女の子の赤ちゃんに多い「先天性股関節脱臼」の特徴と予防方法4つ
赤ちゃんに見られる先天性股関節脱臼の特徴と予防法を紹介。およそ9割は生後に起こるので、赤ちゃんの時期に適切なケアを行い、予防・改善してあげることが何より大切になります。乳幼児健診で見過ごされることもあるため注意が必要です。
こんにちは、理学療法士の西村猛です。
先天性股関節脱臼とは、股関節が外れたり、外れかかったりする病気です。
完全に外れている状態を「完全脱臼」、外れかかっている状態を「亜脱臼」、股関節の屋根にあたる部分が上手く発育していない状態を「臼蓋形成不全」と呼びます。
先天性と言われるものの、実は生まれてから起こってくることがほとんどで、実に先天性股関節脱臼全体の9割を占めます。
今回は、この先天性股関節脱臼のご紹介と予防のための注意点についてご紹介します。
身体的な特徴としては、次のようなものがあります。
- 股関節の開きが左右で違う(片側に脱臼がある場合)
- 歩き始める時期が遅い、または歩いていても足を引きずるようにして歩く
- 足を曲げた状態で股を広げると、ポキっという音がする など
また、それ以外にも以下のような特徴があります。
- 冬生まれの赤ちゃんに多く見られる傾向がある。
- 男女比は、1:8.4で圧倒的に女児に多い。
- 片足のみ脱臼が見られる場合、左が右に比べ2.6倍多い。
- 赤ちゃんは痛がらないため、気付かれにくい。
先天性股関節脱臼があると、成人してから股関節に変形や痛みが出現してくることが多く、ひどい場合は股関節を人工のものに変える手術(人工股関節置換術)が必要になることもあります。
そのため、赤ちゃんの時期に適切なケアを行い、予防・改善してあげることが何より大切になります。
実は、先天性股関節脱臼は、乳幼児健診で見過ごされてしまうケースも多くあります。
日本整形外科学会が行った全国実態調査(平成23年から2年かけて調査)では、歩くようになってからはじめて診断されるケースが年間100例ほどあったという調査結果が出ています。
また、そのうちの多くが、乳幼児健診を受けているにも関わらず、その時点で指摘されていなかったという状況でした。
おかしいと思ったら、早めに整形外科を受診すること
このようなことから、乳幼児健診で異常を指摘されなかったとしても、「足の開きが違うなど股関節の動きに左右差がある」、「股関節を動かした時に音がする」などの場合は、早目に整形外科(できれば小児整形外科)を受診し、医師の判断を仰ぐようにしましょう。
先天性股関節脱臼は、赤ちゃんの姿勢や抱き方、お世話の仕方によって悪化させてしまうことがあります。
逆に、股関節脱臼のリスクがあっても、日常の適切な関わりを行えば、予防や改善につながることも期待できます。
なお、予防の最大のポイントは、「股関節をできるだけ広げておくこと」です。
以下に赤ちゃんのお世話をするにあたって、気をつけるべき点をご紹介します。
仰向けで寝かせた時、赤ちゃんは興味がある方に顔を向けがちです。
例えば、家族のいる場所が赤ちゃんから見て右側にあると、赤ちゃんはいつも右を見る機会が多くなるため、次第に右の向き癖がつくようになります。
また、お母さんの寝る位置も、向き癖に関係することがあります。
向き癖があると、顔を向けている方と反対の股関節が開きにくくなるため、脱臼のリスクが上がります。
赤ちゃんの寝ている向きや、お母さんの添い寝の位置を変えるなどして、左右どちらかに偏ることがないようにしましょう。
先天性股関節脱臼の予防のためには、股関節を開く(M字開脚)ことが大切です。
そのため、抱っこをする場合でも、股をしっかり開いた形を保持できるように注意します。
縦抱きの場合は、足を広げた状態の「コアラ抱っこ」が最も良い抱き方です。
横抱きの場合は、赤ちゃんの足が閉じたまま長時間過ごすことがないように気をつけましょう。
オムツを変える時、仰向けになった赤ちゃんの足首を持ってお尻を持ち上げていませんか?
この方法だと、股関節を引っ張ることになり、もしも股関節の脱臼傾向がある場合、それを助長してしまうことになります。
赤ちゃんのお尻を持ち上げる時は、しっかりとお尻の下に手を入れて持ち上げるようにしましょう。
寒い時期に生まれた赤ちゃんは、先天性股関節脱臼になりやすいと言われています。
その理由の一つとして、「厚着をさせる機会が多い」ことがあります。
厚着をさせると、股関節は開きにくい状態となりやすいので注意が必要です。
つなぎの服などは、股関節が開く動きを阻害することがありますので、足を開くことができるものを着せるようにしましょう。
また、バスタオルなどで体ごと包み込んでしまう「お雛巻き」も、股関節をしっかりと広げた上で巻くなどしましょう。
股関節をどのくらい開くのがいいのか、または十分開いているかどうかの判断が難しい場合、お雛巻きは避けたほうがよいでしょう。
赤ちゃんに見られる先天性股関節脱臼のおよそ9割は、生後に起こります。
普段からしっかりと股関節を開いた状態になるように気をつけてあげることが、何よりの予防方法になります。
乳幼児健診で見過ごされることもあるため、左右で開き具合が違うなど何か異常を感じたら、専門医の診察を受けるようにしましょう。
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子供の姿勢や体の発達の仕組みや取組方法について、医学的視点をもとに、どなたにも分かりやすくをモットーに情報発信しています。保育士さん向け情報も。姿勢や体作りに関する講師依頼もお受けしています。
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