昔懐かし「けん玉」効果!体幹を鍛え学習能力を発達させる健康ポイントと上達方法

執筆者: 西村 猛 職業:理学療法士/子どもと姿勢研究所代表/療育アドバイザー
はじめに

こんにちは、理学療法士の西村猛です。

 

前回、竹馬遊びが持つ効果についてお話ししました。
今回も引き続き、伝承遊びが体に与える効果についてお送りします。


さて、今回登場するのは「けん玉」です。
けん玉遊びは、繰り返し練習することで根気を養うことが出来たり、達成感を得られるなど、メンタル面での効果が大きいです。


では、身体面への効果はあるのでしょうか。
一見すると「手先が器用になる」という効果が考えられると思いますが、実はそれだけではありません。
その効果を一つずつ見ていきましょう。

 

けん玉が体に与える効果
1.体幹筋が活発に働き、姿勢が良くなる

腕や手を器用に使うためには、体の中心部分である体幹が安定していることがポイントです。

 

けん玉の場合、手を使っている間はずっと体幹筋を働かせ、体の安定を図っておく必要があります。
それを繰り返すことで、知らず知らずのうちに腹筋の力が強くなってきます。

 

腹筋は姿勢の安定に重要な役割があることから、腹筋が強くなることで姿勢が良くなることにつながるのです。

 

2.手と目の協調性が発達する

何か手を使った作業を行うとき、二つの情報が脳に入ります。
一つは「目から入る情報(視覚刺激)」、もう一つは「手から入る情報(体性感覚刺激)」です。
「手を見て作業する」ことで、二つの刺激が同時に脳に入ります。


けん玉ではしっかり目で見ながら手を動かすという動作をしますが、これが手と目を上手く連携(協調)させて、働かせるという学習になるのです。

 

この練習は、手先の器用さにつながります。

反対に、この部分がしっかり学習出来ていないと「不器用」の原因の一つになってしまいます。

3.深部感覚が発達し、ボディイメージが良くなる

深部感覚とは「目で見ていなくても、体が今どの位置にあるか」を脳が分かっているという感覚です。

「体の感覚」と言えば、暑い冷たいが分かる感覚(温度覚)や、痛みを感じる感覚(痛覚)などがイメージされると思いますが、実はこの深部感覚も日常生活に欠かせない感覚なのです。


例えば「テレビ画面を見ながらでも、食べ物を口に運ぶことが出来る」や「足元を見なくても、踏み外すことなく階段を下りることが出来る」などの動作で必要とされます。

これらの活動が手先や足元を見なくても出来るのは、体が「口までの距離」や「階段の高さや幅」を覚えていて、目からの情報がなくても「このぐらい腕を曲げると口に届く」「このぐらい足を出すと階段を踏み外さない」と、感覚として覚えているからなのです。


けん玉では、肘や膝を曲げたり伸ばしたりしますが、この活動には深部感覚が重要になってきます。

目は手先を見る必要があり、他の部分を目で見て確認することが出来ないためです。


練習によりけん玉が上達するのは、深部感覚がしっかり働くことで肘や膝、あるいは上半身や体全体のボディイメージが学習されることも関係しています。

ボディイメージが良くなることは、スポーツにおいても効果的です。

スポーツの技術が上達することとボディイメージは大きく関係しますが、その基礎をけん玉で学べるのです。

 

 

4.小脳が活性化される

けん玉に限らず、何かを練習するときの課程として「失敗する」という経験があります。
失敗を繰り返しながら少しずつ上達し、最終的には失敗することなく行えるようになりますが、実はこの過程に小脳が大きく関係していると言われています。


けん玉(あるいは何かの練習)が上達していくのは「上手くいった方法を脳が覚えている」だけではありません。

失敗した方法を脳が記録し、その「間違った方法を二度と行わないようにする」のです。

この働きは、小脳が担っていると言われ、間違った方法を封印することを「小脳の長期抑制」と呼びます。
全ての失敗例を記憶しているからこそ、成功例との区別が付くということになるのです。

けん玉を練習し、たくさん失敗することで、小脳にはたくさんの失敗経験が蓄積されていきます。

そのため、失敗をすればするほど小脳が活発に働くようになり、それは「覚えが早い」ことや「器用になる」などの効果につながります。

 

 

けん玉の上達ポイント

では、運動学的理論で考えた、けん玉が上達するポイントをお教えしましょう。
ただ漠然と「練習あるのみ!」よりも効果が高いですよ。

 

 

1.お腹に力を入れておくこと

体の中心部分である体幹がしっかり働かないと、体を真っ直ぐに固定することが出来ず、常にぐらぐらと動いてしまいます。

そうなると、いくら腕や手が器用に使うことが出来てもけん玉は上手くなりません。

まずは、しっかりとした体幹の働きが必要です。


少しお腹を凹ませた(少し前屈みになった)位置で行うと、腹筋に力が入りやすいでしょう。

常にお腹に力を入れることを意識しておきましょう。

2.手首や肘に力を入れて固定すること

皿を真っ直ぐに保つためには、手首の固定力が必要になります。

ただし、手首にはそれほど強い力を入れておく必要はありません。


手首が不安定にならないようにするためのポイントは、肘の位置です。

肘が体から離れないように気を付けましょう。

なぜなら、肘が少し左右に移動しただけでも、その先にある手首や手は大きく動いてしまうためです。

肘がしっかり良い位置を保つことが出来て初めて、手首から先を上手く使うことが出来ます。

 

3.たくさん失敗すること

前述したように、繰り返し練習することは、繰り返し失敗する経験を持つことになります。
逆に言えば、失敗経験を繰り返せば繰り返すほど、小脳は活性化し、少しずつですが失敗しなくなります。


単純な話ですが、たくさん失敗すれば、必ず上達するということです。

 

失敗経験を積んでいる最中に練習を止めてしまうと、小脳に蓄積されつつあった「上手く出来るコツ」が、また白紙の状態に戻ってしまいます。
そのため、一定の上達が見られるまでは、失敗し続けることがポイントです。

毎日練習した方がより効果的なのは、このような理由からです。


けん玉に限らず、繰り返し練習すると、必ず上手くなります。

「練習しているけれどまだ上手く出来ない」というのは、練習時間がまだ少ない状態です(小脳がまだ経験を積み重ねている最中です)。

おわりに

けん玉は手先の器用さが求められる遊びですが、同時に体幹筋のパワーやボディイメージも大事な要素になります。
そして脳の活動も活発になることから、いわゆる「脳の活性化」にとっても、とても効果が高いといえます。

 

遊びの中で自然に学んだ成功体験は、小脳の発達を促す意味でも大きな役割を持つことにつながります。

 コラムニスト情報
西村 猛
性別:男性  |   職業:理学療法士/子どもと姿勢研究所代表/療育アドバイザー

■子どもと姿勢研究所代表。
子供の姿勢や体の発達の仕組みや取組方法について、医学的視点をもとに、どなたにも分かりやすくをモットーに情報発信しています。保育士さん向け情報も。姿勢や体作りに関する講師依頼もお受けしています。http://kodomotoshisei.kokage.cc

■「ムズカシイ医療の話を分かりやすく伝える」がモットーです。
こちらのコラムでは姿勢や動作のプロとして、身体のこと、健康のこと、姿勢のことなどについて「そうだったんだ」、「それは知らなかった」などあなたの日常に役立てていただけるようなコラム記事を書いていきたいと思います。
あなたが「普通」と思っていたことが「実は少し違っていた!」というお話が、きっとそしてたくさん出てくると思います。

■業務における講師活動
・武庫川女子大学文学部心理・社会福祉学科「リハビリテーションと障害について」(平成22年~平成25年、27年 フィールドインストラクター講義)
・高齢者への健康教室、生活介護施設での介護方法などの指導、小学校における車いす啓発、その他。

■取材・出演依頼
・関西テレビ「ANCHOR」:けん玉が体に及ぼす効果について
・テレビ朝日「中居正広のミになる図書館」:ストレッチの効果について
・スポーツをする子どもを応援するフリーマガジン「Spody α」:「体幹はカラダの基本」ページ記事
・その他(雑誌などのライターさんからの取材等)

■日本うんこ学会所属
■一般社団法人エビデンスに基づく統合医療研究会 会員

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