うつ・精神疾患の社員を休職させるには?会社が行うべき対応手続き (1/2)
こんにちは、社会保険労務士の柳田真です。
厚生労働省「平成24年 労働者健康状況調査」によると、過去1年間(H23.11.1~H24.10.31)に、メンタルヘルスの不調により、連続1ヶ月以上休職又は退職した労働者がいる事業所の割合は、8.1%(平成23年調査は9.1%)となっております。
おおよそ10社に1社の割合です。
では、実際に労働者を休職させる際に考慮しておかなければならないことをお話しましょう。
過去の判例を基に、休職をさせるための法的な要件を整理すると、次のようになります。
- 就業規則などに、休職命令の発令について規定されていること
- 客観的に休職させる必要性があること
- 休職の必要性と、休職により労働者が受ける不利益のバランスが取れていること
疾病による休職の場合、専門医により、以下のことが合理的に確認された場合には、おおむね休職措置の必要性は認められることになります。
- 疾病への罹患
- 当該疾病のため業務に支障が生じる可能性が高いこと、又は業務に従事することにより、当該疾病の憎悪もしくは治療への悪影響等が生じる可能性が高いこと
- 当該疾病が、欠勤など短期間では全快が困難な程度に継続する可能性が高いこと
この際に本人が拒否するか、緊急性が高いなどの事情から、専門医の判断を仰ぎえない場合には、上司または人事労務部門(使用者)の判断による休職命令も可能となります。
ただし、就業規則にそのような制度が規定されている場合でも、まずは傷病欠勤など、労働者の不利益の少ない措置を先行させます。
規定がない場合にも、先行させる努力は必要です。
産業医による行動観察、当該労働者を交えた協議が可能な場合は、原則としてそうした措置を講じた上で実施する必要があります。
これは、後々トラブルが発生し、裁判となった場合に会社側の「良心的手続きを行った」という証明になります。
文書等に「5W1H(いつ、どこで、だれが、何を、どのように、どうした)」形式で、主観を交えず客観的な記録を残しておくべきでしょう。
休職することによる不利益には、企業ごとの就業規則の規定や契約内容等によって事情が変わるものがありますが、およそ次のものが考えられます。
- 所定賃金の不支給ないし減額
- 昇格・昇給機会の喪失
- 退職金・退職年金の減額
- 休職期間満了による(自然)退職への接近
- 職業経験その他キャリアの中断ないし蓄積機会の喪失
- 休職履歴の記録
- 復職段階での審査ないし審査を余儀なくされること
使用者側が、上記の労働者側の不利益を緩和する措置を講じ、その事を休職させる際に対象者に説明すれば、その分だけ休職の法的要件は緩和されます。
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社会保険労務士(東京都社会保険労務士会所属)
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一般社団法人産業保健法務研修センター認定 メンタルヘルス法務主任者
【代表者経歴】
東京都社会保険労務士会 総務・財務委員会委員
東京都社会保険労務士会港支部 総務委員長
東京都社会保険労務士会 無料電話相談(社労士110番)担当
一般社団法人産業保健法務研修センター 正会員
港区役所 国民年金係相談窓口担当
足立年金事務所 厚生年金適用調査課
柏労働基準監督署 就業規則・36協定点検指導員
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