お正月料理の意味と由来は?おせちメニューとお屠蘇(とそ)の薬膳的効能 (1/2)

執筆者: 藤永知嘉子 職業:国際中医薬膳師
はじめに

お正月は年神様(としがみさま)を我が家にお迎えし、五穀豊穣、子孫繁栄、家族の健康と安全を祈る、大切な行事。
そんなお正月にかかせないのが『おせち料理』と『お屠蘇』です。


今回は、薬膳からみた『おせち料理』と『お屠蘇』の効能を紹介します。

 

 

おせち料理とは

 

『おせち』とは、もともと『節供料理』のことで、季節の変わり目である五節句に神様にお供えする料理でした。
やがて、正月が最も重要な節句であることから『おせち料理』といえば正月料理を指すようになりました。
おせちは年神様への供物料理であり、家族の幸せを願う縁起ものの料理でもあります。

 

おせち料理の薬膳的効能

 

代表的なおせち料理の食材の効能について紹介します。

黒豆

まめは元来、丈夫・健康を意味する言葉です。

「まめ(勤勉)に働き、まめ(健康)に暮らせるように」という願いが込められています。


効能

  • 血や生命力を補い、血流を改善 (腰痛や月経不順の改善、老化防止、疲労回復)
  • 胃腸の働きを高め、水分代謝を促進 (全身のむくみ解消)
  • 薬膳では、黒い色の食材は(黒豆、黒ごま、黒キクラゲなど)、生命エネルギーの源を養うとされ、発育や老化防止に効果があるとされます

 

田作り

昔、田畑の肥料として片口イワシが使われていた事から「豊年豊作」の願いが込められています。


効能:片口いわし
  • 気を補い、血流を改善 (血液サラサラ効果)
  • 胃腸の働きを高める
  • 骨を強くし、健康な髪や美肌効果
  • イライラ防止

 

栗きんとん(栗金団)

「金団」は黄金色で縁起が良く、蓄財につながり「今年も豊かでありますように」という願いが込められています。


効能:栗
  • 気を補い、血流を改善
  • 胃腸の働きを高める
  • 下痢を止める
  • 老化防止 (老化による足腰の衰え、頻尿、耳鳴りなどの改善)

効能:クチナシ
  • 栗きんとんの色づけに使うクチナシは、実は、生薬の一つ
  • 山梔子(さんしし)と呼ばれ、熱を冷ます作用が強い生薬です

 

海老

海老は「腰が曲がるまで長生きできるように」という長寿の願いが込められています。


効能
  • 体を温め、血行促進
  • 体力を補い、スタミナをつける
  • 足腰を丈夫にする
  • 胃腸の働きを高め、食欲増進

 

昆布巻き

昆布は「喜ぶ」の言葉にかけた縁起物です。


効能:昆布
  • 身体のしこりをほぐし、体外へ排出 (リンパ腫や子宮筋腫などにも効果的といわれる)
  • 熱を冷まし、余分な水分を代謝させ排出 (むくみ、高血圧、便秘の改善)

 

伊達巻

「伊達」は、華やかさ、派手さを表す言葉。

巻き物の形が書物に似た形から「知識や文化の発達」を願い、作られています。


効能:たまご(鶏卵)
  • 身体を潤す (のどの渇きや空咳を改善)
  • 血を補う (不眠、精神不安定、貧血などの改善)

 

気や血を補う、血流を改善、胃腸の働きを高める、老化防止など、寒い冬を乗り越え、新年を元気に迎えるために必要な効能ばかりです。

 

おせちの食材には、豪華さや意味だけではなく、しっかりと理にかなった効能もあるのですね。

お屠蘇(おとそ)とは

 

お屠蘇は、元々、中国で唐の時代に漢方薬を酒に浸して作った薬種の一つ。
屠蘇とは「邪気を屠(ほふ)り、心身を蘇(よみがえ)らせる」という意味があり、一年の健康を願って飲みます。


正式には「屠蘇延命散」、「屠蘇散」といい、10種類近くの生薬を合わせたもの。
日本では、平安時代に宮中のお正月の儀式として取り入れられ、やがて、一般庶民の間にも広まりました。