どれくらい残業すると過労死認定されるの?3つのポイントから労災認定を探る
電通の過労死事件など、さらに社会問題になっている過労死の労災認定の基準とは?どれくらい残業していると過労死として認められる?病気や精神的に病む目安となる労働時間・条件を解説。
こんにちは、HRプラス社会保険労務士法人の西野健吾です。
今回は、「過労死認定基準」について解説します。
近年よく耳にする「過労死」ですが、「過労死」とは、業務による疲労やストレスが原因で脳血管疾患(脳梗塞・くも膜下出血等)や心疾患(心筋梗塞・狭心症等)を発症し、死亡することをいいます。
長時間労働が蔓延している日本において、大きな社会問題となっています。
海外でも「karoshi」が通じる?!
「過労死」は英語で「death from overwork」と言いますが、近年では「karoshi」と表現されることもあります。つまり、「盆栽(bonsai)」のように、日本独自のものだという世界の認識というわけです。
それぐらい日本の過労死は大きな問題です。
過労死が起きた場合、仕事が原因で起きたので業務災害ということになり、労災保険から保険給付が支給されます。ただ、その脳血管疾患や心疾患が、業務により発症したかどうかを判断するのは容易なことではありません。
生活習慣等が原因かもしれません。
そこで政府は、「過労死認定基準」(正式名称「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」)というものを定め、この基準に当てはまれば過労死として認定し、労災保険から保険給付を支給します。
過労死認定基準では、認定要件として以下の(1)~(3)の業務による明らかな過重負荷を受けたことにより発症した脳・心臓疾患は、労災保険の保険給付の対象としています。
順に、具体的に見ていきましょう。
もう少しかみ砕いてご説明すると、発症直前から前日までの間に、業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与し、著しい精神的負荷を受けた場合等、人生で1度あるかないかの異常な出来事に遭遇した場合です。
これは、発症前おおむね1週間の間に、日常業務と比較して特に過重な身体的・精神的負荷を生じさせたと、客観的に認められる仕事をした場合です。
例えば、重大なシステムトラブルに見舞われ、不眠不休で仕事をしていた場合等が該当します。
これは、慢性的に長時間労働が発生していた場合です。
「発症前の長期間」は発症前おおむね6か月を指します。
著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したと認められるか否かについては、業務量・業務内容・作業環境等を考慮し、同僚等にとっても、特に過重な身体的、精神的負荷と認められるか否かという観点から、客観的かつ総合的に判断することとされています。
業務の過重性の具体的な評価に当たっては、疲労の蓄積の観点から、労働時間のほか、不規則な勤務、拘束時間の長い勤務、出張の多い業務、深夜勤務、精神的緊張を伴う業務等の負荷要因について十分検討することとされています。
その際、疲労の蓄積をもたらす最も重要な要因と考えられるのが労働時間です。
この労働時間に着目すると、その時間が長いほど、業務の過重性が増すと考えられます。
具体的には、発症日を起点とした1か月単位の連続した期間をみて、次のようなことを踏まえて判断されます。
- 発症前1か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症との関連性が弱いと評価できる。
- おおむね45時間を超えて時間外労働時間が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できる。
- 発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できる。
なお、ここでいう時間外労働時間数は、1週間当たり40時間を超えて労働した時間数です。
つまり、直前1か月の時間外労働時間数が100時間を超えていた場合や、日常的に時間外労働時間数が月80時間を超えている場合は、過労死と認定される可能性が高いということです。
事業主は「安全配慮義務」を負っています。
「安全配慮義務」とは簡単に言うと、労働者が安全で健康的に働ける場を提供する義務です。
もし、労働者が過労死をした場合は、事業主は安全配慮義務違反ということになり、遺族から多額の賠償金を請求される可能性があります。
事業主にとっても大きなリスクを伴います。
今政府は、過重労働撲滅特別対策班(通称「かとく」)を設置するなど、長時間労働の対策に力を入れています。
過労死という絶対に起こってはいけないことを防ぐためにも、業務の効率化などを図り、長時間労働を是正していく取組みが求められます。
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