健康診断がない会社は法律違反!”社員の健康管理”は企業の義務である
従業員数や規模にかかわらず、会社は必ず社員の健康診断を行わなければなりません。健康診断のない職場は労働安全衛生規則第44条なので、労基に相談しましょう。
こんにちは、社会保険労務士の柳田真です。
意外と周知されていないことですが、労働者の健康管理に関し、労働安全衛生法は、会社に対して「常時使用する労働者に、1年以内ごとに1回、定期健康診断の実施」を義務付けています。
では、健康診断を受診させれば、労働者の健康管理義務を果たしたと言えるのでしょうか。
健康診断の費用については、原則会社が負担する必要があります。
通達にも「健康診断の費用については、法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然会社が負担すべきものである」とされています(昭和47年9月18日基発第602号)。
また、社員が健康診断を受診のために医療機関に出向く交通費等も含まれると解されています。
また一方で、労働者側にも受診の義務があります。
受診命令に従わない場合には懲罰を課してでも、必ず受診させるのが賢明です。
前述の労働安全衛生法には、健康診断の結果、異常の所見のある場合には労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師等の意見を聴かなければならないと定められています。
さらに会社は、医師等の意見を勘案して、その必要があると認められるときは、その労働者の実情を考慮して就業場所の変更・作業の転換・労働時間の短縮・深夜業の回数の減少等の措置を講ずるなど、適切な措置を講じなければならないと定めています。
このような措置を講じることは、会社が国に対して負っている義務ですが、さらに、労働契約法第5条の「安全配慮義務」に基づき、その労働者に対して信義則上負っている労働契約上の義務でもあります。
裁判の判例として、健康診断の結果、高血圧であることを会社も認識していた社員に対して、その後も業務の軽減措置などを講じなかった結果、その社員が脳出血で死亡したケースにおいて、会社側に「安全配慮義務」違反があるとして損害賠償責任を認めました。
※ただし、本人も精密検査や通院を行っていなかったため、本人側の過失相殺として損害額の半分が減額されました。
実際に法律に則り、健康に問題がある労働者に対して労働時間短縮の措置をとる場合、短縮分の賃金が減額されるなどの理由で、労働者側がそのような措置を望まないことが多いと想定されます。
このように、労働者が自ら健康を害することを認識しながらも、会社の措置に応ずることを拒否した場合には、本人の責任を認める判決が出ています。
※ただし、会社側の損害賠償責任も認められています。
しかしながら、配転措置により、長年従事していたことと違う業務を行うことになれば、不安に思うのも分かります。
このように、健康診断後の措置については、労働者側の利益損失が存在し、非常に慎重にならざる負えない問題であることは事実です。
しかしながら、労働安全衛生法では、労働者にも「健康保持努力義務」が課せられていることを考慮すれば、会社の措置に従わない者に対して、軽い懲戒や査定ポイントへの影響などのペナルティを課すなどをして、軽減措置に従わせることが現実的な対応だと思います。
将来のリスク軽減対策として、検討の必要性は非常に高いといえます。
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一般社団法人産業保健法務研修センター認定 メンタルヘルス法務主任者
【代表者経歴】
東京都社会保険労務士会 総務・財務委員会委員
東京都社会保険労務士会港支部 総務委員長
東京都社会保険労務士会 無料電話相談(社労士110番)担当
一般社団法人産業保健法務研修センター 正会員
港区役所 国民年金係相談窓口担当
足立年金事務所 厚生年金適用調査課
柏労働基準監督署 就業規則・36協定点検指導員
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