栄養管理士が教える、納豆の栄養を引き出す食べ方・混ぜ方・アレンジレシピ
納豆は栄養がバランスよく含まれた健康食品の1つです。健康効果を高める食べ方、混ぜ方を栄養管理士がガイドします。ヨーグルトをちょい足ししても美味しいですよ。
こんにちは、栄養管理士・ダイエットコーディネーターの水谷俊江です。
今回は「体に良い食べ物は何でしょうか?」という質問に、お答えします。
色々な栄養素が複雑に絡み合い、相殺しながら体を作ります。
優れていると言われる栄養素や成分を摂ったところで、全てはバランスが大切です。
一番少ない因子の量でしか、機能しないのではないでしょうか。
これは「農芸化学の父」と称された、ドイツの科学者が提唱した「リービッヒの最小律」の考え方に基づきます。
植物の成長速度や収量は、必要とされる栄養素のうち、与えられた量の最も少ないものにのみ影響されるとする説です。
「リービッヒの最小律」を分かりやすく説明するものとして「ドベネックの桶」の登場です。
※ドべネックは、ドイツの科学者のこと。
まずはイメージトレーニングをしてみましょう。
食べ物と人間の体を作る栄養素の関係を、桶に例えてみます。
桶の理論は、板の長さが違う桶。
一枚の板のみがどれだけ長くても、一番短い部分から水は溢れ出し、結局水嵩は一番短い板の高さまでとなります。
人間の体はタンパク質で出来ています。
タンパク質は、食べ物として体の中に入ると、体を作る材料と、なるべくアミノ酸という小さい分子まで分解されます。
アミノ酸は体の中でも作られますが、必須アミノ酸といわれる9種類のアミノ酸は、体の中で作ることが出来ないので、食べ物で摂るしかありません。
そしてこれらの必須アミノ酸は、まさに桶の法則が適用されます。
それが「アミノ酸の桶の理論」です。
日本人は、米を主食として参りました。
ご飯ではリジンというアミノ酸が少ないので、リジンが含まれる大豆製品を食べ合わせることで、初めてアミノ酸が働いてくれます。
米に不足するリジンは、豆に含まれています。
そこで、ご飯と味噌、しょうゆ、お豆腐、納豆を組み合わせて食べると良いでしょう。
ここで、冒頭の質問に戻ります。
「体に良い食べ物は何でしょう?」と聞かれたら、食べ物はバランスなので、この食品が一番と言えるものはないと思います。
しかし、それでもあえて言わせていただきますと「納豆」が一押しです。
お米の粒を食べる粒食民族の日本人は、パンを主食とする粉食民族の欧米人と違い、納豆の粒をご飯にかけて食べる習慣は、とても合っているのだとか。
室町時代の文献「精進魚類物語」で、納豆太郎糸重という武士が登場して、活躍するという場面があり、この時代に納豆が作られていたことを物語っています。
日本人は遺伝子的に、大豆製品を食べる体に出来ています。
大豆製品の中でも、納豆は発酵の産物でありますので、他の大豆製品に比べても抜群に消化吸収が良く、ビタミン・ミネラルもグンと増えています。
また発酵食品の納豆。
納豆菌は腐敗菌や食中毒菌を腸内で攻撃、死滅させてしまうほど強い菌です。
O-157の菌も、納豆を食べていた人は中毒にならないという報告もあります。
それから納豆の消化酵素にも注目。
酵素の丸薬と思えるほどです。
納豆の酵素をざっと書き並べてみますと、以下のようになります。
- プロテアーゼ‥タンパク質→アミノ酸に分解
- アミラーゼ‥でんぷん→ブドウ糖
- リパーゼ‥脂肪分→グリセリン→脂肪酸
- セルラーゼ‥食物繊維→糖質
- サッカラーゼ‥ショ糖→ブドウ糖
- ウレアーゼ‥尿素→アンモニア
まだまだ有りますが、書ききれないのでこのくらいにします。
どんな食べ物の消化もバシバシ分解していく納豆は、天然の消化薬です。
「納豆飯に食あたりなし」とはよく言ったものです。
さてさて、食べれば食べるほど味わいの深い納豆。
ここで、知らなければ損する、納豆の食べ方豆知識を2つお教えします。
納豆のパックを開けると、当たり前のように辛子とだし醤油が入っています。
美味しい組み合わせだから入っているのですが、溶く順番で、おいしさがグンとアップするのです。
- 練りからしを加えて、粘りがでるまで十分まで混ぜる
- ネギなどの薬味を加える
- だし醤油を加える
この順番で混ぜると、納豆やネギの匂いがまろやかになると同時に、辛子の「ツン」とした刺激が新鮮に生きるのです。
先にだし醤油を加えてしまうと、粘りが弱くなって、醤油の味が強く出すぎてしまうのです。
もう一つ、意外な美味しい納豆の食べ方があります。
辛子を入れて混ぜ、その後ヨーグルトを入れて混ぜ、最後にだし醤油です。
納豆のネバネバがクリーミーになり、ヨーグルトが生クリームのように包むため、納豆臭さも無くなります。
こちらは先入観を捨てて、是非トライしてみて下さい。
美味しさに驚きます。
最後になりますが、血栓症の予防や治療に使われる「ワルファリンカリウム」を服用している人は、納豆を食べてはいけないと、医師や薬剤師から指示されることがあります。
ビタミンKは、血液凝固に関わっている大事な成分です。
緑黄色野菜にも含まれていますが、納豆は特に含量が多いのです。
また、腸の中で作り出された納豆菌もまた、ビタミンKを作り出します。
一方、このビタミンKの働きを阻害し、血液を固まりにくくするのが、抗血栓薬のワルファリンカリウムです。
そのため1週間に2~3回食べるだけでも、薬(ワルファリン)の効果がなくなると言われています。
だからといって、納豆は血栓にとって悪い食べ物という訳ではありません。
納豆には、血栓を溶かす働きがある酵素ナットウキナーゼが含まれているからです。
そこで、ナットウキナーゼの働きを強くして、ビタミンKの含有量を減らした納豆の開発も進められています。
体に良い食べ物といったら、一押しの「納豆」です。
しかし、食べ過ぎはいけません。
なぜなら体に良いことは、やはりバランスよく食べるということだからです。
冒頭で話した桶の原理ですね。
|
|
管理栄養士としてクリニックでのダイエットや腸活アドバイスなど2000人以上の相談業務に携わってまいりました。
アーユルヴェーダセラピスト、風水鑑定士の資格もあり、このコラムでは西洋医学の栄養学だけでなくインド、中国の叡智を取り入れた新しい健康アドバイスをご紹介します。
|
|