子供や高齢者の転倒原因は病気なの?足底にある「メカノレセプター(感覚受容器)」の役割と鍛え方

執筆者: 西村 猛 職業:理学療法士/子どもと姿勢研究所代表/神戸ことばとからだの発達相談室【ゆず】代表
はじめに

高齢者の転倒による事故は、以前からニュースでも取り上げられています。

しかし、最近は子ども達の間でも転倒が良く見られるようになってきました。


最近の子どもはよく「何もないところで転ぶ」ことが多いそうです。
ちょっとした段差につまづいたり、床が濡れていたので滑ったと言うのなら分かるのですが、フラットな床の上で転ぶのはなぜでしょうか。


その理由に関係しているのが、今回お話するメカノレセプターです。

 

メカノレセプターの役割

メカノレセプターとは「感覚受容器」のことで、体のいろいろな部分(特に関節)にあります。

その中でも足の裏(踵、足の指の付け根、足の親指)には多くの受容器が存在しています。


この受容器の役割は「センサー機能」です。
例えば立っている時に、体重がどこにどうかかっているかを検知し、その情報を脳に送ります。

脳は、目や耳にある三半規管から入ってきた刺激とメカノレセプターからの情報とを統合して「今、体が真っ直ぐになっている」とか「少し右に体の重心がずれている」などを判断します。

そして体が真っ直ぐに位置するように(あるいは転倒しないように)、体の各筋肉に司令を出しバランスを取ります。

もしそのセンサー機能が不十分なら、脳は体の位置関係が分かりにくくなり、わずかにバランスを崩しただけでも体がグラグラと揺れてしまいます。

さらにセンサーの機能低下が進めば、体がぐらつくだけではなくバランスを取り切れずに転んでしまうのです。


始めにご紹介したように、高齢者が転倒しやすいのは筋力が弱っているからだけでなく、このメカノレセプターの能力が落ちていることも大きな原因の一つなのです。

 

最近の子どもが何もないところで転ぶ理由も、メカノレセプターの機能が十分に発達していないことが考えられます。

 

メカノレセプターの特徴

メカノレセプターには「使わなければすぐに機能低下を起こす」という特徴があります。


例えば、足首を骨折して長い間足ギプスを巻いていた人は、ギプスが外れてすぐの頃は歩くときにバランスを崩しやすいということがよくあります。

これはギプスで足が固定されている間、メカノレセプターを使う機会がなくなり、そのためにセンサー機能が低下してしまうことが原因です。


そのため、理学療法を始めとするリハビリテーションでは、ギプスが取れた患者さんに対してメカノレセプターの機能を活性化させるためのプログラムを組んでいます。

歩行バランスの再獲得に向け、運動療法を進めていきます。

 

メカノレセプターのテスト方法

あなたのメカノレセプターはしっかり機能しているでしょうか?
簡単なテストをしてみましょう。

片足立ち

平らな床の上(できればフローリングの上など)で片足立ちをして、何秒できるか計ってみましょう。

20秒保持できれば合格です。それができれば今度は同じことを目を閉じてしてみましょう。

 

メカノレセプターに問題がなければ崩れずに保持できます。

高齢者の方は近くの支えるものがあるところなどで行いましょう。テスト中の転倒に留意してくださいね。

 

 

足指だけで床を掴むようにして進む

両足を肩幅より少し狭いくらいに開いて立ちます。

そのまま足の指をグッと曲げるようにしながら、その力だけで前に進んでみましょう。

足の指が尺取り虫のようになるように「曲げる→伸ばす」を繰り返しながら進みます。

推進力は足の指だけです。10回程度の曲げ伸ばしを行い、スムーズに進むことができれば合格です。

 

さて、結果はどうだったでしょうか。
どれも出来なかったという方は、メカノレセプターの機能が低下していることが考えられます。

 

メカノレセプターの活性化の方法

このメカノレセプターは、機能低下が起こりやすい反面、意識して使うことで比較的簡単に刺激が入り、すぐに活性化されるという特徴があります。


ではメカノレセプターを活性化させる方法とはどのようなものがあるでしょう。
それは単純に「足の指を使う機会を持つ」だけです。
いくつかの簡単な方法をお教えしましょう。

 

家の中では裸足で過ごす

靴下を履いていると、足の指の動きが制限されやすいのです。

裸足は足の指それぞれが自由に動くので、メカノレセプターに刺激が入りやすくなります。

冷え性の方で「裸足はどうも…」という場合は、指の先が分かれた五本指の靴下を履けば裸足と同じ効果があるでしょう。

後は普通に過ごして下さい。特に運動などは必要ありません。

 

 

足でタオルの引っ張り合い

床の上に、2人で向かい合って座ります。

タオルやハンカチを片方の足の指で掴みます。

指の間に挟んでもOKです。
同時に引っ張り合いをします。抜き取られたら負けです。何度か勝負しましょう。

 

足指じゃんけん

足の指でグー・チョキ・パーをしましょう。

お子さんがいらっしゃる方は、親子で足指じゃんけんをすればお子さんが喜ぶかもしれません。

 

アスファルト以外の場所をよく歩く

もしあなたが散歩を習慣にしているなら、アスファルト以外の場所を歩くことが効果的です。

砂浜、砂利道、山道、などアスファルトに比べて不安定な地面を歩くようにしましょう。


そのような場所を歩く時には平らな道を歩くよりもよりメカノレセプターの働きが必要とされます。つまり不安定な場所を歩く→転倒しないようメカノレセプターが働こうとする→それがメカノレセプターの活性化につながるということです。

いかがでしょうか。どれも簡単に取り組めるものばかりですが、本当にこれだけでメカノレセプターは活性化するのです。

 

 

まとめ

体のバランスが取りやすくなれば、それは綺麗な姿勢を保つことにも繋がってきます。

綺麗な姿勢を作るためには体の柔軟性や筋力も大事ですが、この大きな役割を担っているセンサーにも目を向け、日常の中でいつも刺激を入れておくことが大切です。

メカノレセプターを鍛えて転びにくい体作りをし、同時に美しい姿勢作りをしていきましょう。

 
 コラムニスト情報
西村 猛
性別:男性  |   職業:理学療法士/子どもと姿勢研究所代表/神戸ことばとからだの発達相談室【ゆず】代表

■子どもと姿勢研究所代表。
子供の姿勢や体の発達の仕組みや取組方法について、医学的視点をもとに、どなたにも分かりやすくをモットーに情報発信しています。保育士さん向け情報も。姿勢や体作りに関する講師依頼もお受けしています。
http://kodomotoshisei.kokage.cc

■神戸ことばとからだの発達相談室【ゆず】代表
言葉や体の発達に不安があるお子さんとママさんのための相談室です。
言語聴覚士や理学療法士といった、国家資格を持つスタッフがお子さんの発達を評価し、必要に応じて個別レッスンをするスタイルの教室を運営しています。
http://yuzu-kobe.jp

■「ムズカシイ医療の話を分かりやすく伝える」がモットーです。
こちらのコラムでは姿勢や動作のプロとして、身体のこと、健康のこと、姿勢のことなどについて「そうだったんだ」、「それは知らなかった」などあなたの日常に役立てていただけるようなコラム記事を書いていきたいと思います。
あなたが「普通」と思っていたことが「実は少し違っていた!」というお話が、きっとそしてたくさん出てくると思います。

■業務における講師活動
・武庫川女子大学文学部心理・社会福祉学科「リハビリテーションと障害について」(平成22年~平成25年、27年 フィールドインストラクター講義)
・高齢者への健康教室、生活介護施設での介護方法などの指導、小学校における車いす啓発、その他。

■取材・出演依頼
・関西テレビ「ANCHOR」:けん玉が体に及ぼす効果について
・テレビ朝日「中居正広のミになる図書館」:ストレッチの効果について
・スポーツをする子どもを応援するフリーマガジン「Spody α」:「体幹はカラダの基本」ページ記事
・その他(雑誌などのライターさんからの取材等)

■日本うんこ学会所属