メンタル不調の社員vs会社!企業が事前に行っておくべき対策3つ
うつ病などメンタルヘルス不調が疑われる社員に対して、会社は「企業」としてどのように対応し、事前のトラブル対策をすべきか、労働判例実例から検討していきましょう。「安全配慮義務」が問われても支障のないように、就業規則の整備も必要です。
こんにちは、さとう社会保険労務士事務所の一安裕美です。
先月のコラムで、従業員のメンタル不調を防ぐ仕組みと、不調が疑われた従業員にどのように対処するべきかを取り上げました。
その際のポイントは、「就業規則に病院の受診命令を定め、書面で受信命令の記録をとること」でした。
今回は、メンタルの不調が疑われる従業員に対して、企業としてどのように対応すべきか、労働判例から検討していきましょう。
SEとして勤務していたXは、あるトラブルをきっかけに「加害者集団により日常生活を監視され、職場の同僚らを通じて嫌がらせを受けている」という認識をもつようになる。
実際には、Xが感じていた被害事実はなく、Xの精神的な不調による被害妄想によるものだった。
Xは、「この被害に関する問題が解決されたと判断できない限り、出社しない」旨を会社に伝えた後、有給休暇を取得した。
会社側は、Xの有給休暇の終了時にXに対し、Xが主張している被害事実の存在はなかったという調査の結果を伝えて出勤を促したが、Xはこれを拒絶。
その後も約40日間欠勤を続けた。
会社は、Xの欠勤について、就業規則に規定する「正当な理由なしに無断欠勤が引き続き14日以上に及ぶとき」という懲戒解雇自由に基づいてXを論旨解雇することを通知したが、Xが退職届の提出に応じなかったため、解雇とした。
Xはこの懲戒処分は無効であるとして、訴えを提起した。
一審では、Xの欠勤は就業規則で定める無断欠勤に該当。
懲戒事由にあたるとして、Xの請求を棄却した。
しかし、二審および最高裁の判決では、会社がとった対応は、精神的な不調を抱える労働者に対する使用者の対応としては、適切なものとは言いがたく、Xの欠勤は就業規則上の懲戒事由である「正当な理由のない無断欠勤」には該当しないものとして、本処分を無効とした。
今回のような事例では、精神的な不調が疑われる従業員に対して、会社はどのように対応すべきかが問われています。
本件の労働者Xは、客観的にみて、果たして通常の精神状態であったといえるでしょうか?
答えは、ノーでしょう。
Xの主張および長期間の欠勤は、精神的な不調によるものと考えられ、会社としては健康診断を実施し、結果に応じて、休職など検討をした上で経過をみる、などの対応をとるべきだったと考えられます。
この判例では、懲戒処分の効力が問題となっており、「安全配慮義務」が問われたものではありません。
ですが、企業としての「安全配慮義務」の範囲は、今後さらに広がっていくと考えられます。
会社ができることとは、一体何でしょうか。
ポイントは就業規則に下記事項を定めておくことです。
- 会社が必要と認めるときは、臨時で健康診断を行うことができること
- 健康診断の結果によっては、休職を命じることができること
- 復帰ができると判断するのは、会社の指定する医師であること
残念ながらメンタル不調が根絶することは難しいと思います。
ですが、最小にとどめることはできるでしょう。
メンタル不調によるトラブルを、仕組みによって防止していきましょう。
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