをお伝えしました。


2014年12月時点での日本の雇用者数は、5308万人。

これだけの数の人たちを、労基法・労災法が守ってくれています。

悪い会社に騙されて、雇用契約ではない契約にサインをさせられないよう、自分を守るためにも注意しましょう。

 
 コラムニスト情報
HRプラス社会保険労務士法人

HRプラス社会保険労務士法人は、企業が元気にならないと雇用は生まれない、との思いから「日本中の経営者・人事マンを元気にする!」をミッションとし、経営者思考による人事労務相談、就業規則や諸規程の整備、海外進出支援、社会保険事務のアウトソーシングなどを展開しています。
品質と信頼を担保するために、スタッフ全員が社会保険労務士有資格者。そして、確かな情報発信力とクイックレスポンスで貴社の人事労務を強力にバックアップいたします。
選ばれる理由はそこにあります。

HRプラス社会保険労務士法人
http://www.officesato.jp