派遣の待遇を改善!派遣先企業が行うべき5つの義務
正社員と派遣社員の待遇格差を是正するためには、派遣会社のみならず、派遣社員を受け入れる企業の対応も不可欠。2015年の派遣法改正を、派遣先企業の視点から見ていきましょう。
こんにちは、さとう社会保険労務士事務所の星野陽子です。
前回、平成27年の労働者派遣法の改正による、派遣労働者と、派遣先で同種の業務に従事する労働者の待遇の均衡を図るため、派遣元に課された新たな責務についてお伝えしました。
今回は、派遣先における均衡待遇の推進について、ご説明します。
派遣社員を受け入れる派遣先企業も、対応が必要
派遣労働者の処遇改善を図ることは、派遣労働者を雇用する派遣元(派遣会社)が推進する必要がありますが、派遣先企業による対応も必要となります。
派遣労働者と派遣先の労働者の均衡待遇のため、派遣先は「教育訓練・福利厚生・賃金」について、以下に挙げるような必要な措置を講じなくてはなりません。
派遣先企業は、派遣先の労働者に対して業務の遂行に必要な教育訓練を行っている場合は、同種の業務に従事する派遣労働者に対しても、派遣元の求めに応じ、その訓練を実施するよう配慮しなければなりません。
ただし、派遣元(派遣会社)で同様の訓練を実施することができる場合は、この限りではありません。
派遣先の労働者と同様の教育訓練・能力開発の実施が難しい場合にまで義務を課すものではなく、別の措置を講じることでも差し支えありません。
例えば、研修機材が不足していたり、コストが多額になってしまう等の事情があるのであれば、派遣先の労働者は集団研修を行なうが、派遣労働者にはその研修の映像を視聴させる等でも構いません。
派遣先企業は、派遣先の労働者が利用できる福利厚生施設のうち、「社員食堂・休憩室・更衣室」については、派遣労働者にも利用の機会を与えるよう配慮しなければなりません。
派遣先の労働者と同様の取扱いをすることが難しい場合にまで義務を課すものではありません。
例えば、定員の関係で派遣先の労働者と同じ時間帯に社員食堂を利用させることが難しいのであれば、派遣先の労働者とは別の時間帯に設定する等でも構いません。
派遣先企業は、派遣元(派遣会社)の求めに応じ、派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者の賃金水準に関する情報を提供するよう配慮しなければなりません。
派遣先の労働者の賃金水準を対外的に提供することに支障がある場合については、次の情報、あるいはこれに準じた情報でも差し支えありません。
- 派遣先において同種の業務に従事する労働者が属する職種について求人情報を公表したことがある場合には、その情報
- 派遣先において同種の業務に従事する労働者が属する職種に係る一般的な賃金相場(業界における平均賃金等)
派遣先企業は、派遣料金の額の決定に当たっては、派遣労働者の就業実態や労働市場の状況等を勘案し、派遣労働者の賃金水準が、派遣先で同種の業務に従事する労働者の賃金水準と均衡の図られたものとなるよう努めなくてはなりません。
また、派遣先企業は、労働者派遣契約を更新する際の派遣料金の額の決定に当たっては、就業の実態や労働市場の状況等に加え、業務内容等や要求する技術水準の変化を勘案するよう努める必要があります。
派遣先は派遣元の求めに応じ、派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者の情報や、派遣先の指揮命令下で労働する派遣労働者の業務の遂行の状況等の情報を提供するよう努めなければなりません。
これは、派遣元において教育訓練やキャリアコンサルティング、賃金等に係る均衡待遇の確保のための措置が適切に講じられるようにするためのものです。
なお、法令に規定されている「配慮義務」と「努力義務」には、違いがあります。
「配慮義務」とは、目的の実現に向け、具体的に取り組むことが求められるもので、努力義務よりも強い責務が課されるものをいいます。
派遣労働者と派遣先の労働者との均衡待遇を推進し、派遣労働者の処遇改善を図るのは一義的には派遣元ということになりますが、実際は派遣先による対応がないと処遇の改善が進みません。
そのため、これらの措置を必要としているのです。
また、一億総活躍国民会議では、「同一労働同一賃金」を目指す議論が始まっています。
政府は、同一労働同一賃金に向けたガイドラインを策定することも明らかにしています。
今後さらに、派遣労働者と派遣先の労働者との均衡待遇の確保が目指されていくことになりますので、今後の動向も注視していきましょう。
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