年金の財政を節約アドバイザーが検証!年金支給開始が70歳に?6年後には積立金が吹き飛ぶ可能性も

年金の支給開始が70歳からになるという噂があります。それほど、年金の財政は危険なのでしょうか?現状の歳入・歳出額と、今後の予想を解説。老後の備えは自分で用意しなければならない時代が来ています。

執筆者: ヨースケ城山 職業:節約アドバイザー
年金支給開始が70歳に?年金財政って、そんなに危ないの?

節約アドバイザーのヨースケ城山です。


日本老年学会と日本老年医学会の「高齢者は75歳以上」という提言が波紋を呼んでいます。
今までは65歳以上を高齢者と定義して、65歳を基準にして社会保障の制度が多く作られてきました。

年金の制度もその一つです。

 

その年金制度の70歳繰り上げ説の可能性は高いのでしょうか?

現在の年金財政を使って検証してみました。

 



平成27年度決算結了後の年金積立金は、114兆5,473億円

平成27年度「厚生年金・国民年金の収支決算の概要」厚生労働省発表では、年金積立金の額は114兆5,473億円となっています。

 

この年金積立金はその名の通り、将来の年金給付の為に積み立てられている大事なお金です。

このお金を年金積立金管理運用独立法人が運用をしています。

 

平成26年度が112兆1,465億円、平成25年度が110兆2,682億円となっているので、一時期減っていた年金積立金は増加傾向にあるのが分かります。

なぜ年金積立金が増えているの?

なぜ年金積立金が増加傾向にあるのか、厚生年金と国民年金の収支決算を見てみましょう。

 

厚生年金における平成27年度収支決算より
  1. 歳入は45 兆1,644 億円であり、被保険者数の増加や保険料率の引上げによって保険料収入が増加したこと等により、前年度より3兆8,509 億円増加。
  2. 歳出は42 兆9,008 億円であり、年金受給者数の増加によって厚生年金の給付費が増加したこと等により、前年度より3兆3,510 億円増加。

 

国民年金における平成27年度収支決算より
  1. 歳入は4兆2,346 億円であり、被保険者数の減少によって保険料収入が減少したこと等により、前年度より3,261 億円減少。
  2. 歳出は4兆1,189 億円であり、年金受給者数の減少によって国民年金の給付費が減少したこと等により、前年度より3,529 億円減少。

 

単年度だけ見てみましたが、年金積立金管理運用独立法人の運用益を入れないでも、この通り黒字になっているという結果となりました。

現状では厚生年金保険料の値上げなどの効果もあり、歳入が順調に伸びているために黒字化しているのが見て取れます。

ですが、厚生年金保険料が2017年(平成29年)以降は18.3%で固定されることが決まっていますので、この歳入はこれ以上、簡単に増えないことが予想されます。

 

実は、歳出に関しては着実に増えている

以下の表を見ると、歳出に関しては、毎年増えているのが目に見えてわかります。

今後も、歳出は増え続けることが予想される

特に厚生年金の受給者の数が多くなってきており、今後は毎年歳出が3兆円近く増えるということが予想されます。また、2017年10月から国民年金の支給要件の緩和が行われ、これまで25年以上加入の受給要件が10年以上になります。

これによって、今まで年金を貰えなかった層にも国民年金が支払われます。

 

これに加え2025年からは、65歳以上の方全員が年金支給開始年齢となると、今度は国民年金の歳出が跳ね上がることが確実です。

 

2025年以降は、歳出が5兆円規模で増えていくのではないかと考えられています。

 

歳入増は見込めるの?
残念ながら「No」

2016年10月から厚生年金の加入要件が緩和されパートアルバイトであっても一定の条件のもと厚生年金に加入することが可能となりました。

その分の歳入増は確実に見込まれると思われます。

 

ですが、厚生年金の加入者は、現役世代が減っている中では微増だと想像できます。

2017年以降の厚生年金保険料の固定化によって、歳入額は良くて横ばいといった感じになるでしょう。

毎年の赤字額はどの位になるの?
5兆円!このままだと後6年で破綻する可能性も

毎年5兆円の歳出超過、それが毎年5兆円づつ積みあがっていきます。

そうすると、6年で105兆円の年金積立金が吹き飛びます。

わずか6年で年金破綻です。

 

最悪のシナリオだとそうなるということです。

 

政府も手を打っているけれど…

勿論そうならないために、今、政府も出来ることを行っています。


前年には、年金カット法案が可決されました。

少しでも歳出を抑制していこうという施策です。

 

ですが、それでも歳出に歯止めはかかりません。

なにせ、受給者がこれからどんどん増えていくだけだからです。

だから「年金の70歳支給」が現実味を帯びてくる

そうなると、もう年金カットだけでは追いつきません。

もちろん運用益がどうなるかなんて誰にも分らないわけです。

 

すると、最終的には「70歳年金支給開始説」が現実味を帯びてきます。
前回と同じように、段階的に65歳から70歳へと支給開始年齢を上げるしか方法はないと思います。

 

ですが、これも延命処置にしかなりません。

合わせて年金カットも行う形となるでしょう。

おわりに

残念ながら、今の現役世代の方は、最悪のシナリオを想定して行動しておいた方が賢明だと思います。

具体的には60歳から70歳までをどう稼ぐか、それも現役並みの給与が必要になるということです。

 

退職金や貯金などの老後資金は、働けなくなった70歳からの為にとっておかなくてはいけなくなります。

そもそも70歳からの年金もカットされた雀の涙の可能性があります。

 

自分で自己防衛をしなくてはいけない時代が、もうすぐそこまでやってきています。

 
 コラムニスト情報
ヨースケ城山
性別:男性  |   職業:節約アドバイザー

社会保険労務士合格者

ファイナンシャルプランナー

住宅ローンアドバイザー

年金アドバイザー

1973年生まれ。大学卒業後、商売の基本を学ぶため大手100円ショップに入社。1円単位の原価計算の重みを知る。その後、大手スーパーに転職し、値引きやタイムセールを担当。リアルな現場での駆け引きや相場観を養う。またその手腕により東京地区エリアマネージャーとなり、新人採用を年間4000人担当した。

著書「給料そのままで月5万円節約作戦!!」の中では固定費の削減を中心に
ラクして貯めるをモットーに活動している。

ブログでいつも取り上げているテーマは節約全般、社会保険労務士試験 住宅ローン 労働問題 ブラック企業 障害年金 40代の転職 出版について 潜在貯蓄 教育についてなどになります。興味がある方は是非ブログも覗いてみてください。

著書は『給料そのままで「月5万円」節約作戦!』(ごま書房新社)。本の内容は、『らくらく貯蓄術。住宅ローン地獄に落ちない為の家計防衛のススメ。』
http://kotukotushinai.jimdo.com/
にもまとめられている。

ブログ『節約アドバイザー ヨースケ城山ブログ』http://ameblo.jp/yousukeshiroyama
では、節約だけではなく転職活動、著書、社労士、FPのことを配信中。

【著書】
2012年 給料そのままで「月5万円」節約作戦【ごま書房新社】より発売
2015年 給料そのままで「月5万円」節約作戦がkindle化されました。
2015年 「kindle無料キャンペーン」でベストセラーランキング1位を獲得して販売につなげる方法 発売。
2016年 給料そのままで「月5万円」節約作戦 増補改訂版発売
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2017年 給料そのままで「月5万円」節約作戦 増補改訂2版発売
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