子供や高齢者の転倒原因は病気なの?足底にある「メカノレセプター(感覚受容器)」の役割と鍛え方
高齢者の転倒による事故は、以前からニュースでも取り上げられています。
しかし、最近は子ども達の間でも転倒が良く見られるようになってきました。
最近の子どもはよく「何もないところで転ぶ」ことが多いそうです。
ちょっとした段差につまづいたり、床が濡れていたので滑ったと言うのなら分かるのですが、フラットな床の上で転ぶのはなぜでしょうか。
その理由に関係しているのが、今回お話するメカノレセプターです。
メカノレセプターとは「感覚受容器」のことで、体のいろいろな部分(特に関節)にあります。
その中でも足の裏(踵、足の指の付け根、足の親指)には多くの受容器が存在しています。
この受容器の役割は「センサー機能」です。
例えば立っている時に、体重がどこにどうかかっているかを検知し、その情報を脳に送ります。
脳は、目や耳にある三半規管から入ってきた刺激とメカノレセプターからの情報とを統合して「今、体が真っ直ぐになっている」とか「少し右に体の重心がずれている」などを判断します。
そして体が真っ直ぐに位置するように(あるいは転倒しないように)、体の各筋肉に司令を出しバランスを取ります。
もしそのセンサー機能が不十分なら、脳は体の位置関係が分かりにくくなり、わずかにバランスを崩しただけでも体がグラグラと揺れてしまいます。
さらにセンサーの機能低下が進めば、体がぐらつくだけではなくバランスを取り切れずに転んでしまうのです。
始めにご紹介したように、高齢者が転倒しやすいのは筋力が弱っているからだけでなく、このメカノレセプターの能力が落ちていることも大きな原因の一つなのです。
最近の子どもが何もないところで転ぶ理由も、メカノレセプターの機能が十分に発達していないことが考えられます。
メカノレセプターには「使わなければすぐに機能低下を起こす」という特徴があります。
例えば、足首を骨折して長い間足ギプスを巻いていた人は、ギプスが外れてすぐの頃は歩くときにバランスを崩しやすいということがよくあります。
これはギプスで足が固定されている間、メカノレセプターを使う機会がなくなり、そのためにセンサー機能が低下してしまうことが原因です。
そのため、理学療法を始めとするリハビリテーションでは、ギプスが取れた患者さんに対してメカノレセプターの機能を活性化させるためのプログラムを組んでいます。
歩行バランスの再獲得に向け、運動療法を進めていきます。
あなたのメカノレセプターはしっかり機能しているでしょうか?
簡単なテストをしてみましょう。
平らな床の上(できればフローリングの上など)で片足立ちをして、何秒できるか計ってみましょう。
20秒保持できれば合格です。それができれば今度は同じことを目を閉じてしてみましょう。
メカノレセプターに問題がなければ崩れずに保持できます。
高齢者の方は近くの支えるものがあるところなどで行いましょう。テスト中の転倒に留意してくださいね。
両足を肩幅より少し狭いくらいに開いて立ちます。
そのまま足の指をグッと曲げるようにしながら、その力だけで前に進んでみましょう。
足の指が尺取り虫のようになるように「曲げる→伸ばす」を繰り返しながら進みます。
推進力は足の指だけです。10回程度の曲げ伸ばしを行い、スムーズに進むことができれば合格です。
さて、結果はどうだったでしょうか。
どれも出来なかったという方は、メカノレセプターの機能が低下していることが考えられます。
このメカノレセプターは、機能低下が起こりやすい反面、意識して使うことで比較的簡単に刺激が入り、すぐに活性化されるという特徴があります。
ではメカノレセプターを活性化させる方法とはどのようなものがあるでしょう。
それは単純に「足の指を使う機会を持つ」だけです。
いくつかの簡単な方法をお教えしましょう。
靴下を履いていると、足の指の動きが制限されやすいのです。
裸足は足の指それぞれが自由に動くので、メカノレセプターに刺激が入りやすくなります。
冷え性の方で「裸足はどうも…」という場合は、指の先が分かれた五本指の靴下を履けば裸足と同じ効果があるでしょう。
後は普通に過ごして下さい。特に運動などは必要ありません。
床の上に、2人で向かい合って座ります。
タオルやハンカチを片方の足の指で掴みます。
指の間に挟んでもOKです。
同時に引っ張り合いをします。抜き取られたら負けです。何度か勝負しましょう。
足の指でグー・チョキ・パーをしましょう。
お子さんがいらっしゃる方は、親子で足指じゃんけんをすればお子さんが喜ぶかもしれません。
もしあなたが散歩を習慣にしているなら、アスファルト以外の場所を歩くことが効果的です。
砂浜、砂利道、山道、などアスファルトに比べて不安定な地面を歩くようにしましょう。
そのような場所を歩く時には平らな道を歩くよりもよりメカノレセプターの働きが必要とされます。つまり不安定な場所を歩く→転倒しないようメカノレセプターが働こうとする→それがメカノレセプターの活性化につながるということです。
いかがでしょうか。どれも簡単に取り組めるものばかりですが、本当にこれだけでメカノレセプターは活性化するのです。
体のバランスが取りやすくなれば、それは綺麗な姿勢を保つことにも繋がってきます。
綺麗な姿勢を作るためには体の柔軟性や筋力も大事ですが、この大きな役割を担っているセンサーにも目を向け、日常の中でいつも刺激を入れておくことが大切です。
メカノレセプターを鍛えて転びにくい体作りをし、同時に美しい姿勢作りをしていきましょう。
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■株式会社ILLUMINATE代表取締役
子どもの発達と子育てを応援する会社。
https://illuminate-kobe.co.jp
■こども発達LABO.共同代表
YouTubeチャンネル「こども発達LABO.」では、言葉と体の発達に関すること、発達障害のある子どもへの手立てなどについて発信しています。
https://www.youtube.com/channel/UCAaMVv5UrovrhAtaWVerWrQ
■子どもと姿勢研究所代表。
子供の姿勢や体の発達の仕組みや取組方法について、医学的視点をもとに、どなたにも分かりやすくをモットーに情報発信しています。保育士さん向け情報も。姿勢や体作りに関する講師依頼もお受けしています。
http://kodomotoshisei.kokage.cc
■日本で一番、保育士さんを応援する理学療法士
会社の代表をしながら、全国各地の保育園・幼稚園で、、保育士さん向け講義を実践しています。
また保育園コンサルタントや巡回相談事業への参画など、裏方として保育士さんをバックアップする仕事もしています。
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NHK「あさイチ」出演/テレビ大阪「やさしいニュース」出演/テレビ朝日「グッド!モーニング」出演/神戸新聞「まいどなニュース」記者/教育機関向け雑誌「私塾界」/関西テレビ「ANCHOR」/テレビ朝日「中居正広のミになる図書館」/読売新聞/スポーツをする子どもを応援するフリーマガジン「Spody α」/Latte column/子供とお出かけ情報「いこーよ」/エキサイトニュース/mybest/その他、テレビ番組企画や雑誌などのライターさんからの出演依頼・取材等多数。
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