全員参加の研修に給与・残業代は出る?企業が知っておくべき労務管理

執筆者: HRプラス社会保険労務士法人
社員研修時間は、労働時間と言えるか否か?

こんにちは、さとう社会保険労務士事務所の堀真寿です。
今回は「研修時間は、労働時間に該当するのか?」について、考えてみたいと思います。

 

 

まずは、労働時間の定義について確認しましょう

労働時間は、次のように定義されています。

 

労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間を労働時間とし、この労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まる

 

加えて、仮に指揮命令下に置かれたものと評価できる場合であっても、社会通念上必要と認められる範囲内でのみしか労働時間になりませんので、注意が必要です。

研修を行った時間は、労働時間か?
強制参加なら労働時間

新入社員研修など、会社が従業員に強制参加を義務づけている場合、研修を行った時間はすべて労働時間にあたります。

 

 

任意参加の研修でも、参加者だけ加点評価すると、間接的な強制とみなされる

任意参加の研修であれば労働時間とはなりませんが、のちに参加した者だけを加点評価することがあると、間接的に参加を強制したこととなり、労働時間とみなされます。

研修で指示された課題が完了せず、終了時刻を超えて作業した時間は、労働時間か?(※1)
ポイントは、会社の指揮命令下に置かれている時間と判断されるかどうか

従業員に「研修終了時刻を超えたとしても、その課題を完成させ、その日中に提出させること」を会社が義務づけている場合は、指揮命令下に置かれていると判断し、原則として労働時間にあたると判断します。

 

 

翌日の研修で発表をする為に要した準備時間は、労働時間か?(※2)
会社の指示があり、指揮命令下に置かれていると判断されれば、労働時間にあたる

翌日の研修の発表に備えて宿題事項が与えられた場合や、会社が従業員に議論させ、その結果を取りまとめた内容の発表を指示した場合、指揮命令下に置かれていると判断し、原則として労働時間にあたると判断されます。

研修終了後の残業(※1)と、研修準備時間(※2)の件について、あまりにも時間がかかり過ぎている場合の解釈
時間が、必要と認められる範囲を超えてかかっている場合、超えた範囲の労働時間性は否定される

※1と※2の件については、課題提出が遅い、準備時間が長くかかるなどの場合、社会通念上必要と認められる範囲を超えて行われている時には、その超えた範囲の労働時間性は否定されます。

 

過去実施してきた研修が、そこまで時間を要しないにもかかわらず、例えば深夜までかかった等であれば、その時間は労働時間としてカウントはしなくて良いでしょう。

 

研修を行う会議室などで、時間を区切って行わせるのが妥当

実際は、各自の部屋で発表の準備(宿題)をやらせるのではなく、研修を行う会議室などで、時間を区切って行わせるのが、労務管理では妥当だと考えます。

自主的に学習した時間は、労働時間か?
会社の指示がなければ、労働時間にはあたらない

上記以外の自主的に学習した時間は、労働時間になりません。

 

学習意欲のある従業員ですが、会社が指示していないにも関わらず、自主的に学習した時間は、指揮命令下にはないため、労働時間にはなりません。

おわりに

研修については、どの企業様でも行っていることだと思います。

最近は、高度な内容の研修も増えてきていると聞きます。

新入社員や未経験者のための研修だと、課題が終わらなく残って作業するケースもあることでしょう。

研修のための費用・時間は会社が負担しているのに、残業時間が発生しますと言うと、クライアントの社長にはお叱りを受けるかもしれませんが、現場に従事されている人事担当者様につきましては、研修時間と労働時間の関係性について、ご理解頂ければと思います。

 
 コラムニスト情報
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