高齢者を雇用するとき、企業が気を付けるべき手続きまとめ -40歳から75歳の後期高齢まで-

執筆者: HRプラス社会保険労務士法人
はじめに

こんにちは。さとう社会保険労務士事務所の堀 真寿です。


今回は、社員の到達年齢に応じて必要となる手続きについて、説明を致します。
人事担当者はもちろん、人事担当者でない方でも、自分自身がその年齢に達したら法律上とられる手続きとなりますので、知識として身につけて頂ければと思います。

  • 年齢に応じて行わなければならない手続きは、労働保険・社会保険ともにある
  • 特に手続きが必要となるのは、60歳から75歳の間になる


以下、具体的に見ていきます。

 

 

40歳到達時

日本に住所を有する40歳以上65歳未満の健康保険加入者(被保険者および被扶養者)は、介護保険の第2号被保険者となり、40歳の誕生日の前日の属する月から、健康保険料と併せて介護保険料を負担します。

60歳到達時

雇用保険の被保険者が、60歳の誕生日の前日に雇用保険の被保険者期間が通算して5年以上ある場合は、「雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書」をハローワークに提出します。

これにより、高年齢雇用継続基本給付金を受給するための資格の確認と賃金月額の登録をすることになります。


この登録により、60歳定年の会社で、嘱託として再雇用をされた場合に毎月の給与が、ハローワークに登録した賃金月額より75%未満に下がった場合などは、高年齢雇用継続基本給付金の支給を受けとることができます。

60歳以降に同じ会社で退職後再雇用される場合

健康保険および厚生年金保険に加入している従業員が、60歳以上で退職し、1日の空白もなく同じ会社に再雇用される場合は、事業主との雇用関係が一旦中断したものとして、「被保険者資格喪失届」と「被保険者資格取得届」を同時に提出することができます。


いわゆる同日得喪と呼ばれる手続きですが、これをやる目的は、再雇用された月から、再雇用後の給与に応じた標準報酬月額になります。

通常は、4カ月後に標準報酬月額の見直しをします。

つまり、社会保険料も新たな標準報酬月額で計算をされるため、給料が低くなったのに、保険料だけが高いまま、という状態を避けることができます。

 

また、在職老齢年金を受けている場合は、支給停止額も再計算され変更となります。

64歳到達後の4月1日

4月1日において満64歳以上の雇用保険の被保険者は、雇用保険の保険料が被保険者負担分、会社負担分ともに免除されます。例えば、平成26年4月1日より免除される方は、昭和25年4月1日までに生まれた方が対象となります。


なお、こちらは、ハローワークでの手続きは不要です。給与計算担当者が注意をする事項となります。

65歳到達時

65歳に達すると(誕生日の前日です)介護保険は、第2号被保険者から第1号被保険者となり、保険料の徴収も本人の老齢年金等から天引きされるなどの方式に、変更がされます。

 

この際の、第2号被保険者から第1号被保険者への切り替え手続きを、会社で行う必要はありません。

70歳到達時

70歳に達すると(誕生日の前日)厚生年金保険の被保険者資格を喪失します。

従いまして、「厚生年金保険被保険者資格喪失届」を年金事務所に届け出る必要があります。

 

なお、70歳を超えて会社で働いていても既に資格喪失しているので、保険料を天引きされることはございません。

しかし、在職老齢年金制度の年金調整の対象となります。

 

そこで、支給調整の対象となるか否か判断するために会社は、「厚生年金保険70歳以上被用者該当・不該当届」を年金事務所に届出をします。

75歳到達時

75歳に達すると(誕生日の前日)健康保険の被保険者は資格を喪失します。

75歳の誕生日からは、都道府県単位の広域連合が運営する「後期高齢者医療制度」に加入となります。

そのため、健康保険の資格喪失手続きが必要となります。

 

おわりに

いかがでしたでしょうか。

以上のとおり、年齢に応じて、行う手続きが出てきます。

 

高齢化社会になるにつれ、高齢者を雇用する機会が増えます。

手続きが漏れないように、人事労務担当者は、日ごろからのスケジュール管理が重要になります。

 
 コラムニスト情報
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