秋に多いのどの痛みは「乾燥」が原因!喉を保湿する食べ物と過ごし方
こんにちは、薬剤師の田伏将樹です。
今回は、中医学的な考えで、秋の養生法をお話しします。
夏が終わり秋になると、空気は乾燥してきます。
秋の乾燥は、五臓でいう「肺」を中心に、呼吸器系に影響が出やすいと考えられています。
- のどが乾燥しやすい
- のどに異物感を感じる
- のどが痛くなる
- 痰が切れにくい
- 声がかすれる
- 乾いた咳が出やすい
これらの症状は、乾燥が原因で、「肺」の潤いの低下が関係しているのかもしれません。
水分や血液を合わせて「陰液」と呼びますが、陰液が全般に不足している状態を「陰虚」と言います。
のどの乾燥感を覚えたり、切れにくい痰が原因で咳がでたり、皮膚も乾燥している状態になります。
陰虚に使われる漢方薬のうち、肺に潤いを与えて咳を抑えるものとしては、例えば「麦門冬湯(ばくもんどうとう)」が有名です。
「麦門冬湯」には6種類の生薬が使われていますが、この漢方薬の主薬であり、処方の名前にもなっている「バクモンドウ(麦門冬)」は、ジャノヒゲというユリ科の多年草の根を使った生薬です。
呼吸器を潤して、口の渇きを治し、のどのイガイガした感じや、乾燥感からの咳、声がれの解消に用いられます。
先程、「バクモンドウ(麦門冬)」は、ユリ科の植物の根を使った生薬だとお話しましたが、ユリの根と言えば、秋が旬の食材に「ユリ根」があります。
この食用のユリの鱗茎(球根)であるユリ根も、肺を潤して、咳を止める効能があるといわれる食べ物です。
よく茶碗蒸しの具にユリ根が使われますよね。
ユリ根も卵も、ビタミンB2を含んでいて、共に呼吸器や胃の粘膜を守りますので、茶碗蒸しにユリ根を入れるのは、栄養面から見ても相性が良いと言えます。
他に、肺を潤す効果が期待できる食べ物としてお勧めなのは、代表的な秋の果物「梨」です。
リンゴも健康に良い果物と言われますが、肺を潤す効果では、梨の方が優れています。
果物は、ビタミンなどの栄養分が豊富なだけでなく、酸味と甘味によって、肺を潤す効果が期待できます。
酸味と甘みを組み合わせると陰液を生じる、という意味で「酸甘化陰」と東洋医学では言います。
果物は単にみずみずしいから良いというわけではなく、酸味の成分と甘味の成分が協調して、体の機能的な面からも潤いを増す効果があると考えられています。
同じように、ブドウや柿などでもOKです。
肺を潤して、のどには良い働きをします。
ただし、一度に食べ過ぎるのは良くありません。
梨や柿などは、「寒性」の食べ物で、胃腸を冷やしやすい特徴を持っています。
微熱のあるとき、体の水分が足りなくてほてっているとき、熱っぽいにときには適しますが、逆に冷え性の方、冷たいもので下痢や腹痛を起こす人は、控えめにしましょう。
妊婦さんも、下半身を冷やすといけませんので、食べ過ぎに気をつけてください。
果物がすぐに手に入らないとき、果物の甘酸っぱい味を想像するだけでも、条件反射で唾液が出てきます。
このときの唾液を飲み込むだけでも、のどの乾燥を防ぐのには、良いかもしれません。
のど飴でよく見かける「カリン」という果実。
漢字では「花梨」と書きます。
中国原産で、梨と同じバラ科の植物です。
これも痰をとり、咳を鎮める効能があります。
「肺」と「大腸」は、親と子の関係にあると考えられていて、お互いに影響し合っています。
肺は、呼吸器とともに、皮膚にも関係しています。
便秘のときに肌の調子が悪いとか、咳がひどいときに便秘も起こる、ということがあり得ます。
大腸は、食べ物のカスから水分を吸収する器官です。
便秘をするということは、大腸も乾燥しています。
のどの調子を良くするためには、便秘にも気をつけた方が良いのです。
梨やリンゴ、柿などは、便秘の改善効果も期待できます。
その他、食物繊維を多く含む、栗、さつまいも、キノコなどの秋の食材も、効果的に取り入れてください。
胃の働きが悪いと水分の吸収も悪く、食べ物からの水分がうまく肺に送られなくなります。
悩み事があって、胃の調子が悪いときは、さらに肺の潤い低下を招きます。
胃腸の機能を弱らせないよう、辛いものや、刺激の強い食べ物の取り過ぎに注意することも大切です。
季節の変わり目は、もともと体調を崩しがち。
秋は、夏の疲れを癒し、乾燥対策をとることが重要です。
収穫の秋、食べ物の美味しい季節ですので、旬の野菜や果物を上手く取り入れて、健康な毎日を過ごしましょう。
それが、来る冬への備えにもなります。
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