格付けなし、葡萄の種類も豊富!イタリアワインの特徴と楽しみ方
こんにちは。ソムリエ&ライセンスガイドの千代薫です。
人の趣向は千差万別で、特に味覚はご家族の中でも好き嫌いが一致することは稀ですので、外食をされる際には自分が好きなもの、又は知っているお料理をオーダーするのが一般的かと思います。
外国人観光客のお客様にはよく「レストランのお薦め料理は何ですか?」と聞かれます。
この場合の「お薦め」は、大半の場合「美味しい郷土料理は何ですか?」と直訳出来ます。
ご説明した後に「じゃあ折角の機会だから」とトスカーナ名物の猪ソースのパスタを召し上がる方もいれば、食べ慣れている(と思われる)カルボナーラやラザニアはないかと聞いてくる方もいます。
同じ事がワインにも言えます。
例えば「グラスワインの白でお薦めはありますか?」と聞かれて、ヴェルナッチャやヴェルメンティーノ(どちらもすっきりした白ワインになります)をお薦めしても、やはり飲み慣れている(と思われる)シャルドネ、ピノグリジョ、ソヴィニョンはグラスでありますかと返ってくることが多くあります。
1960年代まで世界のトップワインを生産していたフランスを横目に、質より量を生産していたイタリアでは、アルコール消費量の低下と新しい生産国の台頭で厳しい時代を迎えます。
1963年に原産地呼称(現在DOCGは73,DOCは330)に関する法律が制定されました。
経済的、伝統的側面から見て重要と思われるワインに対して、生産過程でのコントロール(使用出来る葡萄品種、熟成期間、畑での収穫量等)と保証が与えられることになりました。
トップクラスのワインの生産者の中から、新技術の取り入れが始まり、セラーの改造、醸造過程での温度コントロール、酵母のセレクション、大量生産のために植えられていた葡萄の木の植え替え、樽を使用したワインの熟成などのお陰で、イタリアワインの質は飛躍的に向上します。
イタリアでは北から南までの全20州でワインが生産され、生産量はほぼ毎年世界一。
葡萄のバラエティーの豊富さも世界一といえ、約1,500種類もの葡萄がワインの為に栽培されています。
因みに全世界で栽培されている葡萄は、約10,000種類と云われています。
イタリアで1番栽培されている葡萄「サンジョベーゼ」は、キャンティやブルネッロ・ディ・モンタルチーノ等のベースになります。
とても気難しい葡萄の為に、イタリア国外ではほとんど育ちません。
土地によってがらりと表情が変わる為に、1回飲んだけれど苦手、又は飲んだことがないという方もいるかと思います。
更に追い討ちをかけるように、イタリアにはフランスの様な格付け制度がありません。
前述の原産地呼称制度に則ったワインが、必ずしも商業的に価値が高く、間違いなく美味しいと太鼓判を押すことが出来ないのです。
そして生産者達の中には、全てが制定された原産地呼称に拘らず、特定地域指定ワイン(IGTワインは現在118)やテーブルワインのカテゴリーで自由にワインを作り、世界的な評価を受けているワイナリーも数多くあり、分かりにくさに拍車をかけています。
葡萄、気候、生産者の個性のバラエティが豊か、それゆえに必ず一人一人の好みに合うワインが、適正価格で見つかるのがイタリアワインだと思っているのです。
しかし、少しでも理解しようとすると、一体どこから飲み始めれば良いのかということになります。
これこそがイタリアワインのジレンマなのですが、ゆえに終わりのない楽しみと言い換えることも出来ます。
そもそもイタリアでは、一部の愛飲家は別として「理解して飲む」という人は少なく、どこの家庭でも肩肘張らずに、それこそ水割りで飲んでいる人も大勢います。
次回は楽しい食卓のお供に、分かりやすく代表的なワインをご紹介したいと思います。
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