日本人の失明原因第3位「網膜色素変性症」とは?症状と治療方法。遺伝だからと諦めないで!

眼科検査技師が解説!中途失明の3大原因の一つ「網膜色素変性症」。遺伝子の異常などが原因で、幼少期~学童期に発症することが多い病気です。症状・対症療法について眼科検査技師が解説。

執筆者: 中根 千恵 職業:眼科検査技師/サービス介助士/食育インストラクター/メイクセラピスト/Webライター、コラムニスト
「網膜色素変性症」とは?

こんにちは、眼科検査技師の中根千恵です。

 

「網膜色素変性症」という目の病気をご存知でしょうか?
この疾患は学童期から発症することが多く、また進行が大変穏やかである事が特徴です。

 

 

日本人の失明原因第3位!

日本人の失明原因の1位~3位は、次の通りです。

「網膜色素変性」は第3位となっています。

 

第1位:緑内障
第2位:糖尿病網膜症
第3位:網膜色素変性

 

以前のコラムで、第1位の「緑内障」・第2位の「糖尿病網膜症」については、既にお話ししましたが、今回取り上げる「網膜色素変性症」は、これらとは大きな違いがあります。

 

発症時期は?

幼少期~学童期に発症することが多いのですが、進行が大変緩やかなので自覚症状がなく、大人になってから気付く方も多いのが特徴です。

 

まだまだ不明な点が多い病気ですが、発症度は約8000人に1人と、それほど珍しくはない疾患です。

 

原因は?

ほぼ遺伝性の病気と考えられています。

ですが、稀に遺伝傾向が証明されていないのに発症する方もいます。

 

その場合の原因は現代医学では「不明」とされています。

どんな症状がでるの?

次のような症状が見られます。

これらは代表的なもので、どの症状の進行が早いのかについても個人差があります。

 

  • 夜盲
  • 視野異常
  • 視力障害
  • 色覚異常

 

視力検査の結果が良好でも、かなりの見えにくさを感じたら要注意

網膜にある『杆体(かんたい)』は暗所での見え方、視野の広さに関連しています。
網膜色素変性症は、この杆体から障害が生じます。

物を見るのに大切な黄斑部にある『錐体(すいたい)』は視力、色覚に関連しています。

網膜色素変性は、まず杆体に異常をきたす事が多く、錐体は比較的保たれます。
ですので、かなり症状が進行しないと高度の視力障害は生じませんが、視野は求心性狭窄を起すため、視力検査の結果が良好でも本人はかなりの見えにくさを訴えます。

網膜色素変性の診断方法・進行具合の検査例
ERG検査

眼球に点眼麻酔をした後、コンセントが繋がれているハードコンタクトのようなものを取り付け電流を流すことにより、網膜の電気的な反応を調べる検査です。

 

暗順応検査

暗闇でどのくらいの光を判断できるのかを調べる検査です。

一般的には明所から暗所へ入ると10~20分程度で目が慣れてきて薄ぼんやり周りが見えますが、網膜色素変性症の方は暗所に慣れません。

 

視野検査、眼底検査

網膜所見から病気の進行具合を調べます。

 

治療法は?
根本的な治療法はなし

網膜色素変性に対しては、現在のところ残念ながら根本的な治療法がありません。

対症療法として、進行を遅らせるためにサングラス(網膜色素変性症専用)の使用、ビタミンAの大量療法があります。

 

経過・予後

冒頭でも述べましたが、この病気は幼少期~学童期に発症が始まります。


発症後40~60年後経過で、約60%の方が視力0.1以下、約20%は視力0.2~0.4で、残りの20%は視力0.6程度になると言われています。

コンタクト、眼鏡装用をしても視力は向上しません。

つらい現実…

長生きすれば、確実に失明に至る疾患です。

 

命が尽きるのが先か、目の寿命が尽きるのが先か。
それが網膜色素変性症です。

ですので、少しでも進行を遅らせるために対症療法を行います。

 

おわりに

偏見はやめて!

網膜色素変性症の原因がほぼ遺伝、そしていずれ失明する可能性があると知っている方々の中には、下記のような人達がいます。

 

  • 自分の子供の結婚相手の家族、親戚に網膜色素変性症の人が居ないかを調べる
  • 「失明する前に、やりたいことをした方がいいよ」などと言う


そのような偏見はやめて頂きたいと願います。

必ずしも遺伝するとは限りません。
また、ご本人は失明の恐怖・不安を抱えながら懸命に生きていらっしゃいます。

 

ご本人も諦めないで

そして、こう仰る患者様が居ます。

 

  • 「遺伝したら可哀想だから子供は作らない」
  • 「失明した時に家族に迷惑をかけたくないから結婚はしない」


進行を遅らせることはできます。
そして、医学は日々進歩しているので諦めないで欲しいのです。

これが眼科医療従事者としての願いでもあり、そして世の中の皆様にも他人事とは思わず理解していただきたい疾患「網膜色素変性症」です。

 
 コラムニスト情報
中根 千恵
性別:女性  |   現在地:東京都  |   職業:眼科検査技師/サービス介助士/食育インストラクター/メイクセラピスト/Webライター、コラムニスト

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【資格】
・眼科検査技師
・サービス介助士
・食育インストラクター
・メイクセラピスト

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